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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
二章 異世界花屋と魔法の花
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番外編 アケビとルイの昼休み

こんにちは。今回は番外編、アケビ視点のお話になっています。番外編と言いつつ、そこそこ重要なはずです。…たぶん。

その日、わたしは植物屋でのんびり、他のお店を眺めていた。植物の健康状態を確かめるために。例えば、あっちの方にあるお店のは、どこか元気がなさそう。たぶん、水のあげすぎ。でも、向こうのは生き生きしている。ただ、もう少し日向に当てた方がいいかも…。そんなことを考えていると、いつもあっという間に時間が経ってしまう。そして、いつもスイちゃんに怒られる。…なんて考えていると、実際にスイちゃんがやって来てしまった。

「アケビ師匠!早くお店に戻ってください。今日中にこの書類の山を片付けますよ!」

「えええ……。面倒~。そんなに重要なの?」

「はい。書類のうちの一枚は、一週間前に提出期限が過ぎており、ここの管理人さんから苦情が来てます」

うわー、最悪…。管理人さん、怖いんだよね…。というか、これじゃ、どっちが弟子だか分からない。いや、既に初対面の人にはよく、わたしが弟子って間違えられてるし…。

「あ、あと、お昼はルイさんとお召し上がりになる予定ですので、急いだ方がよろしいかと…。さもなければ…」

まずい、これ以上渋っていると、ルイとの約束を破ってしまうことになる。スイちゃんの脅しは容赦ない。

「分かった分かった!ちゃんと書類を片付けます!」

わたしがそう言うと、ようやくスイちゃんは笑みを浮かべてくれた。

「では、早速始めましょう。ちょうどお客さんが来ていないのでチャンスです」

わたしは結局、その日の午前中は書類とにらめっこしていた。


「こんにちはー。…あ、もしかして、毎日恒例の書類整理中?何だったら終わるまで待ってるけど…」

ルイがやって来た。わたしがスイちゃんを見ると、彼女はにこっと笑った。

「大丈夫です。この量なら何とか間に合います。行ってきて大丈夫ですよ。後はお任せを」

「ありがとね。行ってきまーす」

この日はもともとルイとお昼ご飯って決めていた。わたしたちは月に一度、こうやって集まり、色々話しているのだ。でも、今日、意外だったのは、ルイが結花ちゃんを連れてこなかったこと。いつも一緒にいるのに珍しいな…。どうしたんだろう?そのことを聞くと、何故かルイのまとっている空気が重くなった。わたし、悪いこと聞いちゃったかな??

「結花は今、文房具屋に行ってる。紙をもらったお礼に…。だけど…」

「なになに?何かあったの?どうせお昼一緒だし、相談のろうか?」

わたしがそう言うと、ルイは少し迷ったようだったが、うなずいた。

「昨日で、二週間まで残り一週間になったんだ。でも、俺はずっと結花が店にいてほしい、って思ってて…。だけど…」

少し口ごもるルイ。珍しいし、何だか可愛い。こういうルイを見られるのは、結花ちゃんのおかげかな…?

「だったら、それを直接、結花ちゃんに言えば良いんじゃないの?結花ちゃんだって、ルイのお店にいたいみたいだし?」

「そう…かもしれないけど、何か引っかかるんだよな…」

「引っかかる…?何が?」

「結花は…、花屋だったら、どこでもいいんじゃないかって思って…。別に俺の近くじゃなくても、園芸ができれば何でもいいんじゃないか、って。俺の結花への態度とかいいものじゃなかったし。だから、昨日、結花がシェーロン語を教えてほしい、みたいなことを言ってきた時、何て言えばいいか分からなくて、あと一週間だから今から教えても中途半端になるんじゃないか、って言っちゃったんだよ…」

ルイ、何やってるの…。絶対、結花ちゃんが傷ついちゃったやつだよ、それ…。

「それを聞いた結花ちゃんは何て?」

「…変なこと言ってごめん、って。…これ、かなりまずいよな?」

「まずいに決まってるでしょうが…!本当に何やってるのよ。このままだと結花ちゃん、絶対一週間後にルイのところから出ていこうとするはずよ!?」

「だよなー……」

だよなー、じゃないよ。しかも、結花ちゃんがここにルイと来てないってことは、かなり二人の関係が大変なことになってる、ってことだよね!?早く改善しないとまずいんじゃないの?

「それで、今日の朝はどんな感じだったの?まさか、また、『あと一週間』みたいな感じなこと、言ってないでしょうね?」

「それはさすがに言ってない。でも、何て言ったらいいか分からなくて、ほとんど何も喋ってない…」

わたしは思いっきりルイの頭をぐりぐりした。周りの人がぎょっとしたようにわたしたちを見るが、気にしない。あとで苦情も入りそうだけど、スイちゃんに任せる。

「いたっ!!!急に何するんだよ、アケビ…!それに、周りに迷惑だろ…!」

「うるさいわね。あんた、ばかじゃないの…。『一週間発言』よりもっと悪いわよ、その態度…。考えてみなさいよ?もし、結花ちゃんが朝のあなたと同じ態度を取ったらどう思う?」

「それは…。かなり、悲しい、と思う」

「でしょ?結花ちゃんだってきっと悲しかったはずよ?」

わたしがそう言うと、ルイは黙った。後悔しているみたい。…ちょっと言いすぎちゃったかな?なので、わたしは、さっきのルイの発言で感じた「良いこと」も話すことにした。ついでに言うと、恐らくこの言葉でルイをからかうことができる。

「でもさ、ルイってなんだかんだ結花ちゃんのことが好きだよね?」

「……………は???」

あ、やっぱり気付いてなかったみたい。ルイがすごく間抜けな顔をしている。こういうルイを見られることって滅多にないんだよね。今日は珍しい表情ばかり見てる気がする。ちょっとラッキーかも。

「だってさ、ルイは自分の気持ちだけじゃなくて結花ちゃんのこともちゃんと考えてるでしょ?いつも、ルイは相手に気を使わないし。むしろ、相手に対する扱い、雑だし…」

「それ、絶対けなしてるよな…?」

「だって事実じゃない。ルイ、年上の人に敬語使うこと、ほとんどないでしょ?…で、話の続きなんだけど。そもそもルイ、初めて結花ちゃんと会った時とかも普通に受け入れてたし。普段、そういうことないでしょ?それに…」

わたしがどんどん、ルイの結花ちゃんへの態度を説明していくと、ルイはだんだん赤くなっていった。やっぱり可愛い。ルイってこんなに可愛かったっけ?

「アケビ、お前な…。説明するついでにからかってるだろ!?」

あ、ばれました?仕方ない、次の言葉でルイをからかうのは一旦おしまいにしよう。

「ごめんって。あと一つだけ。この前、わたし、結花ちゃんに可愛い服、買ったでしょう?その時のルイの反応で確信した。だって、ルイ、今まで他の女の子たちがどんなに着飾ってても、今まで見向きもしなかったんだもん。でも、…結花ちゃんだけにはすごく反応してたよ」

「………なんかアケビってすごいな。アケビは恋したことあるのか?」

「え…、わ、わたし!?」

その質問がくるとは思っていなかった。わたしが慌てふためいていると、ルイはけらけら笑っていた。どうやら、さっきのお返しらしい。…ルイめ。でも、まだ微妙に顔が赤いので、まあ、お互い様かな、と思った。

「そういうわけだから、とりあえずルイは誤解を解くこと。応援してるから頑張ってね♪」

「い、いや、まだ、好きって決まったわけじゃ…。でも、ありがとう。とりあえず、結花にこのまま店にいてほしい、って伝えてみる」

「うんうん、上手くいかなかったらまた相談しに来てね」

「…アケビにからかわれそうで怖いんだけど?あと、絶対このことは誰にも言うなよ。特に結花には」

「分かってますって。さすがにわたしでも言わないわよ」


その後、お昼ごはんを食べてから、ルイはお店に戻っていった。わたしがいつまでもそこでぼーっとしていると、スイちゃんがやって来た。

「アケビ師匠!さっき、クレーム…というか、通報?が来たのですが。それによると、アケビ師匠が少年に暴行を…」

「違う違う。誤解だよ!?全然、暴行じゃないから!」

「しかし、残念なことに周りの人にはそう認識されています。ということで、売り上げに影響することが懸念されていますが、どうしますか?」

「ううう…。しょうがないじゃん、ルイがばかなのがいけないの!!」

スイちゃんが呆れたような表情になる。

「そんなの知りませんよ…。人のせいにしないでください。それに、ばかって言った方がばか、って言葉聞いたことありませんか?…って、それはともかく、アケビ師匠、一旦お店に戻ってください。話はそこからです」

これは、長いお説教が始まる予感。一瞬、窓の外を見ると、青い空。急にネネ様のことを思い出した。そういえば、サーニャ様からの返事、来てるかな?昨日の内に出しておいたけど、昨日の今日だし…。

「アケビ師匠、早く行きますよ」

スイちゃんがわたしを呼ぶ。わたしは慌ててスイちゃんの後を追いながら、考えた。

今度は、結花ちゃんの方の相談に乗った方がいいかな、と。明らかに書類のことから現実逃避しているけど、その時にどんなことを相談されるか予想してしまい、わたしはついつい笑ってしまった。これから面白くなりそうな気がする。

読んで下さり、ありがとうございました。登場人物にスイちゃん、ジェシカ、ゼンを追加しました。

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