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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
四章 異世界花屋とお祭り ー当日編ー
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第六十五話

その後、私たちは持って行くものをちゃんと準備して、外に出た。その間、ルイが普段通りだったため、何だか悔しかった。こっちは、全く穏やかじゃないというのに…。心の中で波が荒れているような、そんな気がする。でも、結局、お花は耳のところにつけたままでいる。何だかんだ、嬉しかったことは事実だから。でも、たぶん、水につけないままになってしまうから、このお花は明日には枯れてしまうだろう。そう考えると、ちょっと悲しかった。

「…結花、早くしないと、始まる時間になる」

悶々と考えていたせいで気付いていなかったのだが、いつの間にか、ルイとの間に距離ができていた。ルイは、私が追いつくのを待っていてくれた。なので、私は慌てて走って追いついた。

「はあ、はあ…、ルイ、早すぎ…。昨日よりは余裕があるんだし、もうちょっとゆっくり行こうよ…!」

それに対して、ルイは、「悪い」と、全くそう思っていなさそうな声で言った。そして、その後で更に、こう言った。

「でも、スピードを緩める気は全く無いけどな。まあ、頑張れ」

「ルイの鬼ー!!最近はけっこう素直だったくせに…!」

「どういう意味だよ、それ…。その言い方だと、俺が普段、ひねくれてるみたいなんだけど?」

「だって、それは事実……、いや、やっぱり何でもないです。何も言ってないです」

言いかけた後で慌てて言葉を切ったのは、ルイににらまれたからだ。でも、ルイは自覚しているのか分からないけど、普段、けっこう意地悪なんだけどな…、と思っていると、ルイは話を思いっきり変えた。

「そういえば、午前中はどこに行ってたんだ?」

「私?私は、最初に射的のお店で遊んで…。それで、初めて景品取れたよ!前にも何回かやったことがあったんだけど、一回も取ったことがなくて。だから、すごく嬉しかった!」

「一回も…。それは良かったな。でも、射的で当てたってだけでそんなに喜ぶのって、子どもくらいじゃないか?大人になってくると、なかなかやらなくなるしな」

「うっ…。そ、それは…。…というか、そういう風に、良かったな、って言った後でそういうこと言うから、素直じゃない、って思われるんじゃないの??」

「思われる、って言われても、今のところ、そう思ってるって分かってるのは結花だけで、それ以外の人がそう思ってるかどうかは分からないだろ!」

と、言い合いをしているうちに、テントに着いた。開店まで、あと十五分。昨日よりも余裕みたい。私は、ポプリ等々が入っている箱を取りに行くことにした。昨日の販売でかなり売れたから、昨日よりは軽くなっているはずなので、私でも持てるかな、と思ったのだ。それに、少しは役に立ちたいし。ルイに、管理場所に行くことを伝え、そこに向かう。人が多いのでなかなか進めなかったけど、ようやくそこにたどり着いた。管理場所の中は、少し薄暗いので、箱を探すのに時間がかかったけど、何とか見つけ出すことができた。一応、中身も確認してみる。…うん、これで合ってそう。私は箱を持ち上げた。やっぱり、昨日よりも軽い。これくらいなら余裕で運べそうな気がする。再び人の流れに合わせてゆっくりと歩いていると、途中で何故か、テントで準備しているはずのルイに遭遇した。何でここに…??私が頭の中にはてなマークを浮かべていると、ルイが言った。

「それ、俺が持ってくから」

「…!?え、だ、大丈夫だよ。これくらい一人で運べるし。…というか、お店は?商品を持ち去られてたらどうするの?荷物はいいから早く戻らないと…!」

「だったら、尚更、俺が持ってった方がいい。その方が早いだろ」

確かにそうかもしれない。人の流れに合わせていることに加えて、落とさないように気をつけているので、私の歩く速度はかなり遅い。私は、荷物をルイに渡した。…でも、急にどうしたんだろう??さっきは鬼だったくせに、何故かいきなり荷物を持ってくれた。少し申し訳ないのと、ありがたいのが心の中でごちゃごちゃになっている…。でも、どうして急に持つ、と言ってくれた理由が分からないので、ストレートに聞いてみることにした。

「あの、急にどうしたの?だってさっきとか、散々私に色々言ってたのに、いきなり箱を持ってくれたから…。何か、心境の変化でもあったの?」

「は?違うけど。ただ、お前が運んだら途中でひっくり返しそうで怖いから様子を見に来ただけだ。別に心境の変化じゃなくて、ただちょっと色々な意味で心配になっただけで…」

違う、と否定しつつも、いつもより早口でそう言う、ルイ。何か、歩く速度も少し早くなったような…。気のせいかな?でも、最後の最後で、本音を言っていたような気がする。それを聞いて何故か、嬉しいと思ってしまった。というか、ルイ、今だけちょっと素直だったのかな?私はくすくす笑ってしまった。

「何だよ、急に笑い出して?ちょっと怖い。ってか、どこに笑う要素があったんだ?」

ルイが、若干引いているような表情で私を見た。確かに、怖かったかもしれないけど、別に、気が狂ったわけではないのに…。ちょっと傷ついた。なので、ちゃんと、その理由を言うことにした。

「だって、何だかんだ言ってルイって優しいなー、って思ったんだもん。だって、そうじゃなきゃ、今、箱を持ってくれていないだろうし、そもそも私がお店で働くことも認めてくれなかったでしょ?」

「…っ!!……ってか、さっきは俺のことを素直じゃない、とか何とか言ってたのに、今は優しい、って言ってるけど、結局のところ、どっちなんだよ?」

「その答えはもちろん、どっちもに決まってるでしょ!」

「どっちも…。嬉しいような嬉しくないような微妙な答えだな…。素直じゃない、ってところは否定しろよ。否定しなくても、少しはためらってくれてたらまだ良かったんだけどな…。地味に傷つく」

ルイはしばらく、どこかどんよりとした雰囲気をまとって歩いていた。そして、そのままテントにたどり着く。もしかしなくても、これ、私のせいだよね…!?ど、どうしよう…。このままだと、そのまま魂がどこかに飛んで行きそうですごく怖いんだけど…!それで、入ってきたお客さんにぎょっとされそうなんだけど…。えっとえっと…、どうすれば…。と、そこで、私はある重大なことを思い出した。

「ルイ、さっき、ネネから聞いたんだけど、サーニャ様、今日の午後、…つまり、今の時間帯に、こっそりここにいらっしゃるって!」

「…!??聞いてないぞ、そんなこと!ってか、何でそれを早く言わないんだよ…」

怒られたけど、ルイが一気にいつもの調子に戻ったので、少しほっとした。そして、私は、ネネとの別れ際の会話を思い出した。


「そうだ、結花、ルイに伝えておいてくれる?そこそこ重要なことだから」

ネネは不意に、そう話を切りだした。重要なこと、ってなんだろう…?そう思った私は首をかしげた。

「あのね、お母様が今日、お祭りでお花屋さんに行くみたいなの。昨日、メイドたちに話していたから、ほぼ確実に来るはずだよ。だから、心の準備とかちゃんとしておいてね!」

「えええ!?それ、そこそこ重要、じゃなくて、超重要じゃないの!?でも、分かった、伝えておくね」

ネネは、てへっ、という感じで笑って、

「まあ、その時はあたしもいるから、たぶん大丈夫だよ!それじゃ、また後でねー!」

と、本当に大丈夫かどうか不安になる言葉を言って去っていった…。


その時はちゃんと覚えていたんだけど、すっかり忘れていた…。その理由を言うとすると、たぶん、お店に戻ってからのあの出来事のせいだと思う。あれで全部吹き飛んでしまったような気がする…!あー、もう!私は、そっと花に手を伸ばした。とりあえず、落ち着こう、私。こんな慌ててる様子をサーニャ様に見られたら恥ずかしいし…。私は何度か深呼吸して、気持ちを落ち着かせた。たぶん、これで大丈夫なはず。ルイも、最初は少しパニックになっていたが、少し落ち着いたみたい。

「まあ、なるようにしかならないよな。…でも、もし、そのタイミングであの人が来たらどうしようか…。貴族が二人も同じ場所にいるなんて状況、絶対にごめんだ…」

どうやらルイは、ルイのお父さんのロディル卿の話をしているみたい。

「でも、お互い、相手が誰だか気付かないだろうし、たぶん修羅場みたいな感じにはならないんじゃないかな?だったら、大丈夫なんじゃないの?」

「確かに、本人は分からないかもしれないけど、俺はどっちの顔も知ってるからな…。こっちだけ、すごくひやひやすることになる…」

なるほど…。そう考えると、確かに、少し怖いかもしれない。サーニャ様と、ロディル卿が同時に来ませんように…、と、私は心の中でお祈りした。その後で、提案する。

「…でも、そんな話ばっかりしてたら心の中が不安ばっかりになっちゃいそうだし、何か別の話でもしようよ」

「別にいいけど。じゃあ、そうだな…。どういう時が、素直じゃない、って思うんだ?」

す、すごいところに話が飛んだ…!そして、ルイがちょっと真剣な表情になっている。私は少し考えた。…どういう時、か。うーん…。急に言われると難しい…。でも、素直じゃない、とは思うけど、それだけが全てじゃない、とも思う。なので、私は、その言葉に他の言葉も付け加えることにした。

「どういう時、って言われると、何とも言えないけど。でも、素直じゃない、って感じることとか、微妙にひどいな、って思うことはあるけど、私は、ルイのこと、嫌いじゃないよ。だって、その分、優しいもん。例えば、そこそこ前の話だけど、おじいさんが私について色々聞いてきた時、私をかばってくれたし。それに、私がナデシコ摘んでた時、何だかんだ言いつつ待っててくれたし!」

私はそう言ったが、何故かルイからの反応が全く無かった。…??あれ、私、何か変なこと言ったっけ?特におかしなことは言ってない…はず?

「おーい、ルイ?大丈夫?体調悪いの?」

私は、ルイの顔を覗き込んだ。少し耳が赤い…?…と、ルイははっとして、ものすごい勢いで後ろに下がった。どうやら、大丈夫みたいなのでほっとした。

「…べ、別に、何でもない。……ちょっと、外に行ってくる」

ルイは唐突にそう言って、外に出た。今、サーニャ様がいらっしゃったらどうするんだろう?と思ったが、止める理由が特になかったので、私はひらひらと手を振った。その場に、一人取り残される。

「でも、さっき、ちょっと赤くなった気が…。大丈夫かな?」

私は思わずつぶやいたのだった。

次回は、二日目の午後編その二です!

読んで下さり、ありがとうございました。

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