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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
四章 異世界花屋とお祭り ー当日編ー
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第七十四話

夕方になった。お祭りの販売は、これでおしまい…。意外とあっという間だったな…。でも、色々な人に会えたし、勉強にもなったから充実した三日間だったと思う。私たちは売れ残った商品を持って帰ることにした。…とは言っても、ほとんど売れてしまったので、その量は本当に少ない。お祭り前日は山ほどあったポプリも、数えるほどしか残っていなかった。自分の作った商品が売れるって、本当に嬉しいな。

「意外と好評だったことに、びっくりした。来年もまたやれるといいな。…準備が大変だけど」

「そうだね、でも、来年こそ、ハーブティーを売れるようにしたいな!そしたら、色々な人にハーブティーを知ってもらえるよね!…とは言っても、私もそこまで詳しくないからちゃんと研究しないと」

そんな話をしつつ、お店に戻った。誰もいないので、ジェシカたちはどこかの屋台を回っているのだろう。そういえば、今日の午後は全然会わなかったな…。どこに行ってたんだろう?後で会ったら聞いてみよう。

「…で、この後、どうする?確か、テントの片付けは明日なんだよね?…とすると、今日は暇?」

「ああ。何もやることないし、そこらへんを適当に歩いてるか。またカメメロンパンでも買うか?」

「うーん…。食べたいけど、さすがに二日間連続だと、それはそれで飽きちゃいそうなんだよね…」

ということで、私たちはその辺りを散策することにした。最終日のせいか、どこのお店でも割引している。そして、客寄せにすごく必死だ。特に食べ物屋さんは、売れ残ったら食材が無駄になってしまうかもしれないので、ものすごくアピールしていた。美味しそうだな…。きょろきょろしながら歩いていると、アケビさんに会った。

「こんばんは!二人とも、今、時間ある?もし良かったら、広場に来ない?楽しいよ~」

楽しい、って何が?そして、ものすごく意味深に聞こえるのは気のせい??でも、特に行こうと決めているところはないので、とりあえず行ってみることにした。広場に近付くにつれ、段々と人の数が増えてきた。アケビさんは器用に人の間を通り抜けていくので、なかなか追いつけない。しばらくして止まってくれたので、そこでようやく追いついた。そして、そこから見える光景を見て、私は驚いた。だって、そこでは、たくさんの人が楽しそうに踊っていたからだ。日本のお祭りで言う、盆踊りみたいな感じ?でも、曲調が全然違うし、そもそも一人で踊っていない。男女一人ずつ、合計二人でペアになっている。…とすると、盆踊りではなく、フォークダンスみたいな感じなのかな?小学生の時の移動教室を思い出す。あの時も、キャンプファイヤーで、フォークダンスを踊ったな…。懐かしい。私は踊るのがすごく下手だったから、相手の人にものすごく迷惑をかけた記憶がある…。ちょっと申し訳なかった…。って、話が脱線してしまった。アケビさんは、何で私たちをここに?しかし、アケビさんは何も説明せず、どこかに行ってしまった。こ、これは一体どうすれば??私とルイは顔を見合わせた。

「えっと…、どうする?アケビさんはつまり、何をしたかったんだろう??」

ルイはしばらく考えていたが、何か心当たりがあるらしく、「そういうことか…」とつぶやいた。何がそういうことなのか分からなくて困っていると、ルイが更につぶやいた。

「アケビの思惑に乗るか、それとも無視するか…」

何の話???全く読めないんだけど…。思惑って一体…?アケビさんには何か企みがあったのかな?私が首をかしげた、その時だった。近くにいた私と同じくらいの年の女の子たちがわらわらとこちらに近づいてきた。でも、その視線は私の後ろに向けられている。…ということは、ルイに何か用事が?当のルイは、何か考え事をしていて、全く気付いていないけど…。すると、近くまで来た女の子のうちの一人がルイにこう声をかけた。

「あの…。もしよろしければ、あたしと踊ってくれませんか?!」

すごい積極的だ…、と私はちょっと驚いた。行動力がすごい。しかも、その女の子はすごく可愛い。短めの、金色のような茶色のような髪がとても印象的で…。一方、ルイは女の子にそう聞かれたのに、何故か一瞬、私の方を見た。そして、何かを言おうとする。しかし、女の子の言葉の方が、早かった。

「もしかして、既に約束が入ってたりするんですか?」

そう言って、目をうるませる。わ、今にも泣いちゃいそう…!?ルイは、一瞬、何かに迷っているかのように目を閉じた。…が、すぐに目を開けて言った。

「別に。特に約束はない。上手く踊れるか自信はないけど、それでもいいなら」

その言葉に、女の子はすごく嬉しそうに笑った。一緒についてきた女の子たちも、良かったね、と喜んでいる。ルイは再び私を見たが、女の子にせかされて行ってしまった。私はその様子をぼーっと見ていたが、何だか急に泣きたくなってきた。ぎゅっと胸の辺りを押さえる。とても、悲しかった。私がうつむいていると、不意に誰かが話しかけてきた。

「結花さま、大丈夫ですか?具合が悪いなら、すぐそこに救護室がありますが、一緒に行きます?無理はなさらない方がいいと思いますが…。というか、ルイ様は?何で肝心な時にここにいないのですか…」

そこにいたのは、スイさんだった。心配そうに私を見ている。私は無理矢理笑った。

「大丈夫です。ちなみにルイは、あそこで誰か女の子と踊ってますよ。そういえば、アケビさんは?」

「師匠も、自分の彼氏と踊っています。いい加減に仕事をさぼるのはやめてほしいのですが、今日だけは特別です。今日の師匠はほとんどずっと、働いていましたから。楽しそうなので、何よりです。…ところで、結花さまは、ルイ様と踊らなくてもいいのですか?」

私は遠くにいる、ルイの方を見た。踊っている。自信がない、と言っていた割にはすごく上手いと思う。むしろ、余裕があるし!完璧だな…、と思う。そして。女の子の方も、とても幸せそうで…。何だか、見ているのが辛い。

「だって、私、踊るのが、びっくりするほど下手だし、それに、ルイはあの女の子と踊ってますし…」

すると、スイさんは、急に怖いくらい真剣な表情になって言った。

「結花さま。あのですね、恋は遠慮した方が負けですよ!まあ、遠慮を全くしないのも、それはそれで微妙ですが…。それはともかく、自分の気持ちに素直になるのが一番です!たぶん、師匠だって、結花さまとルイ様の二人の恋が進展すれば、と思ってここに連れてきたのだと思いますよ?」

え、そうだったの?!全くそのことに気付いてなかったんだけど…。というか、アケビさん、そんなことを考えていたなんて…。驚きつつ、色々と考えていたその時、音楽が止んだ。たぶん、曲が終わったのだろう。ルイたちの方を見ると、女の子がにこにこと笑って、何かを言っていた。しかし、ルイはと言うと一言二言、何かを言って、こっちに向かってきた。女の子は呆然としたような表情でそこに立ち尽くす。一体、何を言われたんだろう…。まさか、ルイ、いつもの調子で遠慮なく何かを言ったんじゃないよね?と、少し心配になった。

「それでは、私はこれで。そろそろ師匠を迎えに行かないと、次の曲が来てしまいます。結花さま、頑張ってくださいね!師匠と一緒に応援してますから!」

そう言ってスイさんは去っていった。頑張って、と言われても…。私、踊るの本当にダメなんですけど!心の中でスイさんに叫んでいると、ルイが戻ってきた。

「久しぶりに踊ったら、動きがなまってた…。まあ、普段踊る機会がないし。屋敷にいた時、習わされたけど、ここまで軽快な音楽じゃなかったし…」

あれのどこがなまっていたというのだろう…。それなら、私のレベルは一体……。

「でも、すごくすごく綺麗だったよ。私は下手中の下手だから、ちょっとうらやましいなー…」

私がそう言うと、ルイは何故か一瞬固まった。…あれ、私、何か変なこと言ったっけ?心当たりは全くないんだけど…。そう思っているとフリーズ状態から戻ってきたルイが、何故か楽しそうにこう言った。

「よし、それなら、結花も踊るか」

「…え?ちょっ…、待って、ルイ、私の話、聞いてた?私、全然踊れないんだってば!絶対に無理!!」

「大丈夫大丈夫、なるようになる。それに、俺がフォローするから、何とかなるはずだ」

いやいやいや…。踊れないのもそうなんだけど、心の準備ができてないんだってば!しかし、ルイは私の手を取り、ぐいぐいと引っ張っていこうとする。私はその場に留まろうとしたが、抵抗もむなしく、結局ダメだった…。力が強いのって、時々ずるいと思う。どうしようどうしよう…、と思っていたら、曲が始まってしまった。さっきのは明るくて、軽快な曲だったけど、今度は、ゆっくりめの曲。

「この曲は、比較的、動きが自由。決まった踊りとかがちゃんとあるわけじゃないから、少し動きがおかしくても何とかなる。運が良かったな」

いや、そういう問題じゃない!!全然良くない!ルイと一緒にいられるのは嬉しいけど…。と思っていると、ふわりとルイが再び私の手を握った。そして、ゆっくりと、踊りが始まる。私は、足元にものすごく注意した。だって、転びそうで怖いんだもん。そして、ルイの顔を直視できない、というのもある…。しかし、ルイは相変わらず余裕で私に話しかけてきた。

「下ばっかり見てると、他の人にぶつかるかもしれないけど、大丈夫か?」

「ルイ、今の私に話しかけないで…。転びそうで怖いんだって!元の世界で踊った時とか、思いっきりこけて、他の人も巻き込んで倒れちゃったんだから!!」

私がそう言うと、ルイは面白そうに笑った。何か悔しい…。しばらくすると、動きに慣れてきたので、私は会話の方もちゃんとできるようになってきた。なので、聞きたかったことを聞いてみることにした。

「というか、ルイこそ、私と踊って良かったの?さっき、女の子と踊ってたのに…」

「あー…。一曲踊ったからまあいいか、って思ったから。それに、特に興味ないし。だから、適当な理由をつけて断っておいた」

うわ、ひどい…。あの子、すごく嬉しそうだったのに…。でも、興味ない、ってことを面と向かって言わなかっただけ、良かったのかもしれないけど…。…でも、ルイには好きな人がいるはずで…、一体、その人って誰なんだろう??その人とは踊らなくていいのかな?と気になったが、何となく、聞けなかった。というか、聞きたくなかった。けど、ルイはどこか楽しそうで、それが何だか嬉しかった。

曲がゆっくりと終わっていく。それと同時に動きが止まった。早く終わってほしかったような、終わってほしくなかったような、そんな不思議な時間だった。

四章完結です!もうちょっとコンパクトにする予定だったのですが、想定外の長さになってしまいました…。

読んで下さり、ありがとうございました。


12月2日追記

活動報告にも書かせて頂いたのですが、12月上旬は都合により、更新をお休みさせて頂きます。中旬になればいつもと同じペースで投稿出来るようになると思いますので、よろしくお願いします。

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