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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
二章 異世界花屋と魔法の花
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第二十九話

魔法の実験その二です。

「ではでは、次の実験、行ってみよー。…って言っても、どういうのがいいのかな?」

「次のは…、確か、魔法をかけられた相手からの影響についてだったっけ…」

ジェシカさんたちは二人でぶつぶつ相談している。私は、危険じゃなければ何でもいいんだけど…。

「あ、そうだっ。良いこと思いついた。絶対面白いことだよ♪」

不意にジェシカさんがそう言ってとびっきりいい笑顔を浮かべた。…いや、何かを企んでいるようにしか見えないよ…?ちょっと不安…。すると、ジェシカさんがごにょごにょとゼンさんの耳元で何かを言った。すると、ゼンさんは呆れたような顔になった。

「ジェシカ…。気持ちは何となく分かるけど、半分遊んでるよね?もし二人ともその魔法にかかっちゃったらどうするつもり?止めといた方がいいんじゃない?」

「む、確かにそうかも。とりあえず、結花にはかからないこと前提で!」

「…ジェシカ、…根拠のない前提、やめようか?というか、絶対だめ」

「じゃあさ、もし許してくれたら、ゼンの大好きなクッキーあげる!」

クッキー!?いや、絶対釣ることできないでしょ…。と、思っていたら。

「…先にクッキー渡してくれたらいいよ」

…承諾してしまった。嘘でしょ。ゼンさん、どれだけクッキー好きなんだろう…?

「やった、ありがとね、ゼン!はい、どーぞ。特別に一箱分あげるね!あ、二人もいる?」

「「いや、大丈夫…」」

私とルイの声が揃った。いや、何か…、反応の仕方にものすごく困る…。

「そういえば、ルイはクッキーとか好き?」

「…普通?実は、あまり食べたことがない。なかなか売ってないし」

「え、そうなの?元の世界ではお店に行けば普通に大量に売ってたよ。美味しかったなあ…」

「食べたいなら、作り方教えてくれれば作ってやるけど?」

よくお母さんと作っていたので、作り方や分量はばっちり覚えている。

「え、いいの?じゃあ、今度一緒に作ろうよ。久しぶりに何か作りたいし。ね?」

「…結花が作ると、分量とか色々間違えそう」

ひどいな。あ、でも、元の世界と大匙とかの大きさが違ってたらちょっとまずいかも…。

「それなら、ルイがサポートしてくれるよね?ルイだって、美味しいの食べたいでしょ?」

「別に。まあ、手伝ってやってもいい。その代わり、できたクッキーは3:7で分け合うことにする」

「…どっちが7なの?いや、どっちにしろ不平等だけど」

「俺に決まってるだろ」

即答した!?何でそんなにクッキーほしいの…?

「最っ低。そこはせめて、主に作る私に6くれないかな?というか、そもそも7って数字半端すぎない?もうちょっと、割りやすい数にしようよ!」

「気にするところそっちかよ」

と、言い合っていると、ジェシカさんたちが割り込んできた。

「はいはい、ストップストップ。二人が仲いいのは分かったから、落ち着いてよ」

「「仲良くない!!!」」

また揃った。ゼンさんがくすっと笑った。

「やっぱり、仲がいいじゃないですか?それに、さっきから思ってましたけど、結花さんたちは本当に相性がよさそうですね。何となくですが、そんな感じです」

「「どこが!??」」

「あーあー、一旦、この話終わり!早くわたし、実験したいから!」

ジェシカさんが無理矢理話を終わらせ、一旦言い合いは終了した。少し落ち着いたところでジェシカさんが次の魔法の説明をし始めた。

「まず、普通の、何の魔法もかけてない物を用意するのね。で、そしたら、それに、とある魔法をかける。その後で、もしそれが違うものに変化したように見えたら、魔法の影響があるってこと」

「つまり、魔法をかけて、形が変わったな、って思ったら影響を受けている、と…」

ジェシカさんはうなずいて、一旦部屋を出た。しばらくして戻ってきたジェシカさんは、なぜかリンゴを持っていた。おいしそう。食べたいかも。

「これ、何に見える?」

そう聞かれたので、私は普通に「リンゴ」と答えた。ジェシカさんは満足そうにうなずき、魔法の花をリンゴに向かってかざし、何かをつぶやいた。キラキラとリンゴが光った。…が、何も起こらない。でも、私が首をかしげる傍で、同じくリンゴを見ていたルイは「は!?」と声をあげた。しきりに目をこすっている。…何で?すると、ゼンさんは苦笑した。

「どうやら、その様子だと、ルイさんにはちゃんと影響が出ているみたいですね…。僕も形が変わったように見えました。でも、結花さんは何ともなさそうですし、今でもリンゴに見えているのでは?」

私とルイはうなずいた。魔法をかけているのは見たけど、本当に何も変わってないよ…。一方のルイは、なぜか呆然としている。ルイ、本当に何を見たの?気になって聞いてみたのだが、ルイは答えてくれなかった。


その後、私たちは何回か、他の人にも同じ魔法をやってもらったのだが、結果は全く変わらなかった。ルイはどの人がやっても形が変化したらしく、私は全く変化したように見えなかった。差がすごい。

「でも、これではっきりしましたね。影響系の魔法は、異世界人には効かない。理由は全く分かりませんが…。だから、ネネ様とお話した時も大丈夫だったのでしょう」

ゼンさんはそう結論付けた。でも、こんなに明確なんだね…。びっくりした。ちなみにルイは、実験が終わった今も、放心状態になっている。そんなに衝撃的だったのかな?ルイには悪いけど、それなら見えなくてよかったのかも…。

「あ、そうだ、結花、向こうにわたしの友達がいるからお喋りしに行こうよ!さっき、全然話してなかったし…。行こう!」

ジェシカさんにぐいぐい手を引っ張られる。え、ちょっと待って。早い早い。あと、ルイに行ってもいいか聞いてない…!私が振り返ると、ルイはひらひら手を振っていた、行って来い、ということだろう。

「ねーねー。紹介するね、この子が結花だよ!」

すると、わらわらと人が集まってきた。え、待って。早い。そして、一気にしゃべらないでほしい。何て言ってるか全然分かんない…!私はしばらくその場で魔法使いさんたちから色々な質問をされ、ものすごく大変だった…。元の世界について、とか、今暮らしているところ、とか…。みんな、外にほとんど出ないので、気になるらしい。いや、それはいいんだけど…。何でみんな、あんなに元気なの…?


一方、結花とジェシカが去っていった後。取り残されたルイとゼンは近くにあった椅子に座ってさっきの魔法について話をしていた。

「あの、最初の魔法で、結花さんが転びそうになった時のあなたの反射神経すごかったですよ。例えるなら、騎士みたいでした」

少しからかうようにゼンがそう言うと、ルイはそっぽを向いた。しかし、耳が赤くなっているのが、ゼンのいる方向からでも確認できた。

「知らねーし。あれは、結花が危なっかしいだけだ。マークにも勝手に触ろうとするし…。別に、全く、本当に、どうでもいいし」

その答えにゼンは、面白そうに笑った。しかも、どこがそんなに面白かったのか、しばらく笑い続けていた。

「…では、質問しますけど。2番目の魔法の時、あなたには何が見えましたか?」

その質問にルイははっとしてゼンを見た。少し面白そうにゼンはルイを見ている。

「…やっぱり、そう言うことかよ…」

「そうですよ。どうやら、ジェシカの勘は当たっていましたね」


ジェシカは、あの時、ゼンの耳元でこう言ったのだ。

「魔法の影響で見せるのは、『自分の好きな人』にしない?だって、あの二人、見てるだけでもどかしいんだもん。そうしたら、少しは二人の仲も進展するんじゃない?ね、いい案でしょ?」


「やっぱり、あの時あなたに見えたのは…、結花さんだったんですか?」

「……誰にも言わないよな?」

「あ。ジェシカには言うと思います。というか、そうじゃないと僕が見た相手を暴かれますし。それをされると、とても困りますね」

ルイは少し迷った末、認めた。その上で、ゼンが見た相手を聞く。

「え、僕にも聞くんですか。…まあ、一方だけが言うのはフェアじゃないですよね。分かりましたよ、言います。僕があの時見たのは、…ジェシカでした。…本当に不本意ですが」

その言葉にルイは苦笑した。しかし、同時に少し驚いた。

「付き合ってなかったんだな。てっきり俺は…」

「あんないたずらで意地悪で攻撃しまくってくる魔法使いとは、絶対に関わらないようにしようと、最初は思っていたんですけど。でも、なぜか一番最初にジェシカに目をつけられ、今に至ります。で、あなたは?」

「俺は、…何だろうな。よく分からない。でも、傍にいたいな、とは思う」

「…ルイさんって、案外可愛いですね。思考回路みたいなものが。興味深いです」

ゼンの言うことはよく分からなかったが、取りあえず、スルーしておく。

「…この前、知り合いと話した時、その人が俺が結花のことが好きに見える、って言ってたけど、よく分かんない」

「そんなの僕にも分かりませんよ。何で見えたのがジェシカなのか、本当に不可解です。でも、見えた時、何となくですが、心のどこかで納得している自分がいたような気がしました。案外、よく分からないものなのかもしれませんよ」

沈黙がその場に落ちた。向こうから、結花やジェシカの声が時々聞こえる。その声はとても弾んでいて、楽しそうだった。どちらもたくさんの同年代の少女と話すのが久しぶりで嬉しいのかもしれない。

「さっきの話の続きですが、そこまで『好き』とか深く考えない方がいいですよ。変に意識しても、関係がおかしくなるだけですから。それに、ルイさんはさっきみたいに結花さんのことをよく支えていますし、まあ、そのままでいいと思いますよ」

「…随分詳しいけど、前に恋人でもいたのか?」

「いえ、全く。昔、ここで働いていた友人です。彼は、楽しそうで、時々苦しそうで…。でも、見てて楽しかったですよ。その人は結局、想い人と両思いになって、その人と暮らすために外に出ていきました…」

ゼンは少し寂し気だった。ここは、女性の方が多い。恐らく、その友人はゼンにとって、親友のような存在だったのだろう。

「まあ、そういうことです。さて、そろそろ二人を呼びましょう。遅くなると、森で迷子になってしまいますから」

ゼンとルイは椅子から立ち上がった。結花とジェシカがそれに気付き、顔を見合わせた。ジェシカが結花に何かをこそっと言うと、結花は笑ってうなずいた。

「恐らく、何か僕に関するあることないこと混ぜこんだ面白い話でもしたのでしょうね。慣れてます」

呆れたようにそう言いつつも、ゼンは穏やかに笑っていた。その目はとても優しい。自分も、結花のことを話している時はこんな感じなのだろうか。ルイは、ふと気になったのだった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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