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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
三章 異世界花屋とお祭り ー準備編ー
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第四十一話

日が空いてしまいましたが、第四十一話です。夜の話になっています。

夕食の後、私はぼーっとしていた。…暇だったので。でも、何もしないのも何かな…、と思ったので、ポプリ作りをすることにした。この前、まだジェシカさんとゼンさんがここに泊まっていた頃に収穫したラベンダーとカモミールがまだたくさん、屋根裏部屋にある。今からたくさん作っておけば、お祭りでも販売できるかな、と思ったのだ。ただ、お店で売っていて分かったのだが、ポプリはかなりお客さんに人気がある。なので、たくさん作ってもお祭りまでに売り切れてしまう可能性がある。お店用とお祭り用で分けておいた方がいいかもしれない。あと、他のハーブも使う、とか…。そんなことを考えつつ、ひたすら花びらを小さな瓶の中に詰めていると、ルイがやって来た。

「今日起きたばっかりなのに、夜遅くまで起きてて大丈夫なのか?無理はするなよ?」

「うん、それは大丈夫。ところで、手に持ってるその紙って、出店の申請書なの?」

「ああ。なるべく早く書いた方がいいかと思ってな。書くこと多いし…。こういうのを毎日書かないといけないのは確かに大変だよな…」

そういえば、アケビさん、ちゃんと書類を書き終えられたのかな?ルイは書類に文字を書き始めた。この場に聞こえているのは、ルイが字を書く音と、外で鳴いている虫の声、そして、私がいじっている瓶が他の瓶と触れ合う音だけ。それ以外は、何も聞こえない。不意に、書いている音が止まった。見ると、ルイが考えこんでいた。どうしたんだろう?

「売る物の具体的な説明、って…。何書けばいいんだ?」

「商品の名前とどういう物かを書けばいいんじゃないの?ポプリとか、切り花、とか…。というか、そもそも何を売るの?いつもと同じ感じ?」

「だな。何だったら、他に新しい商品を追加してもいいけど、作るのが大変なんじゃないか?」

うーん…。でも、せっかくのお祭りだし、何か新しい物、入れてもいいかも?でも、何がいいかな?ハーブティーとか良さそうだけど、その場合、保存が利かなさそうなんだよね…。それか、ティーバックとかに茶葉とお花を入れる?あ、でも、どうやって作るんだろう?というか、ティーバックの特殊な袋ってどこに売ってるのかな??

なかなかいい案が思いつかない。何だったら、ハーブティーじゃない何かを売るっていうのもアリだけど…。

「今すぐ決めなくてもいい。期限まであと一週間くらいあるからな。とりあえず、決まってる商品は書いておくか…。切り花と、ポプリ、あとは…」

「そういえば、切り花ってお祭りの日に売れるの?祭りの日にわざわざ買う人っているのかな…」

ちょっと気になったのでそう尋ねると、ルイはあっさりと答えた。

「いる。…って言うのも、祭りの日は恋人にちょっとしたプレゼントを贈るとか、好きな人に告白する、とかで花を買って行く人が多いんだよ。例年、祭りの直前の日に花を買ってく人が多かったけど、今年は出店するから、あまりそう言う人はいないだろうけど。あ、あと、普通に、家族に渡す、って人もいるな」

確かに、元の世界のお祭りでも、友達が好きな人と一緒にいるところを見て、デート中かな?と思ったことがあったので、意外とそういうものなのかもしれない。

「そうなんだー。それなら、確かに、売った方がいいね。ところで、ルイには好きな人とかいるの?」

私は、ポプリの瓶にリボンをかけながらそう尋ねたが、いないだろうな、と思っていた。なので、「いない」とすぐに返事が返ってくるかと思っていたのだが、予想に反して何も答えが返ってこない。私は顔をあげ、ルイを見た。しかし、ルイは固まっていた。確か、夕方も固まってなかったっけ…?今日は固まりやすい日なのかもしれない。

「おーい?ルイ?反応してー」

私がルイの目の前で思いっきり手を振ると、ようやく気付いてくれた。よかった。でも、何で固まったんだろう?もしかして、誰か好きな人がいる、とか?

「…悪い、ちょっと、いや、かなり、質問の内容にびっくりしてた」

「大丈夫だよ。気にしないで。で、結局、好きな人、いるの?」

再び無言になるルイ。もしかしたら、言いたくないのかな?と思った。なので、私が、言わなくてもいい、と言おうとしたその時、ルイはゆっくりとうなずいた。…って、…え?うなずいた…!?…ってことは、つまり…。

「い、いる、ってこと…!??」

「…まあ、そういう、ことになるな……」

「それって、誰?私の知ってる人?すっごく気になるんだけど!」

私の勢いにルイは若干引いているようだった。でも、意外すぎるんだもん。すごく聞きたい。

「教えない。…ってか、何でそんな興味津々なんだよ?!」

「だって、意外だったから。それに、他の人の恋愛事情聞くの、楽しいからね」

元の世界でも、よくクラスメートのコイバナを聞いていたな…。私自身はそういうのに全く興味なかったし、友達曰く、私はそういうのに疎いらしい。…それが本当かどうかは分からないが、複数の人にそう言われたことがあるので、恐らくそうなのだろう。でも、友達の話は聞いていて楽しいので、そういう話に加わることは多かった。

「嫌だ。絶対、言わない!言ったら絶対ばれる!」

「えええ……。あ、でも、ばれる、ってことは、つまり私が知ってる人、ってことだよね?誰だろう?…あ、アケビさんとか?」

「それは絶対あり得ない。そもそも、アケビには既に恋人がいるからな」

そんなに強く否定しなくてもいいのに…。アケビさんが少し可哀想になる。というか、アケビさんに恋人がいるなんて知らなかった…。そもそも、全く聞いてない。どんな人なんだろう?

「確か、同じ植物屋で働いてる人、って言ってた気がする。スイに聞けば分かるんじゃないか?」

「うん、今度聞いてみる。でも、アケビさんに恋人がいる、ってことはアケビさんじゃないんだよね。私じゃないだろうから…、うーん、あ、スイさん?」

「違う!ってか、これ以上予想するな」

えー…。でも、他に私が知ってる身近な女性は、ネネかジェシカさん、もしくは、フィオナちゃんとその仲間たちしかいないんだよね。うーん…。でも、ジェシカさんはゼンさんのことが好きだし…。あと、ネネは貴族だし、今、王都にいるから…。恋が成就するのは、とても大変だろうな…。でも、フィオナちゃんたちだって、年が離れてるし、まだ幼いからなー…。あ、でも、幼い子が好き、とかだったらあり得る話だよね。そういうのって、元の世界ではロリコン、って言うんだったっけ…?

「おい、今お前、絶対変なこと考えてたよな?」

うわ…。勘が鋭い!私はぎくっとしたが、慌てて首を振った。ついでに、手も。

「全然、少しも、これっぽちも考えてないよ!」

「そこまで否定されると、逆に怪しい気がするんだけどな…」

疑わし気な目を向けられたが、私はポプリの方に目を向けて、ルイの方を見ないようにした。これ以上ルイの方を向いていると、心の中を読み取られそうだったので…。

再び花びらを瓶の中に入れつつ、私はどこか暗い気持ちだった。何故だか、胸がちくちくするような気がして…。でも、理由が全く分からない。謎だ。たぶん、ちくちくし始めたのは、ルイの好きな人、について話し始めた時だった。でも、それとの関係はなさそうだよね…。…あ、もしかして、三日ぶりに起きたから、本調子じゃないのかも。ルイにも心配されたし、今日は早く寝よう。ポプリは、お店に全くお客さんがいない時に作っていればいいだろうし。私は大きな箱に出来上がったポプリの瓶を詰めつつ言った。

「ルイ、私、やっぱり今日は早めに寝ることにする。明日もお店だから、それに備えるね」

「ああ、その方がいい。あ、傷が痛くなったら言えよ。しばらくこの部屋にいるつもりだから」

「うん、ありがとう。そうする。でも、ルイも早めに寝てね?体調崩したら大変だし。それじゃ、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


私は小屋に向かった。ポプリの箱を屋根裏部屋に置き、梯子を下りた。胸のちくちくは段々、治まりつつあった。まだ、眠ってないんだけどな?ただ、私の頭の中ではぐるぐると、さっきの会話が回っていた。ベッドに寝転がったが、寝ようとしても、そのことが頭から離れない。仕方がないので、さっきのことをちゃんと思い出してみることにした。ルイに好きな人がいる、と聞いたとき。私は絶対に自分のことではない、と思った。それと同時に、何故か、悲しい、と一瞬思ったような気がした。どうしてだろう?別に、ルイが誰のことが好きであろうと、私には何の問題もないはずなのに。


『結花って、ルイのこと、好きなんでしょ?』


不意に、ジェシカさんに言われた言葉を思い出す。でも、私は…、よく分からない。魔法の実験をした時、もし、私も自分の好きな人が見えていたら…、それは誰だったのだろうか?もしかしたら、ルイもそれで分かったのかもしれないけど…。その時、ルイは、一体誰の姿を見たのだろう…?

何だかもやもやが自分の心の中に広がった気がする。私はため息をついて、目を閉じた。


結花が小屋で悶々と考え事をしていた、ちょうどその頃。ルイは、書類の続きを書こうとして、全くそれに集中できていなかった。さっきの、結花からの質問を回想してしまうからだ。

「あー、…ったく、結花のせいでこっちに全く意識を向けられない…。明日何か仕事増やしてやろうかな?あ、でも、アケビに言われたら、アケビからの仕返しが十倍くらいになって返ってきそうだしな…」

完全に八つ当たりの発想になっているのは自分でも分かっている。でも、集中できない原因は間違いなく結花のあの発言だ。ルイは思わずため息をついた。書類を書くのは諦めて、結花が一つだけ箱に入れ忘れたらしいポプリの瓶を手に取った。柔らかな紫色の花が瓶の中に閉じ込められている。

「何で一個だけ忘れてるんだよ…。まあ、明日渡せばいいだけの話だけどな」

書類を片付けつつ、さっきの結花との話とは別のことを考えようとした。しかし、何故か気がつくと、結花との会話に思考が戻ってしまう。仕方がないので、今日はさっさと寝ることにした。部屋の明かりを消し、自分の部屋へと向かう。

「本っ当に無自覚だよな……」

ルイはそうつぶやいた。今日は、結花から、不意打ちを二回も喰らわされた気がする。久しぶりに起きたせいだろうか?さっきだって、そのせいで、好きな人がいるか、という質問に正直に答えてしまった。明日から、もう少し気を引き締めた方がいいのかもしれない…。

結花が鈍感すぎて、作者自身困っています…。

読んで下さり、ありがとうございました。

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