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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
三章 異世界花屋とお祭り ー準備編ー
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第四十七話

その後、私は何となくルイと顔を合わせるのが恥ずかしくて、顔を合わせないためにも、お店の前の掃除をすることにした。今日は少し風が強いので、ちょうどいい。まあ、掃除が終わったらどうせ、お店の中に入らないといけないんだけど…。少し時間をおいた方が落ち着くかな、と思ったのだ。空を見上げると、雲は一つもなく、ただただ青い空がどこまでも広がっている。清々しいほど、青い空…。でも、私の心の中は、さっきからずっと、もやもやとしていた。何だか、自分がおかしくなったような気がするのだ。だって、さっきまでは、ほんの少し前までは、ルイと普通に話してたのに…。それなのに、

「何で私…、かっこいい、とか…」

つい、つぶやいてしまった。どうせ、道には私以外誰もいない。なので、誰にも聞かれる心配がないのだ。あ、でも、急にお店の中からルイが出てくる可能性はあるかもしれない。

「このこと、絶対にルイには言えないよねー…。うん、このことはルイには絶対秘密にしておこう」

でも、さっきのことを思い出しただけでまた顔が赤くなりそうだ。…と、とりあえず、今は別のことを考えよう。というか、掃除しないと。掃除に集中することにしよう。そう決めた私は箒を動かして、葉っぱを道の隅に集めた。道に落ちている葉っぱが多かったので、意外と時間がかかる。しばらくその作業に集中していると、少し落ち着いてきた。…うん、たぶん大丈夫だ。と、その時、突然、誰かに声をかけられた。

「おお、結花じゃないか。久しぶりだな」

そこにいたのは、大家のおじいさん。確かに、会うのはすごく久しぶりだ。確か、お屋敷に行く前に会ったのが最後だった気がする。というか、そもそもここに来ること自体珍しい。どうしたんだろう?何かあったのかな?

「こんにちは。お花でも買いに来たんですか?」

「いや、とある手紙に関して、確認したいことと話したいことがあってな…。今、ルイはいるか?」

「中にいますよ。今はお客さんもいませんし、お店の中で話しちゃって大丈夫ですよ。どうぞ」

今日は、手紙という単語を聞くことが多い。それに、ルイのところにも手紙が来ていたし。そう思いつつ、私は扉を開け、おじいさんを中に通した。ルイはまだお祭りの説明の紙を読んでいたみたいだったが、私とおじいさんが入ってきたのを見て、少し驚いたようだった。

「あ、じいさん。何だよ、急に?何かあったのか?」

「今朝な、この手紙がわしのところに来たんだよ…。差出人の名前は全く知らんが、住所はヴェリエ国だった。奇妙に思って手紙を読んだのだが…、問題はその内容だ。見てみろ」

そう言っておじいさんはルイにその手紙らしきものを渡した。ルイはそれを受け取る。そして、しばらくそれを読んでから、言った。

「……そうか。悪かったな、迷惑かけて」

「特に迷惑はかかっておらんが…。ルイはこれに関して、どうするつもりなんだ?」

「俺は戻る気はない。戻ったとしても、刺客との戦いの日々になりそうだし。ここにいる方がよっぽど平和だし、楽しい。貴族とかかったるいしな」

そう言ってルイはさっき私に話してくれたのと同じことを説明した。さすがに二回目なので、泣かなかった。というか、今泣いたらおじいさんに気を遣われてしまいそうだ。おじいさんは、驚いたようだった。それもそうか。さっき聞いたとき、私だってかなり驚いたもの。

「ルイ、お前さん、子どもの頃からそんなに強かったのか!?」

あ、それは私も気になっていた。それどころじゃなくて、聞きそびれていたけれど…。もし、一人で撃退していたなら、ルイって本当にすごいと思う。何か特殊能力でも持っているのでは?って話になりそう。

「別に、そういうわけじゃない。正確に言うと、もし刺客が来たら、とりあえず逃げてた。でも、隙がないと逃げられないだろ?だから、そこら辺にあった物とかそいつに向かって投げてその隙にささっと逃げてた。本格的な護身術は、屋敷を出てから母さんに教えてもらったんだ。ちなみに、屋敷で、物を刺客の急所に当てる技を教えてくれたのも、母さんだな」

すごい!というか、そんな技あるの??初めて知ったんだけど…。そもそも、千智さんはどうやってその技を習得したんだろう…?色々と謎が多い。

「手紙には、何て書いてあったんですか?」

私が聞くと、ルイはその手紙を見せてくれた。うう…、また解読しないと…。でも、いつかは時間をかけずにスラスラ読めるようになりたい。そうなるためにはやっぱり、文字を読みまくるしか方法はないだろう。私はじーっと手紙を見た。超ゆっくり、でも、確実に読む。

「えーと…。つまり、この手紙の内容は、ルイをヴェリエ国に帰るよう、唆せ、ってこと?」

「そうだ。でも、わしは演技が苦手でな。絶対にばれるだろうと思って、この手紙を直接見せようと思ったんだよ。ははは!」

え、それ、笑っていいの?笑っちゃって大丈夫なの?というか、笑うところなの??

「…と、その話は置いておいて、結論からすると、奴らは…。奴らって言ったらまずいか。一応貴族らしいし。…つまり、その人たちはかなり本気だ。今後も何か仕掛けてくるかもしれんな」

「仕掛ける…、って何をだよ。ってか、どうやって…」

「それは分からんが。気をつけることに越したことはないだろう。しかも、相手は貴族だ。思わぬところと繋がってるかもしれない」

おじいさんがそう言った直後のこと。ルイが持っていたお祭りに関する紙を丸ごとバサリ、と落とした。その顔は、どこか険しい。私は慌てて紙を拾い、ルイにそれらを差し出した。そして、尋ねる。

「急にどうしたの?大丈夫?」

おじいさんも急に様子がおかしくなったルイを心配そうな表情で見ている。ルイはゆっくりと紙を受け取る。そして、ゆっくりと、上から五枚目くらいの紙を引っ張りだし、その紙の右上を指さした。

「???」

そこにあったのは、シェーロン語。でも、読めない。どうやらそれは人物名らしく、どうやって読めばいいのか分からない。シェーロン語は、何故か名前だけ少し特殊な字が使われているのだ。しかし、おじいさんはそこに書いてある人物が誰なのか分かったらしく、目を見開いた。そして、つぶやく。

「これはまずい…。祭りの日で確定だな…。どうするんだ」

「えっと…、すみません、何て書いてあるか読めなくて…。これ、誰の名前が書いてあるんですか?」

私がそう聞くと、信じられない、というような表情でじっと紙を見ていたルイが答えてくれた。

「ここに何人かの貴族の名前が書いてあるんだけどさ…。このうちの一つ、俺の父の名前。アケビに毎年お祭りに外国の貴族が来ている、って聞いたことはあったけど…。まさか来るとは…」

「…ということは、要するに、ルイのお父さんがお祭りに来ちゃうから、その時に会っちゃう可能性が高い…ってこと、だよね?かなりピンチじゃない?会っちゃったらどうするの?!」

「…だな。ここにはいつ来るか、とか書いてない。アケビとかスイとか、植物屋の人たち知ってるはずだけど、極秘情報だろうから、教えてくれないだろうな…。せめて、来る日が分かればいいんだけど…。でも、聞いてもあてにならないような気がしなくもない。あの人は基本、時間とかそこまで気にしないし遠いから、予定がずれる可能性が高いからな」

沈黙がその場を包む。しかし、それを破ったのは、ルイだった。

「考えてもどうしようもない。たぶん、俺と会ったら、戻って来い、としか言わないだろうし、適当に拒否しとけば大丈夫だろ。…たぶん」

なんか、最後のたぶん、がすごく不安になるのだが…。本当に大丈夫なのかな?と思っていると、ルイがさらに不安になる一言を言った。

「でも、あの人は論戦だけは得意なんだよな。打ち負かされるような気がしなくもない」

やっぱりダメじゃん!というか、全然大丈夫じゃないよ!?それと、論戦だけ、って…。そんなこと言っちゃっていいの?でも、確かに貴族の人って、演説とか上手そう。だって、集まって討論する時は、自分の意見を突き通さなければならないもん。そのためには、必ず論戦に勝たなければならないだろう。そう考えると、確かに、貴族って大変そう…。ネネもいつかは政治とかに携わることになるのかな?すると、そこでおじいさんが質問した。

「ちなみに、もしそうなった場合、ルイはヴェリエ国に強制的に戻されるのか?」

「まあ、恐らくは。…いや、恐らくじゃなくて、絶対だな。でも、さっきも言ったけど、戻るつもりはない。それに、結花とも約束したし。…だよな?」

そう言ってルイは私を見た。私は大きくうなずく。すると、おじいさんが少しにやにやと私たちを見た。

「おやおや?何か、いつの間にか二人ともいい雰囲気になってるな?もしかして、付き合って…」

すると、おじいさんがその言葉を言い終わるか終わらないかくらいのタイミングで、ルイが思いっきりおじいさんをはたいた!しかも、けっこう強かった気がする…!おじいさん、かなり痛そう…。

「ルイ、何してるの!?というか、おじいさん大丈夫ですか?どこかおかしくないですか?!」

「ううう…。暴力反対…。ルイ、何で急に叩いた!?別におかしいことは言ってないだろうが!」

じとーっと、私とおじいさんの二人から非難のまなざしを向けると、ルイは反論した。

「急にじいさんが変なこと言うからだ…!全然今までの話と関係ないだろ!!」

なぜか、ルイの顔が赤い。おじいさんはさっき何を言ってたんだろう?実は、私にはおじいさんの最後の言葉が聞こえていなかった。なので、尋ねることにした。

「あの、さっき、何て言ったんですか?最後の言葉が聞こえなくて…」

「それはな…」

しかし、おじいさんが答えようとしたところで、ルイがその言葉を遮るように言った。

「今のお詫びにじいさんのこと送ってくから、結花は店番頼む。ほら、行くぞ!」

そう言ってルイはさっさとお店の扉を開けた。おじいさんは渋々とそれに続く。…人の話を遮らないでほしい!しかし、私がそれを言おうとした時には既に、扉は閉まっていた。全く…。帰ってきたら、絶対に一言言ってやるんだから!



「まさか、あの一言でルイがそんなに反応するとはなぁ…。わしも驚いた」

大家がにやにやとそう言うと、ルイは不機嫌そうな表情になった。

「うるさい。…もう一回はたいてもいいけど、どうする?」

「老人を脅すな!」

「そこは『人を』だろ…。何で老人限定なんだよ…」

大家はにやにやしていたが、不意にその笑みを引っ込めた。

「しかし、もし本当にヴェリエ国に戻らなければならなくなったらどうするんだ。自分の気持ちを伝えぬまま去るつもりか?」

「…戻らなければならなくなったら、その時は何とかして、戻らなくていいようにするだけだ」

ルイは言い切った。大家は少し呆れたように言った。

「つまり、ルイの中には、戻るという選択肢は全くないわけだな。まあ、構わないが…。無理だけはするなよ」

ルイはその言葉にうなずいたが、大家は思った。

(絶対、人の…特にわしの話は聞いてないだろうな…)

おじいさんを登場させたいなー、と思ったため、登場させてみました。久しぶりなので、かなり口調の書き方に困りましたが…。一応見直しはしましたが、もしかしたら、少し口調が変わっているかも(?)しれません。

読んで下さりありがとうございました。

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