第七十五話
都合によりしばらくお休みさせて頂いていましたが、今日から投稿を再開しますので、よろしくお願いします。
お祭りの次の日。今日は朝から片付けなので、私はいつもと同じ時間に起きた。本当はもうちょっと寝ていたかったし、最近、かなり寒くなってきたので、できれば毛布の外に出たくないと思ったけど、仕方がないので起き上がった。でも、やっぱり寒い…。私、冬になったら一歩も外に出られなくなるんじゃないかな?今から、冬が来るのがとても憂鬱だ…。すると、隣で寝ていたジェシカが急にぱっと起き上がった。そもそもジェシカが起きていると思っていなくてちょっと驚いている私に彼女は爽やかに言った。
「結花、おはよう!…あーあ、帰る日になっちゃったなー。すごく悲しいんだけど…。何だったら、ずっとここにいたいぐらい!絶対に来年も来るからね!」
ジェシカがにこにこ笑いながらそう言った。今から来年が楽しみ、と思いつつ、私は屋根裏部屋から下に降りた。そして、テーブルに置いておいた、ルイにもらった髪留めを取った。何となく嬉しくて、ついつい眺めてしまう。カーテンの隙間から差し込む朝日に当たって、キラキラと輝くのがすごく綺麗…。すると、後から降りてきたジェシカが興味津々、というように尋ねてきた。
「昨日の夜から気になってたんだけど、それ、どうしたの?すごく綺麗だよね!いつ買ったの?」
「いや、これは自分で買った物じゃなくて、昨日、ルイに頂いたもの…、です」
自分で言うのがちょっと恥ずかしくて、私はごにょごにょ、もにょもにょとそう言った。しかし、ジェシカにはちゃんと聞こえたらしく、驚いたような表情になり、それから目をきらきらと輝かせた。
「そうなんだ?!いつの間に二人の仲が進展してるー!というか、ルイのセンス、すごくいいね。この色、絶対に結花に似合うと思うよ。…あ、そうだ。今日も髪、結んであげるよ!結花の髪を編み込みするの、楽しいし」
ジェシカは昨日と同じように編み込みを作ってくれた。鏡越しに見えた編み込みが相変わらず綺麗で、しっかりしている。最後にジェシカは髪留めで丁寧に髪をまとめてくれた。そして、満足そうな表情をした。
「うん、完璧!これなら今日一日、崩れないで済むと思うよ。…というか、結花、もうちょっと髪型のレパートリーを増やした方がいいんじゃない?いつも、横で一つに結んでるだけだよね?」
ず、図星…。いや、だって、編み込みとか三つ編みとかが全然得意じゃないんだもの…。普通に結ぶだけならできるのだけど、複雑なものを自分でやると何故かごちゃごちゃになるから、かなり前に諦めていた。最初は、自分でできないのがちょっと悔しいな、と思っていたけれど、結局、邪魔にならなければ何でもいいや、と開き直ってしまったし…。そんな感じで私はしばらく心の中で言い訳をしていた。すると、ジェシカに試しに髪を結んでほしい、と頼まれたので、私はジェシカの後ろに回ってふわふわの髪をまとめることにした。普段、ジェシカは髪をおろしているので、結んだらどんな感じになるのかちょっと気になる。そんなことを思いつつ、私はジェシカの髪を二つ結びにしてみた。上手く結べたけれど、どこか小動物に見えるような…?そして、何だか新鮮…。一方、ジェシカは二つ結びをしたのが久しぶりなのか、しきりに自分の髪を触っていた。
「ありがとう、結花!というか、これだけ上手く他の人の髪を結べるんだったら、自分のも結べると思うんだけどな?不思議だなー」
そう言われてしまった。うん、私もそう思う…。でも、どうしたら自分の髪をアレンジできるのかがよく分からない。いつか、自分一人でそういう結び方をできるようになればいいとは思うんだけど…。
朝食後。ジェシカとゼンさんが魔法協会に戻る、と言うので、私とルイは二人を見送ることにした。ジェシカの手には、大量の荷物…。持って帰るのが大変そうだけど、魔法を使えばすぐに目的地に着いちゃうから、そこまで苦ではないのかもしれない。そう考えると、魔法ってやっぱりすごいな、と思う。
「それじゃ、二人とも元気でね!あ、あと、また来ることがあったら手紙を送るから待っててね!」
ジェシカが笑ってそう言った。しかし、そこにゼンさんがさりげなく一言、こう言った。
「ジェシカがうるさくてすみませんでした。次来る時までに、もうちょっと落ち着かせるので」
「ゼン!!?さすがにそれはひどくない!?その言葉、絶対に必要なかったよ!大体、今回はわたし、そんなにうるさくしてないと思うよ。それに、昔よりも少しは落ち着いてるはずだもん」
…と、二人は最後までこんな調子で喧嘩をしていたのだった。最初、ジェシカたちと会った頃、ルイはこんな感じで二人の間に喧嘩が起こるたびにうるさそうにしてたけど、今では慣れてしまったのか、苦笑いするだけだった。しかし、二人の喧嘩が一段落したところでこう言った。
「二人とも、そろそろ帰った方がいいんじゃないか?あまりここにいる時間が長すぎると、魔法協会の人たちに怒られると思うけど。それに、俺らもこの後、祭りの片付けに行かないといけないしな」
すると、二人は、魔法協会の人たちに怒られる、という言葉ではっとした。そして、二人して慌てふためいた後、バタバタと魔法協会へと戻って行った…。ものすごい早さだったな…。というか、こっちがびっくりするほど二人ほど慌てていたけど、魔法協会の人たちってそんなに怖いのかな?前に私が行った時は、怖そうな雰囲気、全然なかったんだけど…?そんなことを考えていた私は、ふとルイがこちらを見ていることに気付いた。…?どうしたんだろう?不思議に思って、私はルイを見返した。そして、尋ねる。
「どうしたの?何か私、変なところでもある?」
「え、…あー、いや、そういうわけじゃなくて、その髪飾り、つけてくれてるんだな、って思っただけだ。正直、結花がどういうデザインが好きか知らなかったから、本当にこれで良かったのかちょっと不安だったんだけど…。つけてくれるなら、嬉しい」
私はそれを聞いて、思わずまじまじとルイを見てしまった。というのも、その言葉がとても意外だと思ったからだ。ルイにも、不安って感情があるんだなー…、なんて思ってしまった。それを言ったら、何だそれ、って言われそうだけど…。それに、いつもと比べて何だかルイが素直だ…、とも思った。一方、ルイは自分で言っていて恥ずかしくなったのか、強引に話を切った。
「…二人が帰ったことだし、そろそろ行くか。早く片付けないと、他の人の迷惑にもなるだろうし」
「うん、そうだね。アケビさんたち、もう作業してるのかな?」
そんなことを話しつつ、私たちはお祭りでのお店のスペースに向かった。既に半分くらいのお店は片付けられている。早い…!いつから片付けしてたんだろう?と、不思議に思った。植物屋さんの人たちも、飾りとかを片付けている。色々な所に飾りがあるから大変そうだな…。私とルイは、テントの片づけを始めた。組み立てるのよりも簡単な気がする。
「…そういえば、このテントの部品って、どこに持って行くの?もしかして、全部植物屋まで運ぶの?」
「いや。広場の決められた場所に持って行けば、植物屋の人たちが運んでくれる。向こうもちゃんと数があってるか確認しないといけないらしい」
なるほど…。確かに、盗む人とかいたら大変だしね。それに、年々量が減っていってしまうことになる。やっぱり、植物屋さんって大変なんだな…。そう考えつつ、片づけを進める。しばらくすると、アケビさんがやって来た。その後ろにはスイさんもいる。二人とも、手にたくさんの飾りを持っている…。
「おはよう、結花ちゃん、ルイ。朝からお疲れ様。何か分からないところとかあったら言ってね!」
「アケビ、あんたな…。会ったら絶対に聞こうと思ってたんだけど、昨日の、一体どういうつもりだったんだよ…?」
昨日の、とは一体??でも、アケビさんにはそれで通じたらしく、あ、ばれた、というような表情になった。そして、ちょっと気まずそうな感じで弁解するように言った。
「いやー…、昨日の夜、偶然、二人とも一緒にいたし、いい思い出になりそうだし、ちょうどいいかなって思って…。でも、二人とも楽しそうだったよ?」
そこでようやく、私は二人が何の話をしているのか気付いた。昨日の夜の話だ…。と、そこで私はとある違和感を感じた。最初は自分でもその違和感の原因ははっきりしていなかったけど、昨日の夜のことを詳しく思い出すうちに、段々とその違和感がはっきりしていった。
昨日の夜、アケビさんは、ほとんど何も説明せず、私とルイをたくさんの人が踊っている場所に案内してくれた。私は、その時はどうしてアケビさんがそこに連れて来てくれたのか分からなかったけど、ルイは何か心当たりがあるようだった。そして、私は後からスイさんに教えてもらい、その理由を知った。スイさんによると、アケビさんは、私たちの関係が深まればいい、と思ってそこへ連れて行ってくれたとのことだった。私が違和感を感じたのは、正にこのことだ。もしも、ルイの心当たりが、アケビさんの意図と違うのだったら、この話はおしまいだ。しかし、仮に、ルイの心当たりと、アケビさんの意図が同じだったとしたら?かなりおかしい話になってしまう。ルイには誰か好きな人がいて、その人は私ではないはずだ。ずっとそう思っていた。しかし、それなのに意図に気付いていたとしたら、それはかなり矛盾していることになる。つまり、これらのことを踏まえると考えられる可能性は二つだ。一つ目は、ただ単にルイの心当たりが違ったということ。そして、もう一つは私が勘違いをしていたということだ。でも、私が勘違いしていたとすると、ルイの好きな人が変わってきてしまう。他の誰か、ではなく、私ということになってしまう。しかし、それは恐らくあり得ないだろう。…ということは、やっぱり、ルイの心当たりが違っただけ?でも、それだと、今の二人のやり取りの意味が分からなくなってしまう。…そうなると、今度は、二つ目の仮説が成立してしまう。…あー、段々と混乱してきた。私は今、非常に誰かにこのことを相談したい…!そうじゃないと、頭が爆発しそう…。と、その時だった。急に誰かにポン、と肩を叩かれた。
「わあ……っ!!?…あ、何だ、ルイだったんだ。どうしたの?」
私の肩をいきなり叩いた犯人はルイだった。ちょうど頭の中で考えていた相手だったので、ものすごく驚いた。ルイはと言うと、過剰な反応をした私に驚いているようだった。少し申し訳ない…。
「びっくりした…。急に黙り込んで、全然反応しなくなったから心配になった。どうしたんだよ?」
「え、あ、いや、ちょっと気になったことがあって…。たぶん、大丈夫だよ!気にしないで」
「…??そうか?」
ルイは少し納得していないような表情をしていたけれど、結局そう言ってくれた。そして、私にテントのパーツの一部を渡してきた。どうやら、指定された場所に持って行くみたい。アケビさんたちはいつの間にかいなくなっていた。私はルイの後を追いかけつつ、思った。一体、私が立てた二つの仮説のどちらが正解なんだろう?と…。でも、ルイに直接聞くのも怖いので、私はずっともやもやしていたのだった…。
この前気付いたのですが、話数の数がずれていました…。直したので、恐らく数が合っていると思います。
読んで下さり、ありがとうございました。




