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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
二章 異世界花屋と魔法の花
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第二十八話

一日空きましたが、二十八話です。魔法の実験その一です。

「おーい、みんなただいまー!」

中に入ったジェシカさんは建物中に響くような声でそう言った。小柄なのにどうしてこんな大きい声出せるんだろう?ゼンさんはうるさそうに耳をふさぐ。すると、その場にたくさんの光が現れて一斉に人々が姿を現した。うわ、びっくりした…。心臓に悪い…。そして、人の数がすごい。

「慣れないうちは驚くと思いますが、慣れれば気にしなくなると思いますよ」

ゼンさんが話しかけてきた。ジェシカさんはやってきた人たちと楽しそうに会話している。しかも、五人くらいと同時に…!よく聞き取れるね…。聖徳太子みたい。

「というか、こんなに軽々転移できたら世界旅行が簡単にできそうですね」

「そうでもないですよ。けっこう力を使いますから、すぐに花が枯れてしまいますし、もともと個人が持っている力も削られてしまうので、続けては転移できません」

魔法って言うと、万能なイメージがあったけど、意外とそうでもないみたい。ルイも興味深いらしく、真面目に聞いていた。どうやら、魔法使いによって、もともと持っている力は強弱があり、強い人だったら花さえあれば、続けて転移できるらしい。魔法使いもすごいけど、魔法の花もすごい…。

「そういえば、店にアケビが来たらどうしようか…。サーニャ様への手紙、頼んでおいただろ?」

何をきっかけに思い出したのか分からないが、ルイがそう言った。

「サーニャ様…、ってどなたですか?」

ゼンさんがそう聞いてきたので、答える。

「サーニャ様は、ネネ様のこの世界でのお母さんですよ。仕事を依頼されたことがあり、顔見知りなんです」

「そうですか…。それなら、もし会うことになったら僕も会わせて頂いてもよろしいですか?詳しい説明が必要ですし…」

「了解。アケビに会ったら伝えとく。でも、魔法の解き方はないんだろ?どうするんだよ?」

ゼンさんは痛いところを突かれた、というような表情になった。

「実は、資料がない、と言いましたが、どうやって前に魔法を解いたかは一応分かっているんですよ…」

え、分かってるの!?だったらすぐにでもできそうだけど…?しかし、ゼンさんの表情は明るくない。

「ただ、問題があって、1000年前の大混乱の後も数回似たような事件が発生していたのですが、どれも魔法の解き方が違うんです。恐らく、相手によって解き方が違ったのではないかと思っています。それに、心に関する魔法なので、普通の解き方は通用しないのではないかと…」

「えっと、そもそも普通の解き方、とは一体…?」

「普通、魔法というものは魔法の花、自分が持ってる力、そして、色々な花を掛け合わせて使うものです。なので、魔法を解くにも花が必要なのですが、魔法によって使う花が違うので、そこが厄介ですね」

そう言うと、ゼンさんはどこからか魔法の花ともう一つ、何か不思議な花を取り出した。見たことがないので、たぶんこの世界にしか咲いていない花だと思う。

「例えば魔法の花とこの花を使えばさっきのように転移できます。事前に少し細工をしておけば、魔法の花だけでも一応使えますけど」

「そういえばヘルさんも天気を操る魔法を使った時、魔法の花しか持ってなかったです。それも細工していたから…?」

「ですね、恐らく。それにしても、天気を操るなんて魔法、初めて聞きました。もしかして、あれからヘルが自分で新しく作ったのでしょうか…。敵ながら、その発想力は本当にすごいと思います…」

でも、一人でずっと研究しまくってるのって、寂しくないのかな?それに、よく集中力を保てるよね…。私なら途中で飽きちゃいそう。そう考えると、ヘルさんって確かにすごいな…。

「あ、話が逸れてました。魔法の解き方の話をしていたんでしたね。魔法を解くには、基本的にはさっき言ったように花を使います。ただ、特殊な場合もあって…。その場合ははっきり言って面倒です」

特殊…。まあ、どんな物にも例外はあるのだろうけど…、そんなに面倒なの?ゼンさんが、ものすごく嫌そうな顔をしている。

「ちょうどいいので、心を操る魔法、つまり、ネネ様にかけられている魔法を例にお話しますね。ああいう、人の心に関するような魔法はなかなかかけることができません。普通の人でも跳ね返すことができます。それでは、なぜネネ様はあの魔法にかかってしまったのでしょうか?」

え、跳ね返せるの?!初めて知った…。何で、って言われても…。なかなか思いつかない。すると、ルイの方が思いついたようだった。

「もしかして、気持ちの問題だったり?」

「その通りです、ルイさん。あの魔法の場合はきっと、心の中の深い闇を利用しているのでしょう。その場合、その闇を取り払わなければ魔法は解けません」

「ということは、つまり、闇を取り払う方法を探さないといけない、ってことですよね?」

「そうです。それが大変な作業になると思います…。それは本当に人それぞれですから。…というか、ジェシカ、ずっと話してないでいい加減こっちに戻ってきてくれない?」

すると、ジェシカさんははっとして、慌てたようにこっちに来た。

「ごめん、久しぶりだったからついつい…。で、何の話してたの?」

「久しぶり、って…。一週間も経ってないのに。今話していたのは、魔法の解き方について」

「そういえばそれ、けっこう重要な話なのに話してなかったよね!失敗したなあ…。それじゃあ、早速、魔法の実験してみる?」

「何で『それじゃあ』なのか分からないけど、いいよ。結花さんの準備が整い次第かな。あと、何の魔法かけるつもり?」

そう言われたジェシカさんはしばらく考えた。そして、

「空中を浮ける魔法とかは?空飛ぶのって楽しいし!高所恐怖症じゃなければ余裕だし、簡単だし…」

「高いところ平気なので、大丈夫ですよ。それでお願いします」

空を飛べるってすごいと思う。魔法使いが出てくるお話でもよく出てくる有名な魔法だよね。

「じゃ、それで!向こうに広い部屋があるから、移動しよう!」

私たちはジェシカさんたちに連れられて部屋に移動した。その最中の廊下はけっこう面白かった。所々に仕掛けがあって、歩くと光ったり、急に空中に案内が出てきたりするのだ。上の方にはシャボン玉みたいなものがあって、その中にはたくさんの花が入っている。まるで、金魚鉢に花が入っているみたいで可愛い。他にも、壁にあるマークに触るといきなり床に穴が開いて、隠し階段みたいなものが現れた。それには、かなり驚いた。しかも、運の悪いことに、穴の近くにルイがいて、危うく落ちかけるところだった…。

「触るなら一言言え!ってか、勝手に触るな!」

と怒られた。反省。でもさ、ここ、魔法協会だよ?マークとかを気にするな、って言われても気になっちゃうんだけど…。でも、どのマークが何を表しているか分からないので、マークを見つけたらジェシカさんたちに確認することにした。

「あ、このマークは何ですか?この、紫のとげとげ」

「いや、それ、どう考えても危険なマークだろ。絶対やめとけ。絶対触るな」

「あ。それ?それはね、侵入者用のトラップだよ。触ると、超危険な毒針が大量に落ちてくるから、触ることはお勧めできないかな。というか、触らないで。こっちも巻き添えになる…」

え、怖っ。私は慌ててマークに向かって伸ばしていた手を引っ込めた。危ない…。

「やっぱり、もしマークを見つけたら、ちゃんとジェシカさんたちに聞いた方が良いみたい…」

「当たり前だろ。絶対一人で触るなよ。もし今みたいなトラップだったら大変なことになる。…さっきのが、隠し階段で良かったな。トラップだったら、終わってたぞ」

「え?言ってなかったっけ。あの階段、地下にある、ここよりも大量にトラップがある迷宮に通じてるよ?」

「「………………」」

マークに触るのは、やめることにした。というか、この調子で大丈夫かな。気付かない間にマークを触りそうで怖い。部屋にたどり着けるか心配になってきた。


「ここだよ。広いでしょ?普段は、魔法の訓練に使ってる部屋なんだ!」

着いたのは、びっくりするほど広い部屋。天井が高いせいか、開放感がある。

「あ、ここにもトラップがあるから気をつけてね。あそこの壁についてるあのスイッチなんだけど、押したらちょっと爆発するからね。絶対、絶対、触っちゃダメだよ!」

…何回も念を押すってことは、つまり、相当危ないものなのでは?「ちょっと」どころの騒ぎではない、ということでは?

「ではでは、早速いってみよー。結花、準備いい?」

「いつでも大丈夫ですよ」

「じゃあ、カウントダウンするね。さん、に、いち!」

ジェシカさんが魔法の花を私に向けた。花が光る。ふわり、と浮遊感がして、私の体が宙に浮いた。すごい!ジェシカさんが満足そうに笑った。

「やっぱり、魔法はかけられるみたいだね!」

「そうみたいですね。いつもより高い…。何か新鮮です」

私は手足をパタパタ動かしてみた。すると、ジェシカさんがあわあわした。

「結花、動いちゃダメ。空中に浮くってけっこう不安定だから、動いたらバランスが…!」

その瞬間、私の体がぐらり、と傾いた。落ちていく。何とか片足を地面に着けたが、再び体が思いっきり後ろに傾いた。後頭部ぶつけたらまずい気がする…!私は衝撃を覚悟した。

でも、いつまで経っても痛くならない。いや、正確に言うと、何かにはぶつかったけど、全然痛くなかった。

「…セーフ。危なかったな。俺がいなかったら今頃お前、頭思いっきり打ってたからな?感謝しろよ」

上から声が降ってきた。見上げると、そこにはルイの顔。何か、近い。

「!?!?」

どういう状況!?えっとえっと…。要するに、地面に激突するところをルイが助けてくれた、ってこと、かな?たぶん、そういうことだよね…?

「あ、ありがとう…。すごく助かった」

「ああ。良かったな。ってか、気をつけろよ。いつでも俺が助けられるわけじゃないからな」

「うん…。あ、ジェシカさん、ゼンさんすみません。お騒がせしました…」

「気にしないで。無事だったんだし!それに、わたしもちゃんと注意事項教えてなかったから。お互い様ってことで!」

「ですね。ジェシカが教えてなかったのが悪かったです。こちらこそ、すみませんでした」

そんな感じで一つ目の実験は終わったのだが…。

「えっと…、ルイ?もう放しても大丈夫だよ?」

なぜかルイに捕まったままだったので、そう言ったけれど…。

「断る。放したらまた、何かしでかしそうで怖いからな…」

ぐうの音も出なかった。

読んで下さりありがとうございました。

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