表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の異世界花記録  作者: 立花柚月
四章 異世界花屋とお祭り ー当日編ー
73/139

第六十八話

ルイは、しばらく私の前で立っていたけれど、やがて私の隣に腰を下ろした。き、気まずい…。まあ、その原因を作ったのは私だから、自業自得なんだけど…。でも、気まずいものは気まずいのだ。

「…色々と言いたいことがあるんだけど、とりあえず、一番言いたいことを言うか」

不意に、ルイがそう言った。これは絶対に怒られるな…。まあ、それは当然なんだけど。私は少し身構えた。…が、言われたのは、予想外の言葉だった。

「急にどこかに行ったから、本当に心配した…。もし、何かあったら心臓に悪い。幸い、今はジェシカと一緒にいたゼンと途中で会えたからどっちの方向に行ったか分かったけど、ゼンがいなかったらまだ見つけられなかったと思う。だから、今度からどこかに行くならちゃんと行先を言え!急に外に出てくる、って言われても、どこに行くのかさっぱり分からないし…」

ルイは、本当にほっとしたような表情をしていた。それだけ、心配させてしまったということだろう。…ってちょっと待って。今、ここにルイがいる、ってことは…、お店はどうなってるんだろう?もしかして、私を探す途中で会ったという、ゼンさんにお店を一瞬頼んでるのかな?あれ、でも、そしたら、会う前はどうなってたんだろう?もしかして、メアリさんにお願いしてる…、とか?

「ごめんなさい…。反省してます…。あの、ところで、お店は?無人販売ではないよね?」

「当たり前だ。メアリさんにちょっとの間、頼んできた。…でも、たぶん、メアリさんがいなくても俺は店を無視して結花のことを探しに来てたと思うけどな」

…!そ、それは嬉しいけど、その間に絶対、盗難が発生する気がする…。今度から、どこかに行くときは、絶対に一言行先を言ってから出かけよう、と心に決めた。そう思ったはいいものも、何て言葉を返せばいいか分からなくて、私があわあわしていると、急にルイは怒ったような表情になった。珍しく、ルイの表情がくるくる表情が変わっている。そんな、どうでもいいようなことを考えてたら、ルイの雷がものすごい勢いで落ちてきた。

「あとな、お前、勝手にどこか行くな!一応、メアリさんがいたとはいえ、今は営業中だろ!後でちゃんとメアリさんにお礼言っとけよ。店番してくれてるから」

おっしゃる通りです!そして、何だかんだ、こんなに本気で怒られるのは初めてかもしれない。本当にごめんなさい…。メアリさんもきっと戸惑っただろうな…。私、本当に何やってるんだか…。改めてそう思った。私は、ルイにもう一回謝った。

「何も言わずに出てきちゃってごめんなさい…。これからは、ちゃんと、お店の時は急にどこかに行かないようにします…。…あと、探しに来てくれてありがとう」

「別に。とりあえず、何も無かったみたいで良かった。でも、何で急に外に行ったんだよ?あの時、何か顔色も悪かったし…。何かあったのか?」

私は黙った。さっき、ジェシカには素直に言えたけど、本人を前にすると、言っていいのかどうか、分からない…。たぶん、言ったら呆れられそうだな…、とも思うし。でも、言わないままでいるのも、それはそれでもやもやする気がする。そんな感じでしばらく迷っていたが、結局言ってみることにした。

「ルイは…、約束してくれたけど、いなくなっちゃうのが怖かったから…。もしかしたら、そうなっちゃう可能性だって、なくはないでしょ?」

しばらく、ルイからの何も反応が何もなかった。あああ…、やっぱり、呆れられてるかな?!というか、急にこんなこと言われても、絶対に困るだけだよね!?やっぱり言わない方が良かったかな…。と、一人後悔していると、いきなりルイに頭をはたかれた。しかも、けっこう本気だったらしく、ものすごく痛い!そういえば、前におじいさんがルイに叩かれてたけど、その時も痛そうだったな…、と、どうでもいいことを思い出してしまった。

「まあ、確かに、約束って絶対じゃないところがあるよな。人によって、その言葉の重さをどう感じるかも違うだろうし。…でも、根本的な解決にはならないだろうけど、結花が不安なら、また…、何だっけ、…指切り?だったか?してやるけど?」

…!!?な、今、ルイが、かなりすごいことを言ってのけた気がするんだけど!私は自分の手をじっくり見た。前に指切りした時は、まだ良かった。だって、私がルイのことをどう思っているか、なんて、全然気にしてなかったから。それに、半分勢いでやっちゃったし…。でも、今は違う。今の私は、あの時に思っていたこととは全く違う感情を持っている。普段はあまり気にしてないのに、何故かこういう時に限って、思い出してしまうんだけど…!と、とりあえず、何か返事をしなければ…。えーと、一体、何て言えば?私がそんなことを考えている間に、ルイは、私の手をふわりと持ち上げた。突然のことに混乱する私を一切気にせず、そのままぎゅっと手を握る。温かい。…って、待って、これ、指切りではないと思うんだけど!?何でこうなった???更に混乱していると、ルイにこう言われた。

「…昨日も思ったけど、結花の手、冷たいな。手が冷えると、指先が動きづらくなるから、気をつけた方がいいぞ。もっと寒くなったら手袋とか、必要かもな」

「そ、そう?自分ではあまり寒くないんだけど……。というか、話がずれてるけど、いいの?」

手を握られているという状況をどうにかしたくてそう言ったけど、全く効果がなかった。手は、握られたままだ。温かいのはいいけど、めちゃめちゃ恥ずかしい…!しかも、ちょうどその瞬間、フィオナちゃんの「こいびとみたいだね!」という言葉を思い出してしまった。うう…。何だか、手だけじゃなくて、顔まで温かくなってきたような…、いや、むしろ熱くなってきた気が…。でも、離してほしい、とも言えず、結局そのままの状態で話が進んでしまった。

「今度、アケビとかスイに、どっかのお店に連れてってもらった方がいいかもな。あの二人なら、そういうのを売ってるお店とか色々知ってると思う。…で、話を戻すけど、何回も言ってるけど、俺はよっぽどなことがない限り、ヴェリエ国には戻らない。あの人が色々面倒だけど、それは、自分で何とかするつもりだ」

「…それは、一人だけで?」

「え…。ああ…。ってか、誰かを頼るわけにもいかない問題だし、他の人を巻き込むわけにもいかないから。貴族の家だから、決まりとかしきたりとか、そう言うのが面倒なんだよな…」

ルイは、本当に嫌そうにそう言った。…でも、それは、本当に一人で背負えるものなんだろうか?抱え込みすぎて、いつかどこかに消えていってしまいそうで…、そうなるという確証はないのに、何故かとても怖かった。だから、私は…。

「ルイ。あの、ヴェリエ国に戻る、戻らないの話は一旦置いておいて、一つだけ、その…、できたらでいいから、約束してほしいことがあるんだけど…。とりあえず、内容だけでも聞いてもらっていい?」

「ああ。でも、その内容が無理難題だったら絶対に断るけど」

「たぶん、無理難題じゃないと思うんだけど。あのね、一人だけで、抱え込まないでほしいの」

そう言って私は、ルイに握られてない方の手で、そっとルイのもう片方の手を握った。一人だけで、というのを少し強調してみる。ルイは、私の言葉が予想外だったのか、少し驚いているようだった。私は、言葉を続けた。

「私だって人のことは言えないし、それに、上手く伝えられるか分からないけど…。私は、全然頼りないと思うから置いておくとして。前に、ルイは異国人だから…、って言ってたよね?でも、私は、街の人たちは普通にルイのことを受け入れていると思う。だから、何て言うか…、もっと、周りの人のことを頼ってもいいと思う。戻るか戻らないか問題だけの話じゃなくて、他の日常のこととかも…」

ちゃんと言葉をまとめずに言ったせいで、言いたいことがまとまってないような気がする。でも、それでも、聞いてほしかったから、そこまで深く考えずにそう言った。と、その時だった。急に、視界が暗くなった。…?な、何が起こったんだろう?!少し混乱する。

「そんなことない。確かに、時々無理することはあるから色々心配になるけど、頼りないとは思わない」

そう言われた。それと同時に少しずつ、今の自分の状況が分かってくる。体が温かい何かで包まれている。しかも、今のルイの言葉は、私の頭の上の方から降ってきた。…要するに。私は、今、ルイに抱きしめられているということだ。気付いて良かったような、気付きたくなかったような…。というか、気付いちゃったせいで、急に心拍数が上がった気がする…!どうすればいいの、この状況…!?混乱しすぎて、頭の中が真っ白になっている。そんな私をよそに、ルイは話を続けた。

「…約束できるかは分からないけど、でも、そう言ってくれるなら、今までよりも頼ろうかな、って思う。それでもいいか?」

私はこくこくうなずいた。その言葉自体は嬉しかったんだけど、ものすごく動揺していて、言葉が出なかったのだ。私のその反応に、顔は見えないけど、ルイは少し笑ったような気がした。

「…ありがとな、結花。心配してくれて。…さて、そろそろ戻るか。メアリさんにいつまでも店番任せてるわけにもいかないし」

ルイはそう言って、私から離れ、立ち上がった。私が呆然としていると、ルイは振り返って聞いてきた。

「そのままそこにいるんだったら置いてくけど、いいのか?」

私は慌てて立ち上がり、その後を追いかける。…でも、どうしてルイはそんな何事もなかったかのようにいられるんだろう?それとも、さっきのは私の気のせいだったのかな?でも、それにしてはリアルだったような?私がそんなことを考えていると、何故か、前を歩いていたルイがこけた。幸い、転ばなかったけど。珍しすぎて驚いた。

「!?ちょっ…、大丈夫?」

「たぶん…?自分でも何が起きたかよく分からなかった…」

私は思わず笑ってしまった。意外と、心の中で動揺してるみたい。ルイは、「笑うな!」と言ってそっぽを向いていた。

読んで下さり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ