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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
四章 異世界花屋とお祭り ー当日編ー
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第六十四話

遅くなりましたが、第六十四話です。

射的で遊んだあと、私たちはどこかへ移動することにした。行先は決まってないけど、とりあえず辺りを歩いてみる。すると、先を歩くネネが不意に振り返って、私に言った。

「次は、結花の行きたい場所に行こうよ!どこに行きたい?というか、ちゃんと考えた?」

そ、そういえばそうだった…。全く考えてなかったな…。なので、私は考えることにした。今、私が行きたいところ…。うーん…。どんなお店があるかは全然分からないけど、何か食べ物を売ってるお店に行きたいかも。お昼ご飯の意味も兼ねて、何か食べたい気分。でも、食べるとしたら何がいいかな?そう思ったところで、私はあることを思い出して、二人に言った。

「私、久しぶりにパン屋さんのパンを食べたいかも。最近、食べてなかったんだよね…。それに、ちょっと気になることがあるし。やってるかな?」

私のその言葉に、ジェシカが元気よく手をあげて言った。

「パン屋さんなら、わたし、昨日どこかに行く途中で見たよ!確か、向こうの方だった気がする!」

ということで、ジェシカにパン屋さんまで案内してもらうことにした。その途中で、ネネが不思議そうに私に尋ねてきた。

「でも、何でパン屋??焼きそばとか、わたあめとか、お祭りだからそういうのもあるけど…?」

「そうなの?!時間があったら行ってみようかな…。それで、何でパン屋なのかって言うと、前にパン屋さんに行った時に、カメメロンパンの話をしたんだけど、そしたら、祭りの時に作ろうかな、って言ってたから、ちょっと気になって。それに、あそこのパン、すごく美味しいから!」

「そうなんだ…。でも、何でカメなの?普通のメロンパンで良くない?それに、カメだったら、可愛すぎて食べちゃうのがもったいない気がするんだけど…」

ネネにそうつっこまれた。確かに、味は変わらないかもしれないけど…。小さい頃はパン屋さんに行くたびに、お母さんにお願いしまくって買ってもらってたのだが、大きくなるにつれて、何となく、子どもっぽいかな?と思っちゃって買わなくなってしまった。だから、久しぶりに食べたいなー、と思ったのだ。

「まあ、好みは人それぞれだから別にいいんだけどね。あたしも何かパン買おうかな!王宮だと、パンはあるんだけど、固いし、冷めてるから全然美味しくないんだよねー…。レパートリーも少ないし」

ネネが愚痴を言った。どうやら、王宮では毒殺とか、そういう危険性があるらしく、必ず毒見がされているのだそう。また、それは、身分が高かろうが低かろうが、貴族であるならば、必ずしてもらわなければならないらしい。ネネも貴族なので、毒見をしてもらっているそうだ。しかし、そのせいで、食事が出てくるときにはすっかり料理は冷めてしまっているらしい。

「王宮って怖いんだね…。ご飯は作りたてが一番なのに…。冷めてるのとか、正直嬉しくないよね」

ジェシカが同意した。ネネは、言葉を続ける。

「そうそう。だから、屋敷に帰った時は、本当に最高なの!本当は毒見とかすべきなんだろうけど、屋敷ではそういうのを全然してないから、温かいままなんだ。それに、こっそり街に出て、何か食べ歩きすることもできるし!」

ネネの食事事情を聞いているうちに、パン屋さんに着いた。そこには、普段もお店にいる女の人がいる。

「こんにちはー。パンを買いに来ました!」

私がそう声をかけると、何故か女の人は申し訳なさそうな表情をした。

「そういえば、あんたの分のパンを取っておくの、忘れてたよ…。すまないね」

どういうこと??困惑した私に、女の人は説明してくれた。

「あんたが言ってくれた、カメメロンパンとやらがあっただろう?あれ、祭りだからちょうどいいと思って試作して、いい感じにできたんだよ。だから、販売することにしたんだけど…。これが、予想外に売れちゃってねえ。特に、子どもたちに大人気で。だから、まだ午前中だけど、売り切れなんだよ」

「カメメロンパンって、案外侮っちゃいけないかも…」

ネネが思わず、というようにつぶやいた。確かに、私もそう思った。まさか、そんなに人気が出るとは…。…って、ちょっと待って。つまり、カメメロンパンはないってこと…!?そんな…。私がショックを受けている傍で、女の人は話を続けた。

「…だからね、さっき、もう一回カメメロンパンを作ってきたんだよ。今は、焼いてる途中だからないけど、夕方くらいに来てくれればあるはずだよ」

「本当ですか…!それなら、お店が終わった後、絶対、絶対来ます!!」

やったー!!!カメちゃん、楽しみ…。どんな形になってるのか、すごく気になる…!私はほわほわと想像していたが、ジェシカの言葉で我に返った。

「…で、カメメロンパンはないけど、どうするの?何か買う?」

「買う!絶対に買う!チョココロネがすごく美味しいんだよ。あと、ぶどうパンも好きかな!」

今日の屋台でもその二つは販売していて、まだ売り切れていなかったので、私は迷わずその二つを買うことにした。わーい、パンだー♪いつも通り、とても美味しそう…!そして、まだ少し温かい。なので、完全に冷めてしまわないうちに、食べることにした。しかし、パンを口元に持って行ったところで、ネネに呆れたような口調でこう言われた。

「あのさ、結花…。あたしたち、まだパンを買ってないんだから、少しくらい待っててくれないかな?」

「…はーい。すみません、待ちます」

すると、そのやり取りを見ていたジェシカがくすくす笑いながら言った。

「何か…、犬とかに、待て、ってしてるみたいなんだけど…」

その言葉に、ネネはけたけた笑いだした。うぐぐ…、何か否定できないのが悔しい…。


パンを食べ終わった後。ちょうどいい時間になったので、私はお店に戻ることにした。ネネは、この後はサーニャ様とお店を回り、ジェシカもゼンさんと街をぶらぶらするのだそう。なので、帰り道は一人だった。今日も人が多い道。みんな、とても楽しそうで…。そこで何となく、元の世界を思い出してしまった。狭い神社の中で、たくさんの人が楽しそうに盆踊りをしたり、屋台で何かを買ったり…。私の隣には両親や友達がいて…。懐かしいな…。そんな感傷的な気持ちを抱きつつ、私はお店への道を歩いた。


扉を開けると、中では、ルイが一人で白い花をいじっていた。たぶん、萎れかけている花を取り除いているのだろう。大量の花が、紙の上に積み重なっていた。全部捨てちゃうのかな?何かもったいない気がする…。…と、そこでルイが私に気付いた。

「昨日よりも余裕で帰ってきたな。…ところで、ネネとジェシカは?」

「二人は、それぞれ約束があるみたいで、途中で別れたよ。そっちこそ、ゼンさんは?」

「あいつも、ジェシカとの約束があるから、とか何とか言って、どっか行った。…ってか、あの二人、昨日も一緒にいたような気がするけど…?まあ、別にいいんだけどな」

そう言ってルイは何故か紙の上に散乱している花をじっと見た。

「…その花、捨てちゃうの?」

「ああ。もったいないけどな。でも、使い道が分からないから、結局捨てることになる」

私は、紙に近付いて、上に乗っている花のうちの一つを手に取った。…この花とか、まだ綺麗に咲いているんだけど。何かに活用できれば…。

「この花で、また栞ができそうだけど…、他の物も作ってみたいんだよね。何かあるかな…?」

「さあ?そこら辺は、今すぐに決めなくても、祭りが終わった後にでも、おいおい考えていけばいいんじゃないか」

「そうだね。でも、これ捨てちゃうの、やっぱりもったいない…!ね、これ、屋根裏のところに、ナデシコと一緒に飾ってもいい?たぶん、色のバランスがちょうどいいだろうし」

「別にいいけど。………あ!」

急にあ、って言われて、少し驚く。何だろう…?何か、虫でもいたのかな???そう思ってきょろきょろと周りを見てみたが、何もいなさそう…。じゃあ、何で急に声をあげたんだろう?私が首をかしげていると、ルイが一輪、紙に置いてあった方の花を取った。少し長めのその茎を、はさみで半分くらいの長さに切った。…???何してるんだろう?私がそう思っていると、何故かルイは私の方に向き直った。

「え…っと。これは、今、何をしようとしてるの?」

「いや、普通にこの花をちょっとつけてみようかと」

???待って、話の状況が飲み込めないのだけど…。どういうこと???

「えーと…、それは、何につけるつもりなの?」

「は?結花に決まってるだろ。…あ、あと、念のため言っておくけど、動くなよ」

…!??待って、本当にどういうこと!?疑問を解決しようとしたら、更に分からなくなったんですけど…!!何がどうしてそうなった!?

私が心の中であわあわしているうちに、花を持った、ルイの手が、近づいてきた。避けたいのだが、動くな、と言われてしまったので、動けない。本当に何なの…!?と思っていたら、ルイの手が、一瞬私の耳に触れ、離れていった。

「…!?!?あの、ルイ、今…」

「できた。…けど、いまいち安定してないな。あまり触らないようにしろよ」

何が…!?私の混乱度が徐々に上がっていっている…。そこで、気付いた。ルイの手から、さっきまであった花が消えている。…って、もしかして!!!私は耳の辺りに手を近付けた。そこに、薄い何かの感触がある。…ということは、やっぱり、ルイが私の耳のところに花をつけてくれたみたい。ようやく、ルイの言動と行動が一本の線でつながったような気がした。と、そこで、軽くルイに手をつかまれた。

「言ったそばから、触るなよ…。けっこうそれ、不安定だから。そうだな…、もうちょっとこっちに…」

再び、耳の辺りにルイの手が触れる。ちょっと、くすぐったい、かも…?少しして、ようやくルイの手が離れていった。ものすごく満足そうな表情をしている。

「これなら、今日の夜まで落ちないと思う。祭りなんだし、ちょうどいいんじゃないか?」

「あ…、ありがとう…」

何とかお礼を言うことができた。…けど、心中は全く穏やかじゃない!!!い、いきなりすぎて、びっくりした…!何だか、顔が熱い。今の私、絶対に顔が赤くなってる…。でも、花がどんな感じになってるかが少し気になる。…鏡を見たいような、見たくないような、複雑な気持ちになった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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