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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
二章 異世界花屋と魔法の花
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第二十五話

一日空いてしまいすみません…。

次の日、異世界八日目。私がお店の開店準備をしていると、昨日の夕方、お店の前で話し合ってた二人組がやって来た。朝早い…。そういえば、結局あの後、どうなったんだろう?

「おはようございまーす!昨日はどうもありがとうございました!」

少女の方が元気よく挨拶してきた。たぶん、私より年上。可愛らしい顔立ちをしている。

「おかげさまで泊まる場所を見つけることができました。本当に助かりました。なので、お礼を言いに来たんです。昨日、宿の場所を教えてくれた方は今どこにいらっしゃいますか?」

今度は少年が話しかけてきた。年齢は少女と同じくらいかな?どこか大人っぽい。

「お店の中にいますよ。入りますか?今は開店時間ではないですが、たぶん大丈夫ですよ」

と言っていたちょうどその時、ルイがお店から出てきた。中から私が誰かと話しているのが見えたのかもしれない。

「あー、昨日の…。おはようございます。昨日は宿は…?」

すると、少年の方がにっこり笑って答えた。

「ええ。あなたの言っていた宿に泊まれましたよ。とてもいいところでした。また、機会があれば行きたいです。本当にありがとうございました」

それを聞いてあれ?と思った。だって、昨日、ルイは、この二人に紹介した宿は予約がたくさん入ってるから泊まれないだろう、って言ってたのに…。もしかして、当日になってキャンセルした人がいたのかも。…うん、きっとそうだ。というか、それ以外の理由を考えられない。

「それで、聞きたいことがあるんですけど、少しよろしいですか?」

今度は少女の方が話しかけてきた。聞きたいことってなんだろう?

「わたしたち、とある調査をしているところなんですけど、最近、この辺りで変わったことってありませんでしたか?ほんの小さなことでもいいのですが…」

「…特にないと思うけど。あと一か月くらい後に祭りがあるし、それまでにあんたたちが探してる『変わったこと』が解決されるといいな」

ルイがそう言うと、二人はがっかりしたような表情になった。もしかしたら、なかなか情報を得られないのかもしれない。きっと二人だけでの調査って大変なんだろうな…。

「そうですか…。開店前の忙しい時間にすみませんでした。僕たちはこれで失礼します。でも、しばらくはこの辺りにいるつもりなので、また会えるかもしれませんね。もし何かに気付いたら教えて下さい」

少年はそう言って、少女と共に去っていった。…また会えたらいいな。


お昼。私はいつものパン屋さんでチョココロネとぶどうパンを買った後、とぼとぼと道を歩いていた。今日のお昼はルイは植物屋さん、と分かっていたので、文房具屋さんのところでお昼にしようかな、と思っていたのだ。ついでに、水の中で咲く花も届けたかったし、文房具屋さんにお礼も言いたいし…。でも、文房具屋さんのことではないけれど一つ気になっていることがある。

「何か…、気のせいかもしれないけど、ルイが冷たいんだよね…」

誰も周りに人がいないのは分かっていたので、ついつい独り言を言ってしまった。実は、朝からルイがそっけない。ルイは素直じゃないけど、そういうことは無かったので、正直戸惑っている。何でだろう?どうせあと一週間なんだし、もっと話したいのだけど…。もしかしたら、私と話すのが嫌になったのかな…?でも、何だか理由を聞くのも怖くて、結局何も聞いていない。相変わらずお客さんは多いけど、それ以外の時間は何も話さないので、すごく静かで、どこか寂しかった。

「何でだろな…。私は色々話したいのに…」

しばらく歩くと、文房具屋さんが見えてきた。とりあえず、一旦このことは忘れることにした。

「こんにちは、店主さん!結花です」

「一人か。珍しいな。いつも一緒にいる異国の少年はどうした?」

「…ルイは、今、植物屋さんに行ってるんです。なので、ここでお昼を食べようかと。いいですか?」

「構わない。後から君たちの住んでるところの主がやってくるだろうが、それを気にしないならば」

おじいさんのことかな?やっぱり二人は仲が良いみたい。そう思いつつチョココロネを取り出した。

「いただきまーす。あ、店主さん、今食べちゃっていいですか?」

「どうぞご自由に。こぼさなければ何でもいい」

そう言ってくれたので、遠慮なく食べることにする。いつも通りの甘さ。おいしい。チョココロネを食べ終えたちょうどその時、おじいさんがやって来た。

「おや。ルイと一緒にいないなんて珍しいこともあるもんだな…」

店主さんと同じことを言っている。でも、確かに一人であちこち行くことってなかなかない気がする。街に出るのは、大体買い物の時だから、ルイと一緒にいる気がする。

「ルイは植物屋さんに行っています。私は店主さんに水の中で咲く花を届けるついでに…。あ、渡すの忘れてた。店主さん、これどうぞ。水の中で咲く花、です。昨日、渡しに行こうかと思ったのですが、結局今日になってしまいました。すみません」

「これは君が作った物なのか?」

「そうです。ルイの作ったものは作品の域に達していたので、そっちを依頼主のお客さんに渡したんです。私のはちょっと可愛すぎました。…やっぱりルイの方が綺麗だったし、二つともルイに作ってもらった方が良かったでしょうか?気に入らなかったら捨てちゃっていいですよ。中に入ってる液体は水なので、普通に流しちゃって大丈夫です。花はご存知の通り、紙でできているので、それも普通にゴミ箱に捨てちゃっていいし…」

「待て待て!?もらわないとは言っておらん。ありがたくもらうことにする」

そう言って店主さんはお店の棚にそれを飾ってくれた。店主さんはどこか嬉しそう。気に入って頂けて良かった。すると、それを見ておじいさんが言った。

「今度わしにも作ってくれないか?ルイに言ってもたぶん作ってくれないだろうし…」

「了解です。…と言いたいところなのですが、私、あと一週間くらいであの花屋さんからいなくなる可能性が高いので、作れるかは分からないですよ?」

私がそう言った瞬間、店主さんとおじいさんが目を見開いた。…え、そんなに驚くこと!?

「何でだ!?あの少年、こんなにいい子を辞めさせるなんて最低だな…」

店主さんがぶつぶつと呟く。え、なんかすごく怒ってる…?!

「ちょ、ちょっと待ってください。はっきりそう言われたわけじゃないんです。ただ、話の中でそのことを示唆するような言葉を言われただけで…」

そう言うと、店主さんは少し大人しくなった。ちょっとほっとする。

「そうか…。もし追い出されたら、絶対に新しい職場を見つけてやるからな」

「え、あ、ありがとうございます…。じゃあ、私、そろそろ帰りますね。お邪魔しました」

「ああ、また来てくれ」


私は外に出た。相変わらず暑い…。でも、風があるからまだましかな。そう思いながら歩いていた、その時だった。急に私の前に人が現れた。…誰?その人の顔を見て、私は絶句した。

「どうしました?そんな幽霊を見たような顔をして…?流石に少し悲しくなりますね」

「どうしたも何も、何でここにいるんですか、ヘルさん!?」

「まあ、ちょっと挨拶に?ちょうどいいタイミングでしたので。聞きたいこともありましたし」

ヘルさんは笑っているが、正直怖い。だってこの人、目が笑ってない…。すごく冷たく感じる。

「結花さん、早速、単刀直入にお聞きします。どうしてあなたはネネからの誘いを断った…、いえ、正確に言うと、どうして断れたのですか?普通、断れないと思うのですが…」

「断れない」とはどういうことなんだろう?確かに、何かがおかしかったけど…。それとも、貴族からの誘いは断っちゃだめ、っていう決まりでもあるのかな?それに、どうしてヘルさんがこのことを知っているの?

「…ヘルさん、何でその質問を?もっと具体的に言うと、何で昨日の私とネネ様のやり取りの一部始終を知っているのでしょうか?」

「うすうす気づいているのでは?このことを知っているということは、その場にいたか、もしくは―…」

「…まさか、…あなたが、ネネ様に何かしたから、ですか?」

私が続きを言うと、ヘルさんはぱちぱち、と手を叩いた。

「大正解です。私がネネに仕掛けを施しました。…あなたを、ルイから引き離すために。しかし、上手くいきませんでしたね…。残念です…」

「それだけのためにネネ様を…?ネネ様を元に戻してください…!」

「それは無理です。確かに、仕掛けたのは私ですが、解き方は知りません。解くつもりはなかったので、もともと考えていなかったんですよ…。どうしましょうね?」

すごく他人事…。でも、仕掛け、…って何なの?

「そもそも、どうやって仕掛けを?それから、どうやったらネネ様をあんな風に変えられるんですか?魔法じゃあるまいし…」

「魔法はありますよ。今も昔も、これからも…。…私が生きている限り」

そして、ヘルさんは再び、にこり、と温かみのない笑みを浮かべた。


「なぜなら、私は、1000年以上前からずっと生きている魔術師ですから」


「嘘…。ルイは、1000年くらい前に魔法は全て無くなった、って…」

「ええ、表向きは。1000年ほど前、私の作った魔法が世界中を混乱に陥れた後、魔法協会と呼ばれる組織が魔法の花、と呼ばれる、それはそれは美しい花を全て刈り取って魔法を誰も使えないようにして、二度と大きな混乱が起きないようにしたんです。でも、私はもともと持っている魔力も強かったですし、秘密の場所に隠しておいた魔法の花が無事だったため、それらを使って生き延びてきたんです。…たまに、遊ばせて頂きましたけど」

そう言ってヘルさんは不思議な花を取り出した。その花は、まるで、蛍のように淡く光っていた。ヘルさんはその花を持ったまま、何かをつぶやいた。小さすぎて、私には聞き取れない。…その時だった。


急に空が暗くなり寒くなったかと思うと、何かが降ってきた。何か、白いものが…。手を伸ばし、触ってみると、ひんやりとしている。…まさか、これ、…雪!?今、夏なんですけど!?私は呆然とした。

「驚きましたか?これも魔法の一つですよ。ただ、残念なことに、天候を操る魔法はかなり力を使うんです。なので、…ほら」

そう言ってヘルさんは私にさっきの花を見せた。それを見てはっとする。花は、光を失い、萎れていた。いつの間にか、雪は止んでいる。ヘルさんは本当に魔術師みたいだ。

「そこで、それを前提にもう一つ、あなたに聞きたいことがあります。…元の世界に、戻りたくはありませんか?」

「……え?」

「私の魔法を使えば、恐らく元の世界に行けるはずですよ?あなただって家族と会いたいのでは?」

「私…、私は……」

答えられない。自分の気持ちが、分からない。その時だった。

「「「あーーーーーーーっ!」」」

誰かが叫ぶ声が聞こえた。私が振り返ると、そこには、昨日の夕方、初めて会った少年と少女。…それから、おじいさんまで。ヘルさんと、知り合いなのかな…?

「ゼンッ!魔術師、魔術師だよ!何かいきなり出ちゃったよ!?」 

少女が少しパニックになっている。対する、ゼン、と呼ばれた方の少年は冷静だ。

「ジェシカ、ちょっと落ち着いて。あと、魔術師は幽霊じゃないんだから、『出た』とか言っちゃダメだよ。…とりあえず本部に連絡しよう。話はそこからだ」

ゼンさんがそう言うと、少女―、ジェシカさんはうなずいた。

対するおじいさんは、ヘルさんを指さして叫んだ。

「この…、詐欺師め!結局約束を守らずに姿を消しおって…!」

何の話かさっぱり分からないが、三人ともヘルさんを探している、ということは理解できた。

「まさか、こんなところで見つかってしまうとは。しかも、三人に…。ここは、一旦引いた方が良さそうですね…。それでは、私はこれで。結花さん、次会ったときは、今の質問に対する答えを教えて下さいね?」

ヘルさんがそう言い終えた瞬間、辺りに突風が吹き付ける。私は腕で顔をかばった。やがて、突風は治まったが、そこにはもう、ヘルさんの姿はなかった…。

「嘘、うわああ…!どうしよう、見つけたのに、逃がしちゃった…!せっかくの機会だったのにー!」

ジェシカさんがしょんぼりしている。ゼンさんも落胆しているようだった。

「仕方ない。また探すしかないね。ジェシカ、行くよ」

「はーい。今度、見つけたら、絶対に逃がさないんだから!覚悟してなさいよ、魔術師!!!」

そう言いながら、二人は去っていった。どうやら二人はヘルさんが魔法使いだと知っているみたい。…ところで。

「おじいさん、詐欺師、って…。騙されたんですか?」

「すまぬ…。実は、わしは…」

おじいさんはそう言ってヘルさんとの会話を聞かせてくれた。それを聞いた私は何かがつながった気がした。

「おじいさん、教えてくれてありがとうございました。何となく分かった気がするので、これで失礼します!」

ルイがそっけない、とか気にしてる場合じゃない…!私は、自分の考えを早くルイに伝えたくて、走ってお店に戻った。

読んで下さり、ありがとうございました。

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