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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
四章 異世界花屋とお祭り ー当日編ー
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第五十八話

一日目の夜編です!

その後もお客さんはたくさんやって来て、接客しているうちに、あっという間に夕方になってしまった。少しずつ日が短くなって来ているのか、最近、暗くなるのが早い。この世界に来た頃は、まだこの時間でも明るかった気がする。お店の人たちは、少しずつ、閉店に向けて片づけを始めた。どうやら、食べ物を売っているお店以外のところは、夕方になったら片付けるのがほとんどなのだそう。しばらく街の様子を眺めていると、提灯の灯がともり始めた。世界は違うけど、本当にお祭りなんだな…、と改めて実感した。

「俺らもそろそろ、少しずつ片付け始めるか」

「了解。…それにしても、花を誰かにプレゼントする、って人、すごく多かったね。何でだろう?お祭りってそういう日だったっけ…???」

元の世界では、そんな感じじゃなかった気がするんだけど…。元々は、作物がたくさん採れますように、とかお願いしたり、実りに感謝する為の物だった気が…?世界が違うと主旨も違うのかな…?

「違うと思うけど…。タイミング的な話じゃないのか?あと、今日の夜とか、花火が見られるし、そういう時に渡したいな、とか考えてる人が多いんだと思う」

「なるほどー!花火、楽しみだなー。ところで、ルイも誰かに何かプレゼントするの?」

「…!!?な、ま、まさか、午前中、見てたのか??!」

見てた、とは一体…?というか、何でそんなに慌てているんだろう?色々謎。…と、そこで気付いた。見てた、の意味はよく分からないけど、動揺している、ってことはもしかして、本当に誰かに何かプレゼントするってことかな??…まさか、ルイの好きな人に…?

「うう…。何か複雑な気分…。…とにかく、渡せるといいね。頑張って!」

「はあ…。どうも…。まあ、でも、それは、祭りの日じゃなくても渡せる…はずだし」

「そうなの…?でも、せっかくなら、お祭りの日に渡しちゃえば?…誰に渡すのか知らないけど」

すると、なぜかルイは、真剣に何かを考えた。…??急にどうしたんだろう?と、ルイは不意に私の方を見て、真面目な表情で聞いてきた。

「結花だったら、いつ、渡されたら嬉しいと思うんだ?」

わ、私ですか…。私に質問しても、恋愛経験はゼロだから、上手く答えられるか分からないのですが?それに、答えられたとしても、参考になるかどうか…。でも、ルイがすごく真剣そうだから、答えないのも、何だかな…。なので、私はかなり真面目に考えた。うーん…。ドラマを参考にしてみようかな、と一瞬思ったのだが、そもそもドラマを全然見ていなかったので、参考にできない。…やっぱり、自分の場合、どうなのかを考えた方が良さそうな気がする。えーとえーと…。

「うー…、えーと…。あ、誰もいない場所とか?人がいないから、周りを気にする必要がないし!」

「そうか…。ありがとう、助かった。参考にする」

「え、うん。でも、私一人の意見でいいの?ジェシカさんとか、アケビさんにも聞いてみたら?二人の方が、そういうのに詳しいと思うんだけど…?」

「そうかもしれないけど。でも、あの二人に聞いたら、からかわれそうだし、やめとく」

…そうなの?…っていうか、もし、ルイがプレゼントを渡したい相手が、私と性格が真反対の人とかだったらどうしよう?この質問、案外、重要なものだったのでは…。本当に、私が答えて良かったのかな?かなり心配なんだけど…。でも、ルイはどこか満足そうなので、まあ、大丈夫だと思う。

「…あ、悪い、俺の話に付き合わせて。改めて、片付け始めるか。花は店の方に持って帰って、ポプリら辺は今日みたいに保管場所に置いておけばいいと思う」

「はーい。…ねえ、片づけが終わったら、花火を見ることってできる?こっちの世界の花火がどんな感じかすごく気になるから…。その、見てみたいな、って思って…」

私は大丈夫なのだが、もしルイが疲れていたら、私に付き合わせてしまうのが申し訳ないな、と思った。そのせいで最後の方は声が小さくなってしまった。でも、他の人と行ってもいいのだけど、どうせならルイと一緒に行きたいな…、と考えていたのだ。

「ああ。どうせなら、今日くらい、屋台のもので夕食を済ませたっていいし。それに、結花を一人で行かせたら迷子になりそうだしな」

ひ、否定できない…。だって、もう夕方だけど、まだまだ人はたくさんいるもの。あっという間に人の波に流されそう…。はぐれたらどうしよう、と少し心配だけど、でも、一緒にいられるのは嬉しい。

「じゃあ、早速片付けよう。この箱は……」

その時だった。不意に、強い視線を感じた。道のどこかからだ。私は、テントの入り口付近に近付き、辺りをきょろきょろしてみた。…でも、見ている人は誰もいない。…気のせい、だったのかな?

「急にどうしたんだ?誰か知り合いでもいたのか?」

急に言葉を切ってしまい、その上、テントの外を覗き始めた私を不思議に思ったのか、ルイがそう尋ねてきた。でも、確実なことじゃないし…。言ってもいいのかな?少し迷ったが、結局私は、「気のせいかもしれないけど」と前置きして、そのことを言うことにした。

「今さっき、通りのどこかから視線?を感じたような気がして、誰なのかな、って思ったの。でも、こっちを見ている人は誰もいなかったから…」

私のその言葉に、ルイは少し顔をしかめた。

「そういえば俺たち、あの人の存在、すっかり忘れてたけど…。もしかしたら、来てるかもしれないな」

あの人の存在……?誰か、いたっけ?少し考えた末、私もある人物に思い至った。

「ルイのお父さん…!私もさっぱり忘れてた…。でも、ここに来ていないだけで、お祭り自体には来てるかもしれないね…」

私たちは顔を見合わせた。…と、ちょうどその時、アケビさんがやって来た。そして、恐らく尋常じゃない様子の私たちを見て、少しぎょっとしていた。でも、そっと尋ねてきた。

「えーと…。二人とも、何かあった?というか、絶対あったよね?どうしたの、大丈夫?」

「…あ、アケビ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど。ヴェリエ国から来る予定の貴族、いるだろ?」

「え…?いるけど、どうしたの、唐突に?えっと、名前何だったっけ?ちょっと待ってね…」

そう言うと、アケビさんは肩にかけているバッグの中から何かの冊子を取り出した。ぱらぱらとページをめくり、しばらくしてから言った。

「あー、思い出した。ロディル卿だ!確か、ルイのお父さんだよね?名字で呼ぶことって全くないから普通に忘れてた。ごめんごめん。…で、その人がどうかした?」

「そいつが今日、ここに来てるのか知りたいんだ。答えられないなら別にいいんだけど…」

「あのね、ルイ…。ロディル卿は一応、あなたのお父さんなんだから、少しくらい敬いなさいよ…、全く。まあ、それは一旦置いておいて、来てるか来てないかだけだったら言えるわ。さすがにいつ来るか、とかは言えないけど。…結論から言うと、今日はロディル卿は、ここに来ていないはずよ。何も報告がなかったから。お忍び、って可能性もあるけど、もしばれたら大変だし、その可能性は低いわね」

確かに、貴族とかだと、暗殺される危険性とかありそうだし、お忍びってなかなかなさそう…。でも、そうすると、さっきの視線は一体…?やっぱり気のせいだったのかな?

「そうか…。アケビ、ありがとう。…で、何の用だ?さっきも来てた気がするけど。…そうだ、暇ならついでに、片付け手伝ってくれないか?」

「…えええ。わたし、ただ、昼間のお礼に来ただけなんだけど。それに、これから約束があるし。…あのね、お花を渡したらすごく喜んでくれたんだ。ありがとね、結花ちゃん。ね、ルイ、たまに結花ちゃんに植物屋に来てもらっちゃダメ?そしたら、わたしの仕事もはかどりそうだし!」

「その判断は結花に任せるけど…、俺は絶対に反対だな。書類整理に追われることになりそうで、すごく心配だし」

アケビさんは、痛いところを突かれた!!というような表情になった。…ってことは、本当にそうなる可能性が?ちょっと怖いんだけど…。というか、何だかんだ言って、全然片付け終わってないし!花火が始まったら、どうしよう…。焦った私は、思わず二人にこう聞いてしまった。

「あの、花火って何時くらいからですか?それまでに片付けしたいのですが…!」

「え?あ、あー…。確か、三十分後かな?」

アケビさんが、話の脈絡のなさに戸惑いつつも、そう答えてくれた。何とか間に合う…かな?

「じゃあ、三十分以内に片付けないと。お店にお花を置きに行かないといけないし、ささっとここの整理をして、何とか間に合うようにしないとね。絶対、花火を最初から最後まで見るんだから!」

そう言うと、私の勢いにちょっと驚いたらしい二人は、一瞬固まったが、数秒後、片づけを始めた。…結局、アケビさんも手伝ってくれている。約束は大丈夫なのだろうか…?でも、手伝ってくれるのはありがたいな、と思う。十分もすると、お店の中は、かなり片付いた。これなら、余裕で間に合いそう。

「じゃあ、わたしはそろそろ行くね。そこに、ジェシカちゃんたちもいるみたいだし、何かあっても、まあ大丈夫じゃないかな。それじゃあ、また明日!花火、楽しんでねー」

アケビさんは笑ってそう言い、通りに出た。あっという間に、その姿は、たくさんの人で分からなくなってしまう。…何か、さっきよりも人が増えた?すると、ジェシカさんが話しかけてきた。

「一緒に花火見たいな、って思って来たんだけど、そろそろ片付け終わりそう?」

「はい、後はここら辺の物を、お店と、管理場所に運ぶだけです。たぶん、すぐに終わりますよ」

「何か、結花が一瞬怖かった…」

と、ルイに言われてしまった。…すみません。以後、気をつけます。少し反省…。

「じゃ、とりあえず運ぼうか!わたしたちも手伝うよ。誰が、どっちを運ぶ?」

「慣れちゃったから別にいいんだけど…、ジェシカ、何でいつも僕を勝手に入れるのかな…」

ゼンさんがちょっとぼやいている。ジェシカさんは聞こえないふりをしていた。

四人で少し、話し合った結果、私とジェシカさんが管理場所へ、ルイとゼンさんがお店に行くことになった。待ち合わせもちゃんと決めて、私たちは一旦分かれる。私は、ジェシカさんに、午後、どこに行っていたのかを聞きながら、商品を丁寧に運んだ。いつの間にか、空は瞑色めいしょくになっていて、提灯の光が街を照らしていた。

この一話で夜編を終わらせたかったのですが、予想外に話が長くなってしまったので、二つに分けることにしました。なので、次回は、夜編その二です。

読んで下さり、ありがとうございました。

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