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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
二章 異世界花屋と魔法の花
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第三十話

いつもより少し、いや、大分長いかもです…。

私たちはシェーロン国に戻るために、元来た森の隠し道を通っていた。夕暮れの、橙色の光が優しく辺りを照らしている。

「そういえば、結局聞いてなかったけど、二番目の魔法の時、何を見せたんですか?」

私がジェシカさんにそう聞くと、ジェシカさんはにこっと、嬉しそうな笑みを浮かべ、口を開いた。その瞬間、ゼンさんが手でジェシカさんの口を塞いだ!しかも、そのスピードが尋常じゃなかった…。え、そんなにびっくりするような物だったの?かえって気になるんだけど…?

「ジェシカ、絶対に絶対に言っちゃダメだからね?本当にダメだからね?」

念押ししすぎだと思う…。二人に聞いても答えてくれなさそうなので、私はルイの方を見た。が、さりげなく目を逸らされた。え、何で?何で皆して答えてくれないの!?

「具体的なところまで聞かないから教えてよー。ね?それくらい、いいでしょ?」

「絶対嫌だ。絶対、言ったら根掘り葉掘り聞くだろ!」

「そんなの、聞いてみないと分からないよ?とりあえず、私に教えてみようよ?」

その後も説得し続けたのだが、結局ルイは教えてくれなかった。実はその時、ゼンさんが絶対に言うなオーラを放っていたらしいが、その時の私は全く気付いていなかった。

「ところで、二人は俺たちを送ってくれた後、どうするんだ?一旦、魔法協会に戻るのか?」

ジェシカさんとゼンさんは顔を見合わせた。

「どうしようか?でも、普通に何もせずに帰ったら、隊長に『魔術師を見つけるまで戻ってくるな』って言われそうじゃない?」

「そうかも、というか、絶対にそうだね。しばらくシェーロン国で魔術師探しでもしてる?」

「そうだね!ただ、問題点が一つ。どこに泊まるか問題!」

二人が考え込む。確かに、なかなか泊まる場所って見つけられないよね。そう思ったその時、ジェシカさんが衝撃的な発言をした。

「この前のあの宿は、魔法を使ってちょちょっと入ったけど、毎日魔法を使う訳にはいかないよね。魔法の花を無駄にするな、って怒られちゃうだろうし…」

え、そうだったの!?奇跡的に空いてたんじゃなくて、魔法で空けちゃったの!?

「何だったら、野宿でもする?一応、そういう訓練はしたことあったけど…。僕はそれでもいいよ」

「うう…。やっぱりそうだよね…。それしか選択肢ないよね…」

その会話を聞いていたルイは急に私に尋ねてきた。

「何だったら、あいつら、少しの間だけでも泊めてやるか?」

「え?それはいい案だと思うけど…。でも、部屋とかあるの?」

「ある。意外とあの家、部屋が多いんだよ。結花に言ってなかっただけで。だから、問題ない」

「私は賛成だよ。でも、二人にも聞いてみないとね」

ルイはうなずいて、二人にその案について話した。すると、ジェシカさんが目をきらきらさせた。

「本当に!?わーい、ぜひぜひ!やったやった。楽しみだな♪」

「え、いいんですか?迷惑かけてしまう気がします。…特に、ジェシカが」

「な!?ゼンって本っ当に失礼だね!?さすがに大人しくしてるわよ。ちゃんと手伝いとかもするし!」

二人は再び喧嘩し始めたが、とりあえずお店に来る、と決まった。めちゃめちゃ賑やかになりそう…。でも、とても嬉しかった。


お店に戻ると、そこにはアケビさんがいた。何だか久しぶりに感じてしまう。アケビさんは、私たちの後ろにいるジェシカさんとゼンさんを見て少し驚いたようだった。

「何か…、チームルイって感じ。えっと、どちら様なの?」

「謎のチームを作るな。何のチームだよ…。こっちがジェシカでそっちがゼン。しばらくここにいることになった。ジェシカがうるさいかもしれないけど、まあよろしく」

「ちょっと!?ルイまで!わたし、いつもの100倍大人しくするから大丈夫だから!」

ジェシカさんがそう言うと、ルイとゼンさんが同時に言った。

「「既にうるさいから」」

すると、アケビさんが面白そうに笑った。

「あはははっ!仲いいねー。わたしはアケビ。普段は向こうにある植物屋で働いているの。よろしくね。…っと、ここに来た本来の目的、忘れてた。ルイ、これ、サーニャ様から。案外早かったわね」

そう言ってアケビさんはルイに封筒を渡した。ルイは手で端っこを切って、中から便箋を取り出し、読み始めた。私も読みたかったけど、残念ながらシェーロン語が読めないので、さっぱり分からなかった。しばらくすると、ルイは読み終えたらしく、便箋をしまったが、少し硬い表情になっていた。嫌なことでも書いてあったのだろうか?私はルイに尋ねた。

「ルイ、それ、何て書いてあったの?何か、悪いことだった?」

「いや、そういうわけじゃない。確かに最近、屋敷中がどこか変だ、とは書いてあった。ただ、超面倒なことが書いてあったんだよ…。…ネネ様が、結花を連れてこい、って言ってるらしい。しかも、ネネ様の言葉を聞くと、何となくだけどその願いを聞きたくなる、って言う謎の現象が起きてる」

え、それ、めちゃめちゃまずいパターンでは!?どうするの、それ…。

「サーニャ様は、このままだと大変なことになる可能性が高いから、一旦、結花を連れて来てほしい、って…。その時に自分が話を聞く、と書いてある」

すると、ジェシカさんが険しい表情で口を挟んだ。

「ダメだよ…。絶対、ダメ。行っちゃダメ。それ、かなり危険な状態だよ?ちょっとしたことでも言うことを聞きたくなる、ってすごく重症だよ…!?」

「………」

「…アケビ、これについてはちょっと話し合ってからにする。また、植物屋に行くから」

「了解。それじゃ、わたしは戻るわ。早くしないとスイちゃんに怒られる…」

そう言ってアケビさんは走って植物屋さんの方向に行ってしまった。

「…取りあえず、中に入らないか?ここじゃ、外だし、色々話せないだろ?」

そう言ってルイは店の扉を開けた。何だかほっとする。帰ってきた、って感じ…。私がそんなことを思っていると、ゼンさんがルイに手紙を貸してもらえるよう頼んでいるのが聞こえた。

「別にいいけど…。何するつもりなんだ?魔法?」

「その通りです。これを書いた人の感情とか、見た光景とかを読み取ります。これは、必要なことなので、花を使っても怒られないと思います。あと、読み取っている間は静かにして頂けると幸いです。この前、ここで過去を読み取った時は、誰かさんがうるさかったですけど…」

「ちょっと?!根に持ちすぎでしょ!そのおかげでわたしたちは二人に会えたんだし、プラマイゼロよ」

ゼンさんは「それもそうか」という感じでうなずくと、魔法の花を取り出し、手紙にかざした。そして、何かを唱える。その瞬間、手紙が光った。お店の中は少し暗くて、手紙と花の淡い光がどこか幻想的だった。しばらくすると、手紙の光が消え、ゼンさんはルイに手紙を返した。

「ゼン、どうだったの?やっぱり、悪かった?」

ゼンさんはうなずいた。そして、見えた光景を話始めた。


そこは、恐らく、サーニャ様たちが暮らしている屋敷だった。メイドたちが大急ぎで何かの支度をしている。メイドたちの話によると、ネネの王都行きの準備をしているらしい。しかし、サーニャはどこか様子がおかしい、と感じていた。確かに王都行きにはたくさんの荷物が必要だ。でも、明らかに量が多い。サーニャはネネに何で量が多いのか聞こうと、ネネの部屋に向かった。だが、違和感を感じる。ネネの部屋の辺りには人が誰もいないのだ。ネネの部屋の前に着いたサーニャはドアをノックしようとした。が、先客がいるようで、話し声が聞こえた。サーニャはそっと、ドアに耳を近付け、その会話を聞いた。

「ヘル、この力はすごいわ。試しにメイドたちにかけてみたの。そしたら、絶大な効果があったわ!」

「それはそれは…。道理でこの辺りに人がいなかったわけです。でも、あまり嬉しくなさそうですね?」

「ええ。おかしいの。あたしが一番かけたいと思った人に、全く効果がないのよ!どういうこと?あなた、誰にでも効く、って言ってたわよね?」

相手の人は一瞬黙った。何かを考えているのかもしれない。

「そう、ですか…。それは確かにおかしいですね。調べてきます。また来ますね」

窓が開く音がして、それ以降、その声は聞こえなくなった。サーニャはドアをノックした。

「はーい。だーれ?」

サーニャが部屋に入ると、ネネはどこかほっとしたような表情になった。

「あなたが王都に行くまであと少しだけど、何かしたいこととかあるかしら?」

「そうね…。あ、そうだわ。ここに、あたしの知り合いを連れて来て頂きたいの。ダメ…?」

ネネの黒い瞳が一瞬光ったような気がした。それと同時に、何となく頭がぼうっとするような気がした。

「分かったわ。その知り合いはどこにいらっしゃるの?」

「ええと。お母様とこの前行った、お花屋さんの女の子!もう一回会ってみたくて…。聞きたいことがあるの」

サーニャは承諾し、自分の部屋に戻った。すると、机の上に手紙が置いてあった。それは、アケビからの手紙だった。そこには、この前、ネネが一人で花屋を訪れ、その時の様子がどこかおかしかった、ということが書いてあった。さっきのネネと誰かの会話や、自分の体調が一瞬おかしくなったことを思い出す。それを踏まえ、手紙の返事を書く。確かに、ネネの様子がどこかおかしいこと。ネネは結花に会いたがっていること。屋敷に来てほしいということ…。

サーニャはそれを書き終えると、メイドを呼んで手紙をアケビに届けるよう言った。この手紙がネネの状態を変えることを祈りつつ…。


「って感じでした。要するに、僕たちが行かないと解決しませんね」

「というか、解決する以前に、魔法の解き方が分からないよ…」

私たちは考え込んだ。これ、やっぱり私が行くしかないんじゃない?そしたら魔法の解き方が分かる可能性があるし、サーニャ様にもお話できるし、一石二鳥では?私がそう言うと、ジェシカさんとゼンさんは硬い表情でうなずいた。

「結花を危険にさらすのは嫌だけど、そうするしか、今は方法がない。わたしたちの持ってる情報が少なすぎる…」

「ええ。それに、僕たちだけで行っても、魔法の影響で手が出せないでしょうね…」

でも、ルイはすごく反対していた。

「でも、もしそれで、結花が影響受けたらどうするんだよ?この前だって、具合悪くなってたし…」

「大丈夫だよ。もしそうなったら、あの時みたいに頭撫でてくれれば落ち着くから」

「いや、それやったら確実に寝るだろ…。ってか、俺だって屋敷に行ったらずっと一緒にいられるわけじゃない。その時、何かあっても、…守れないだろ」

「それじゃあ、ルイはこのままでいいの?このままネネ様が王都に行っちゃって、大混乱が起こっちゃってもいいの?」

「………」

私はルイを見つめた。

「お願い。絶対無茶しないから。だから、行かせて。お願いします」

ルイはしばらく迷っていたようだったが、うなずいた。

「分かった。アケビにもそう言っておく。絶対、絶対、無茶するなよ」

「うん。ありがとう!」

ジェシカさんたちもほっとしたように息をついた。

こうして、私たちの屋敷行きが決定した。


その日の夜、私がベランダにある椅子で植物の本を読んでいると、ルイがやって来た。ちなみに、ベランダの存在は今日初めて知った。ジェシカさんは私と小屋で寝たい、と言っていたので、建物の方の部屋を使う必要がなかったのだが、ゼンさんはどの部屋を使うか、という話になったので、建物中を見て回ったのだ。その時にベランダの存在を知った。なので、早速使っている。ジェシカさんに借りた魔法の花が発光しているので、夜だけれど私の周りは暗くなかった。むしろ明るい。

「これ、お茶。夜はけっこう涼しいから少し温かくしといた」

そう言ってルイが私にお茶を渡してくれた。私は本を膝の上に置き、それを受け取った。そっと器を握ると、ほんのり温かい。

「ありがとう。でも、ここにいるってよく分かったね?」

「何となく。行きたそうにしてたから。夜になったら行くだろなって…。隣いいか?」

「どうぞ」

しばらくお互い無言で星空を見ていたが、不意にルイが口を開いた。

「……本当に、大丈夫なのか、屋敷に行く計画」

「私は大丈夫だけど…。ルイ、すごく心配そうだよ?何で?」

「…不安なんだよ」

不安…?何がだろう?ルイは自分の分のお茶を一口飲んで、話を続けた。

「何か…、結花が、何も言わずにどこかに行ってしまいそうで怖い」

「そんなことしないよ?首にならない限り、ここにいるよ」

「…ちゃんと、ここに、戻ってくるよな?何も言わずにネネ様と王都に行ったりしないよな?」

「当たり前。黙っていなくなったりしないから。ルイこそ、急にどこかに消えたりしないでよ?例えば、何も言わずにヴェリエ国に戻ったりとかしないでね」

「…戻るわけないだろ」

でも、ルイは不安そうだった。うーん、こういう時ってどうすれば良いのかな…?少し考えてから私はあることを思い出した。

「ね、ルイ、小指出して」

「は?小指?何でだよ?」

そう言いつつ、ルイは小指を出してくれた。

「うーん、こっちにはないのか、指切り…。元の世界でね、約束を必ず守る、っていうしるしにお互いの小指をひっかけ合うっていうのがあったんだ」

「…そうか。じゃあ、その指切り、とかいう奴、やるか」

私たちは指切りした。元の世界ではそこまで意識してしたことなかったけど、何となく、指切りをしたからには絶対守らなきゃな、って思った。

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本のます、指切った」

「…さりげなく怖いな」

「ん?あ、確かにそうかも。でも、いつも、これする時、唱えてたよ?」

「そうなのか…。まあいいや。とりあえず、今日はもう寝ろ。疲れただろ?」

確かに、眠くなってきたかもしれない。温かいお茶のおかげかもしれない。

「うん。ルイ、お休み。ルイも早く寝てね」

「分かってる」

「あ、あと、お茶ありがとう。おかげで寒くなかった」

私がそう言うと、ルイは少し笑ったようだった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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