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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
四章 異世界花屋とお祭り ー当日編ー
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第五十四話

時間が遅くなってしまい、すみません…。

お祭りの中心に近づくに連れ、段々と人が増えてきた。まだ朝早いのに…。でも、それだけ、このお祭りは人気があるのだろう。私たちはお店を見ながら、道を進んだ。少し人が少なくなったところで一旦休憩することにした。

「そういえば、結花ちゃんが元々いた世界にもお祭りがあったんだよね?どんなお店が出てた?」

アケビさんにそう聞かれた私は、少し考えた。

「そうですね…。わたあめとか、かき氷とか、色々ありましたけど…、一番楽しかったのは、金魚すくいでしょうか?毎年、友達とやってました」

すると、アケビさんがいいこと思いついた、って感じの顔で私たちにあることを提案した。

「確か、このお祭りでも、どこかで、魚すくいやってたよね?確か、魚屋さんだったっけ?せっかくだから、三人で何匹取れるか競争してみない?で、勝った人が次に行きたいところを言うの!いい考えじゃない?」

すると、意外なことに、スイさんがアケビさんのアイデアに一番先に賛成した。

「いいですよ!私、魚すくい大好きなんです!師匠に勝つ自信があります!」

「いやいや、わたしだって、たまにはスイちゃんに勝たないと師匠としての威厳みたいなのが…」

「大丈夫です。師匠は師匠ですから!それに、最初に会った時から威厳とか全くなかったですよ?」

「じ、地味に傷つくんだけど…。それに、何か悔しい…、絶対に負けないからね、スイちゃん!」

そんな話をしつつ、魚屋さんへ向かう。…というか、この世界にも魚すくいがあるんだ…。若干驚いた。でも、金魚ではなく、魚ってことは、この前の時みたいな、水族館で売っていそうな魚が泳いでいるのかな?意外と大きいサイズの魚が泳いでいたりして?とれるか心配…。そもそも、金魚でも何でも、魚をすくうこと自体がかなり久しぶりだから、できるかどうか…。色々不安だ。

「あ、ここだよ、ここ!やってるやってる!ここが最後尾みたい…。並ぼうよ!」

アケビさんが魚すくいのお店を見つけた。人がたくさん…。けっこう人気みたい。遠目に水槽の中を覗いてみると、種類はよく分からないが、色とりどりの魚たちが泳いでいる。そこまで大きいサイズの魚はいなさそう。水が光を反射し、きらきらと輝いていた。水槽の周りでは、主に子どもたちがわいわいしていた。楽しそうに魚を取っている。中には、すぐにポイの紙が破けてしまってしょんぼりしている子もいた。確かに、水に入れた瞬間、破けたら悲しいよね…。あ、でも、もっと悲しいのは、魚を取れた、と思ったら、紙に穴を開けて逃げられた時かも…。私は子どもたちの様子を見つつ、アケビさんに質問した。

「これ、すごく人気みたいですけど…。毎年やっているんですか?」

「うん、そうだよ!今は小さい子が多いけど、けっこう大人にも人気なんだよねー。わたしも毎年来てるよ。やってて飽きないし」

アケビさんがすごく楽しそうに答えてくれた。スイさんがそんなアケビさんを見て、面白そうに笑う。

「確かに魚すくいはとても楽しいですよね。でも、前から思っていたのですが…、師匠って少し子供っぽいところがありますよね?去年とかも魚をすくうたびに大喜びだったじゃないですか」

「何でそんなこと覚えてるの!?今すぐその記憶、消して!…そういえば、去年はわたし、スイちゃんに負けたんだっけ?やっぱり今年こそは勝たないとね!」

アケビさんが闘志を燃やしている。私はとりあえず、一匹くらい取れればいいかなー…。そんなことを考えつつ、順番を待った。しばらくすると、私たちの番が来て、私たちは魚屋さんにポイをもらった。

「ではでは早速!何匹とれるかなー?…あ、というか、とった魚はどうする?」

どうやら、この魚すくい自体は無料らしい。ただ、持って帰るのだったら、お金が必要なのだそう。うーん…。どうしよう?考えていると時間が経ってしまいそうなので、とりあえず、魚すくいをすることにした。魚がすくえたら考えることにする。ちなみに、アケビさんは魚を取ったら、植物屋さんのところで飼いたいらしい。スイさんも、自分の家で飼うつもりだという。私は、水槽に目を向けた。そこにいるのは、カラフルな魚たち。と、視界の端を何かがよぎって、私はそっちを見た。…って!ちょっと待って。私は、自分が見たものが一瞬信じられなかった。なぜなら…。

「スイさん!?まだ始めてから数秒しか経ってないですよね!?何でもう二匹もすくってるんですか…」

「え?二匹とも、たった今、とったばかりですよ?偶然、二匹とも近くにいたので」

私が見たのは、スイさんが持っている、お椀の中身。そこには、いつの間にか魚がいたのだ。やはり、視界の端を何かがよぎったのは、スイさんが魚をとったからだったみたい。…というか、すごく軽く二匹とも、って言ってたけど、普通に考えたら、かなりすごいことだと思う。紙も全然破けてないし…。スイさん、すごい…。一方のアケビさんはと言うと、スイさんの言葉を聞いて、戦意消失していた。

「お二人とも、魚すくいしないんですか?早くしないと、時間がなくなっちゃいますよ?」

そう言われた私は、再び水槽に目を向けた。ポイを水の中へと入れる。紙が破けなかったので、ほっとした。でも、ここからが大事なところ…。元の世界で、誰かに金魚すくいのコツを教わったことがあった。その人曰く、魚は追いかけられれば、当然逃げてしまう。だから、ポイを動かさず、しばらく待ち、近くに魚が来たら動かすのだ…、と。そんなことを思い出していると、静止させていた私のポイの近くに魚が近づいてきた。…よし、今だ!魚をお椀に入れた。すると、隣で私を見ていたスイさんが拍手してくれた。

「結花さま、おめでとうございます。とても取り方が綺麗でしたよ!何だったら、私と結花さまでどれだけ取れるか勝負しませんか?」

「…質問なんですけど、スイさんの持ってるお椀には、今、何匹魚がいるんですか?」

「えーと…。少し待ってください。……ちょうど十匹です!」

ちょっと待って、全く勝ち目がない様な気がする。というか、いつそんなに魚を取った?それと、アケビさんはどうしたの?始める前まで、アケビさんとスイさんの二人で勝負する、って話をしてなかったっけ?気のせいだったのかな…。そう思いつつ、アケビさんのいる方向を見ると、なぜかすごく沈んでいた。…話しかけても大丈夫なのかな?でも、このままだとどういう状況か分からないので、とりあえず声をかけてみることにした。

「あの…、アケビさん?どうしたんですか?何かあったんですか?」

「……水の中に入れた瞬間、紙が思いっきり破けちゃったの。何もとれなかった…。うー、悲しい…」

「師匠、ドンマイです。また来年、頑張りましょう!…で、結花さま、どうしますか?このまま勝負を続けます?」

「…え、遠慮させて頂きます。あ、でも、もう一匹だけすくってもいいですか?」

私はさっきと同じように、魚を無事にすくった。ひらひらと二匹の魚が優雅に泳いでいる。可愛い…!やっぱり飼いたいかも…。でも、どうしよう?ルイに何も相談してないし、怒られるかな?でも、可愛いものは可愛いのだ。私が葛藤していると、先に魚屋さんに代金を支払ったスイさんが言った。

「迷っているのなら、買った方がいいと思いますよ。後悔しても、時は戻りませんし」

そ、そう言われると、買わないとな、って思ってしまうんだけど!?ある意味、誘導されている…?でも、可愛い魚さんを飼ってみたいな、という思いもあり、結局、代金を支払った。

「帰った後で、ルイに怒られたらどうしようかな…。そしたら、アケビさんにあげてもいいですか?」

「いいけど…、その可能性は限りなく低いんじゃないかな?というか、絶対にない」

なぜか断言されてしまった。…何で?どういうこと??すると、私の心境を読み取ったかのようにアケビさんは言葉を続けた。

「ルイのことだし、結花ちゃんの頼み事は何でも聞いちゃいそうじゃない?スイちゃんもそう思うよね」

「そうですね。ほぼ確実です。なので、心配しなくて大丈夫ですよ。あ、あと、もしもダメだったら、その魚を師匠ではなく、私に頂けませんか?」

「ちょっと、スイちゃん!?どさくさに紛れて、何言ってるの!?それに、スイちゃんはもう五匹も魚を持ってるんだから、それ以上いらないでしょ…。何匹飼うつもり?」

二人の会話を聞きつつ、私は袋の中の水に入った魚を見た。くるくると回る、赤色と、青色の魚。大きさは小さいが、少し長めの尾ひれがどこか優雅だ。…飼えるといいな。

「ところで、スイちゃん。行きたいところは?スイちゃんが一番多く取ったから、決めていいよ」

アケビさんのその言葉に、スイさんは五匹くらい魚が入っている袋を眺めつつ、考えた。

「そうですねー…。あ、何か飲み物が飲みたい気分です。カフェとか、行きませんか?」

「いいよー!でも、混んでないといいんだけど。大丈夫かな?」

少し心配そうなアケビさんに、スイさんは冷静に返した。

「恐らく、大丈夫だと思います。屋台が多いので、食べ歩きしている人も多いみたいですし。…ほら」

確かに、あちこちで食べ歩きしている人がいる。ちなみに私は、食べ歩きができないタイプだ。マナーとかそういう話ではなく、ただ単に、何か食べながら歩けないのだ。元の世界のお祭りでは、そのせいで友達にすごく呆れられた記憶がある…。なので、カフェに入れるのは、私としてもありがたい。

「まあ、とりあえず行ってみようか!で、混んでたらどうするか考えよう!」

アケビさんがポジティブにそう言った。私とスイさんはうなずいた。でも、私はそのカフェがどこにあるのかさっぱり分からないので、二人の後についていくことにする。…やっぱり、誰かと一緒に来て良かった。たぶん、一人だったらあっという間に迷子になってたと思う。

「迷子になったら、ルイに怒られるだろうなー…」

つい、口に出してしまった。すると、アケビさんが不思議そうに言った。

「どうだろう?怒るよりも先に、心配して街中を探し回りそうじゃない?」

「あり得そうです。あと、ものすごく慌てそうですよね…。…それにしても、人が増えてきましたね。はぐれないように気をつけましょう」

…そうなの?意外とそういうものなのかな??でも、とにかく迷子にならないのが一番だ。私は、前を歩くアケビさんを見失わないように気をつけつつ、混雑している道を歩いた。

読んで下さり、ありがとうございました。

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