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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
三章 異世界花屋とお祭り ー準備編ー
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第五十一話

お祭り前日です!

それからあっという間に数日が経った。お店とお祭りの準備で忙しすぎてまるで、飛ぶように時が過ぎてしまった。今日は、お祭り前日。お店は、その準備のために特別にお休みしている。ちなみに、ポプリ作りと栞作りは何とか終わらせられた。特にポプリ作りは本当にギリギリだった…。ジェシカさんやゼンさんにも手伝ってもらって、終えることができた。二人に手伝ってもらっていなかったら、私は徹夜でポプリを作ることになっていただろう。二人には感謝の気持ちしかない。

「今日は一日、外に出てるけど、あんたたちはどうするんだ?店にずっといるのか?」

出かける前、ルイがジェシカさんたちにそう尋ねた。すると、ジェシカさんとゼンさんは顔を見合わせて相談した。

「ゼン、どうする?ここにいる?それとも、ちょっと手伝いに行く?わたしはどっちでもいいけど…。でも、ずっとここにいるのも暇だよね?」

「僕もどっちでもいいかな。でも、暇だって言うのは確かなんだよね…。うーん…、とりあえず午前中はここにいることにして、午後は手伝いに行こうかな?」

「そうだね、そうしよう!…ってことで、午後からそっちに行くよ!それでも大丈夫?」

ルイはうなずいて、お店の鍵を二人に渡した。

「分かった。ここを出るとき、これで扉を閉めてくれ。場所は分かるか?」

「大丈夫!まかせておいて!」

ジェシカさんがそう言って鍵を受け取った。そして、ゼンさんと一緒に私たちを見送ってくれた。


お祭りの中心となる広場に行くと、そこでは既にたくさんの人たちが準備に取り掛かっていた。その真ん中にいるのは、植物屋さんでよく見かける人たちだ。準備を指揮している。…大変そう。その中には、アケビさんもいた。色々な人に飾り付けの指示をしている。その隣では、スイさんも何か作業をしている。…と、不意にアケビさんと目が合った。アケビさんは、私たちに軽く手を振ってくれたが、すぐに他の人に呼ばれて別の場所に行ってしまった。スイさんも私たちにお辞儀してから、アケビさんの後を追って行ってしまった。

「やっぱり毎年のことながら忙しそうだな…。たぶん、この日が一番忙しいんじゃないか?…さて、俺らもそろそろ始めるか」

「うん。そうだね。でも、その前に聞きたいんだけど、準備ってまず、何から始めるの?」

すると、ルイは呆れたような表情をして言った。

「そこからか…。まず、祭りの店って言うのは、…あ、あそこにあるテントみたいな感じになってる。あれが完成形で、支柱とか布とかを組み合わせないといけないんだ。一度やったことがあるから、組み立てること自体は何とかなると思うけど」

ルイが指さした方を見ると、既に準備をほとんど終えてしまっているお店があった。早い…。何時から準備してたんだろう?…って、それは置いておいて。お祭りのためのお店は、確かに屋根がテントみたいになっている。元の世界のお祭りや運動会などの来賓席に立っているような物に形が似ている。でも、運動会などのテントと違うのは、ちゃんと三方が布でできた壁のようになっていること。壁の前には棚のようなものがあり、商品が置けるようになっている。そして、一方だけは壁がなくて、人が出入りできるようになっていた。…これ、意外と作るのに時間がかかる気がする。

「もしかして、前にお祭りにお店を出したときは、一人でこれを作ったの?大変じゃなかった?」

「…アケビにちょこちょこ手伝ってもらったけど、まる一日かかった。かなり面倒だった…。しかも、あの頃は今よりも力がなかったし、初めてだったから。今年はあの時より人が一杯いるから、楽だな」

「…って、そもそも材料はどこにあるの?ここら辺にはなさそうだけど…?」

「確か、あっちだったかな。でも、重いものばかりだから、何回かに分けて運んだほうがいいと思う」

そう言ってルイは材料がある場所まで案内してくれた。そこには、大量の種類の材料…。こんなに必要なの?と思ってしまうくらい。運ぶだけで時間がかかりそう…。どこかに台車とか、ないかな?そう思ってきょろきょろしたが、…なさそう。というか、あったとしても、人の数が多くて全部使われていそうだ。

「何でそんなきょろきょろしてるんだ。不審者でもいたのか?」

「たぶん、いないと思うけど。そうじゃなくて、物を運べるような台車とかないのかな、って思っただけ。…というか、何で不審者?」

「いたら、警戒しておいた方がいいかと思って。いないなら、それでいい」

そう言って、ルイは材料置き場に置いてあるもので一番重そうな物を引っ張り出し、軽々と持った。もしかして、見た目は重そうだけど、意外と軽いのかな?気になったので、聞いてみる。

「…それ、易々と持ってるけど、重くないの?すごく重そうだけど」

「そんなに重くないと思うけど。試しに持ってみるか?…危なさそうだけど」

ルイは私の方にその材料を差し出す。というか、危なさそう、って…。私ってそんなに非力に見えるのかな?植物屋で何か花を買ったときは、いつもびっくりするほど一杯荷物を持たせられるんだけど…。そう思いつつ、私はその材料を受け取った。…んだけど。その瞬間、それを取り落としかけた。びっくりするほど重くて。ルイが落ちかけた材料を支えてくれたので、何とか落とさずに済んだ。

「…!!?え、何これ、すごく重いんだけど!何であんなに綽然と持ってられたの?!何かずるい…」

「いや、ずるい、って言われても…。それはどうしようもないんじゃないか?」

そう言って、ルイは私の手から材料を取る。しかも、かなり余裕がありそうな表情で。さっきはずるい、って思ったけど、今は何だか悔しい…。私はルイが持っている物ではない、他の材料を運ぶことにした。屋根や壁に使うと思われる布を数枚、引っ張り出す。意外とかさばるな、これ…。私は両腕でしっかりと布を抱えた。そして、少し先をゆっくりと歩くルイを追った。ルイはいつもはけっこう早歩きだから、珍しい。…もしかしたら、私に気を遣ってくれているのかもしれない。もしそうだったら、嬉しいな、と思った。…あれ?何で今、私は嬉しい、って…?少し疑問が浮かんだが、とりあえず今は準備が大事だ。そう思った私は、頭に浮かんだその疑問を頭の隅へと追いやった。

指定されている場所に着くと、周りではけっこう準備が進んでいた。中には、ほとんど完成しているところもある。…早い。私たちは一旦、持ってきた材料をスペースに置いた。そして、再び中心へ材料を取りに行く。それを二、三回繰り返し、ようやく材料を全て持ってくることができた。まだ何も組み立てていないけど、これだけでもけっこう疲れる。前にこれをほとんど全て一人でやったというルイはすごいな、と思った。すると、そこに何故か、ネネがやって来た。王宮にいるはずじゃ?ここにいて大丈夫なの?色々と心配になる…。少し驚いている私たちに、ネネは笑って言った。

「ちょっと暇だから、手伝いに来ちゃった!あ、このことは、他の人には言っちゃダメだからね?」

「念のため聞いておくけど…、あんた、サーニャ様からの許可はもらってるんだよな?」

ルイのその質問に、ネネは目を逸らした。…まさか、言ってないの!?まずくない!?ちゃんと言わなきゃダメでしょ…。ルイも、ネネが本当にサーニャ様に何も言ってないとは思っていなかったらしく、目を丸くしていた。

「ま、まあ、見つかったら、その時はその時だよ。変装してるから、ばれないと思うけど…。そもそも、ここに来るかも分からないし!たぶん、大丈夫じゃない?」

今日のネネの服装は、いつものふわふわのドレスではなく、動きやすそうな服だ。確かに、一瞬見ただけでは分からないかもしれないけど…。でも、サーニャ様がいらっしゃった時、果たしてごまかすことができるかどうか…。なんだか不安だな…。だが来てしまったものはどうしようもない。

「…でも、人手が増えるのはいいことだし、まあいいんじゃないの?」

私がそう言うと、ネネは嬉しそうに笑って私に飛びついて来た。

「そうそう、そういうこと!結花、大好き!ということで、早速準備を始めよー!何から始めるの?」

…私と同じ質問をしている。ルイはルイで、ため息をついていた。

「何であんたが勝手に仕切ってるんだよ…。あと、結花も、何でネネにそういうことを言うんだ…」

そんなこんなで、賑やかなお祭りの準備が始まった。


お昼になった。テント作りは大体完成し、私たちはお昼ご飯の時間にしていた。この時間になってくると、私たちより先に準備をしていた人たちは皆、準備を完全に終わらせて帰ってしまい、準備をしている人はかなり少なかった。お昼の時間、ってこともあって、植物屋さんの人の数も少ない。朝は何もなかった道に、テントがずらずらと並んでいるのは、どこか不思議だ。

「おーい、手伝いに来たよ…って、あれれ?ネネ様がいる?何で?」

そこにやってきたのは、ジェシカさんとゼンさん。不思議そうにネネを見ている。一方のネネは、どこか焦ったような表情を浮かべていた。

「…い、いつもと違う服装なのに、すぐにあたしだってばれちゃった!?どうしよう……」

何だ、そういうことか。何か重要なことでも思い出したのかと思った。ルイも、私と同じようなことを考えていたらしく、ほっとしたような表情をして言った。

「そんなことでびくびくしてるなら、最初からサーニャ様に言っておけば良かったのに…」

「う、うるさい…。正論だけど、逆に心にぐさぐさ突き刺さる…!」

と、そこで、ゼンさんがネネ様にとってはとても衝撃的な一言を放った。

「そういえばさっき、植物屋の方と話していたんですけど、サーニャ様がこっそり様子を見にいらっしゃっている、って話をしてましたよ?」

「えー!?うそだ!というか、何で?どうしよう、本当にどうしよう!絶対怒られる…」

そこにルイが、容赦ない言葉を一言。

「当たり前だろ、サーニャ様に何も言わずに来たんだし。たっぷり怒られてこい」

「うう……。確かにあたしが悪いけど…。お祭りなんだもん…」

ネネは最後に、謎の言い訳をしていたのだった。


その後、サーニャ様が私たちのテントにいらっしゃって、ネネを連れて帰られたのは、言うまでもない。

次回は午後編です。

読んでくださり、ありがとうございました。

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