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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
二章 異世界花屋と魔法の花
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第三十一話

夜編その二です!

私が小屋に戻ると、屋根裏部屋からジェシカさんがひょこっと姿を現した。

「クモ退治、終わったよー。これで安心して寝られるね!」

「え、退治してくれたんですか?!ありがとうございます。それなら安心です」

普段、私は一階のベッドで寝ているのだが、今日はジェシカさんがいるので、屋根裏部屋で寝ることにしていたのだ。私は梯子を上り、屋根裏部屋に入った。丁寧に布団が敷かれている。

「すみません、お客さんに色々やってもらっちゃって…」

「いいのいいの。わたしたちが無理言っちゃったんだから。…ところで、ルイと何話してたの?」

「え!?えーと…、それは…」

指切りの話しても、分からない気がする…。まあ、でも、話してみるだけ話してみよう。私はそう思って軽くルイとの会話の内容を話した。聞き終わったジェシカさんはばたん、と布団に倒れこんだ。

「え、何それ何それ?!すっごい、ロマンチック!星空の下で約束、とか、女の子の憧れじゃない?」

そうなの???全然そういうの、分からないんだけど…。でも、ジェシカさんは一人で色々妄想して足をばたばたさせていた。私もジェシカさんの隣に寝転がる。

「そういえば、ジェシカさん、結局二番目の魔法、何だったんですか?実はずっと気になってました」

「いいよー。ルイとか、ゼンとか、邪魔者はいないから、ゆっくり話せるよね♪」

そう言うと、ジェシカさんは改まって、こほん、と咳払いした。

「実は…、魔法の影響を受けてたら、自分の好きな人が見えたんだよ!」

は???え、ちょっと待って。今、『好きな人』って言った!?どういうこと…?何でそうなった?!

「いやー、何か面白そうだな、って思って。えへへー。でも、どうせなら結花にも見てほしかったなあ…」

「え、っと…、あ、ジェシカさんは他の人が同じ魔法を使った時、見えたんですか?」

私がそう聞くと、ジェシカさんの顔が真っ赤になった。少ししてから小さくうなずく。…見えたんだ。

「え、え、誰だったんですか?私も知ってる人ですか?すっごく気になります!」

私がじーっとジェシカさんを見ると、ジェシカさんは反対方向を向いてしまった。

「わたし、人の恋愛相談を聞くのは好きだけど、自分のことだと上手く言えないよー!ノーコメントで!」

「それなら自力で当てます!…って言っても、ほとんどジェシカさんの周りにいる人、知らないけど。うーん…、ジェシカさんの身近にいるのは、やっぱりゼンさんですよね…。いつも仲いいし…」

「ど、どこが!?あ、あんな奴、全然、これっぽちも、一ミリも興味ないんだから!」

ジェシカさんがすごい勢いでこっちを見た。すごく反応している…。やっぱり、ジェシカさんの好きな人はゼンさんなんだ…。意外と分かりやすい…。

「きっかけとか、あったんですか?」

「え!?だ、だから、ゼンなんて本っ当に興味ないってば!」

ジェシカさんはそう言っているが、やっぱり顔が赤い。私が諦めずに、じーっと見ていると、ジェシカさんは少し考えた末、こう言った。

「……じゃあさ、わたしが教えたら結花もそういうの、教えてくれる?それならいいよ」

「別にいいですけど…、私、特に話すことありませんよ…?」

「嘘だー。絶対あるでしょ。例えば、ルイとか?息ぴったりだし!興味あるなぁ…」

ジェシカさんのその言葉になぜか、頬が熱くなった気がした。赤くなっている自信がある。…って、何で?どうしてそうなった?自分でもよく分からない。

「しょうがないなあ…。わたしが先に教えるから、聞きながら何か素敵な話でも思い出しておいて」

ジェシカさんは少し恥ずかしそうに話をし始めた。


ジェシカが魔法協会に入ったのは、十年ほど前のこと。親戚からの誘いを受け、すぐにそれを承諾した。ジェシカは、協会に入った直後から、その攻撃力の強さを発揮させ、先輩や同輩をあっさりと倒してしまったそうだ。張り合いがなさすぎてつまらない、と思っていたある日のこと、ジェシカはある人物と対戦することになった。その人物はかなり強く、珍しく一筋縄でいかない相手だった。

その人物こそが、ゼンだった。しかし、最終的にはジェシカが勝った。


「でもね、その場をすぐに立ち去ろうとしたわたしをゼンが呼び止めたの。何か文句でもつけてくるのかと思ったらね、ゼン、急にわたしの魔法の良かったところと悪かったところを言い始めたの。あまりにも当たっててびっくりした」


最初は、負け惜しみなのかと思っていた。しかし、何だか気になって、ジェシカはゼンが他の人と対戦をしている様子を見るようになった。そのうちに気付いたのだ。―ゼンが、勝った相手にも、負けた相手にも的確なアドバイスをしていることを。普通は、相手に勝った、負けた、で終わってしまうのに、どうしてそこまで分析しているのだろうか、と疑問に思ったジェシカは、ゼンに偶然会った時、尋ねた。

「ねえ、どうして色々な人にアドバイスしてるの?別に、頼まれているわけじゃないでしょ?」

「そうだね。でも、客観的に見た方がいい、ってこともあるし。それに、相手の特徴を見ておけば、こう言う相手の時はこうした方がいい、っていうのが分かるし…。正に、一石二鳥じゃない?」

「そう、なんだ……」

ジェシカは素直にゼンはすごい、と思った。自分には、絶対にできないことだな、とも…。


「その後、わたしはゼンと話すようになった。そもそもわたしは攻撃力をかなり恐れられていて、友達がいなかったんだけど、ゼンはそんなの気にせず、何だかんだ言いつつわたしに付き合ってくれたし…。そのおかげで、ゼン以外の友達もできた。…けど、何か、ゼンだけは特別なんだ。確かに、一番最初にできた友達、ってのもあるけど、それ以上に、できるなら一緒にいたいな…、って思う」

ジェシカさんはそう言って話を終わらせ、枕に顔をうずめた。

「ううう…。こういう話、他の人にするの、初めてなんだよー。めちゃめちゃ恥ずかしい…!」

「でも、すごく素敵な話でしたよ。それにしても、ゼンさん、すごいですね。他の人のこと、ちゃんと見てて…」

すると、がばっとジェシカさんが起き上がった。うわ、びっくりした…。

「そうなんだよ!そのせいで、ゼンを狙ってる人が多すぎるの!もともと魔法使いは女の方が多いし…。けっこうピンチなんだよね…。わたしよりも魅力的な人の方が絶対多いし。わたし、いつも迷惑ばっかりかけてるし…!」

「でも、ジェシカさん、ゼンさんと一緒にこっちに来てるくらいなんだし、けっこう距離近いと思いますよ?」

私はそう言ったが、ジェシカさんはそれでも不安らしく、しばらく私はジェシカさんの相談に乗っていた。…というか、私、恋愛したことないんだけどな?そんな私が恋愛相談に乗っちゃってよかったのだろうか?


「そろそろ、結花の話も教えてよー。ね?」

「えー、いや、そう言われても…。もう少し、ジェシカさんの話が聞きたいです。ゼンさんは、二番目の魔法の時、誰が見えたんでしょうね?」

「うう…、それ、言わないでよー。怖いじゃん!」

ジェシカさんはごろごろと、布団中を転がった。待って、ぶつかるから、一旦止まってほしい…。私は身を守るために少し離れたところに移動した。でも、しばらくすると、ジェシカさんは落ち着いてくれたので、ほっとする。

「でもさ、それ言ったら、ルイは何見たんだろーね?」

そう言われた私は二番目の魔法の時を回想してみた。確かに、何か動揺してたし、私が何をみたか聞いたときも答えてくれなかった…。ということは、ルイにも自分の好きな人が見えてた、ってことだ。確かに、誰だろう…?たぶん、私ってことはないだろうから、恐らく他の人だよね…。なぜか、胸がちくちくするような気がする。…何でだろう?

「ねーねー、それで、結花から見てルイってどんな人?」

唐突にそう聞かれた。それなら答えられる気がする。ルイは、私から見ると…。

「そう、ですね…。まず、意地悪、かな?うん、意地悪ですね。私が初めてここに来た時の第一声は『お前、馬鹿なのか?』だったので。まあ、その時はお昼休みの時間だったから、仕方なかったと言えば、仕方なかったんですけどね」

「へ、へえ……。でも、確かにそうかも。アケビさんって人へのわたしの紹介が酷かったし…」

「でも、何だかんだ親切ですよ。急にここに来た私を雇ってくれたし、ジェシカさんとゼンさんのこともここに泊めてくれてますし。あと、けっこう頼れます」

そんな話をしていると、真面目に聞いていたジェシカさんが不意ににこっと笑った。その表情はどこか、いたずらっぽい。

「そっかあ。やっぱり、わたしの勘、当たったみたい」

「え、勘???勘、って…、何のですか?」

話に脈絡がなくて、私がきょとんとしていると、ジェシカさんは更に笑って言った。

「つまり、…結花って、ルイのこと、好きなんでしょ?」

「………はい?」

「あ、やっぱり、自覚なしみたい。だってさ、何かそんな感じだよ?たぶん、アケビさんって人も気付いてるんじゃないかな?今度会ったとき、聞いてみたら?恐らくわたしと同じこと言うと思うよ」

え?いやいやいや…。それはないって。そもそも、ルイは私をただの『お店で一緒に働いている人』としか思ってないはずだ。それは、私も同じはずで…。あ、あと、恩人でもある。絶対、絶対、ありえない。そんなこと、絶対にない。黙り込んだ私にジェシカさんは、

「そろそろ寝よっか。夜更かしは体に良くないし…。でも、話せて良かった。こんなに自分のことを誰かに話すなんて初めてだったから…。それじゃ、お休み」

部屋の明かりが消え、真っ暗になった。でも、なかなか眠れない。ジェシカさんの言葉がくるくると頭の中を回っているからだ。

『つまり、…結花って、ルイのこと、好きなんでしょ?』

ありえない、ありえない…。そもそも、『好き』とは一体、何なのか?恋をする、というのは一体どういうことなのか?それが全く分からない。私はとりあえず、この世界で平和に生きていければ何でもいい。あと、花の世話さえできれば何でもいい。だから…。

私は小さくため息をついて、布団の中に潜り込んだ。

読んで下さり、ありがとうございました。

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