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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
一章 異世界花屋と私
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第十七話

今、私は史上最悪のピンチに陥っています。私が今いるのは、普通の道。目の前にいるのは、異世界一日目の時、アケビさんがいる植物屋さんでルイを見ていた怪しい人物。そして、その人は私にとある紙を見せている。その紙にはなぜか日本語で数字が書かれている。…あ、日本語というか、元の世界で一般的に使われている数字?日本語だったら漢数字になっちゃうよね。…って、今、その話はどうでもいい。問題は今の状況をどうすべきか…。走って逃げきれればいいんだけど、この人に追いつかれる予感しかしない。本当にどうしよう?

「もう一度聞きますが、なぜ、あなたはこの文字が読めるのですか?」

「…逆に聞きますが、なぜあなたは私にこの文字を読ませたのでしょうか?」

私はあえて質問に質問で返した。相手は少し驚いたようだった。…もしかして、子どもだからってなめられてた?私、元の世界ではもう高校生だったんだけど…。幼く見えるのかな…。

それにしても、どうしてこんな状況に陥ったのか…?私は今日の出来事を朝から思い出してみた。


今日の朝、私は六時より少し早く起きたので、数字の復習をすることにした。何か、忘れてそうで怖い。でも、意外としっかり記憶に残っていたのでホッとした。これで全部忘れてたら大変なことになるな…。私は数字が書かれた紙を机に置き、庭に出た。昨日思った通り、やっぱり今日はいい天気。でも、たまには雨が降らないと植物が干からびそう…。まあ、庭の草木にはちゃんと水をあげているけれど…。

「結花、おはよう。そろそろ花を乾燥させておいた方がいいんじゃないか?昨日のちびっ子たちが来るはずだし…」

ちびっ子って…。確かにルイにとっては小さいかもしれないけど…。

「ルイ!おはよう。うん、そうだね、フィオナちゃんたち、楽しみにしてたみたいだし…。今日はちゃんとお母さんたちに言ってくるかな…?」

私がちょっと心配している点をルイに言うと、ルイも微妙な表情をした。

「どうだろうな…。もし今日も何も言わずに来たら家に帰す」

だね、ちょっと申し訳ないけど、それが良い気がする。私はいつもより多めに植物採取することにした。…けど、どの花を摘もうかな?ハーブばっかり使いすぎるとなくなっちゃうよね…。

「ルイ、押し花用のお花、どれ使えばいいかな?なるべくだったら綺麗な色がいいんだけど…」

「そうだな…。あ、これは?」

そう言ってルイは私の足もとにある花を指した。そこには、色とりどりの花。一つの鉢に何種類花を植えたのだろう?と思ってよくよく見てみたら、一種類しか植わっていなかった。…ということは、一つの株からたくさんの色の花が咲くってことかな?すごい。もしかしてこれ、この世界にしかない花なのかも。

「これ、使っちゃっていいの?こんなに綺麗なのに…」

「綺麗な色がいいって言ったの結花だろ。その花は育てるの失敗したから自由に使っていい」

「え、これで失敗作なの!?こんなカラフルなのに!?」

「本当はその花、一つの花にたくさんの色が集まらないといけないんだ。つまり、虹色になる予定だったんだけど、失敗した。来年また挑戦するつもり」

虹色の花ってすごい…。育てるの難しそう。でも、成功したらきっと綺麗なんだろうな…。私はありがたくその花を摘むことにした。それから、ハーブティー用にジャスミンも摘んで、花を乾燥させることにした。


午前中は昨日の午後と同様、なぜか人が多かった。急に忙しくなると困る。というか、何で?一旦人がはけたので、ルイと「どうして急にお客さんが増えたか?」の会議をしていると、アケビさんがやって来た。昨日も来てたけど、本当にお店、大丈夫なのかな…?

「こんにちはー。何の話してるの?わたしも混ぜて!」

と話に加わってきた。すると、ルイが少し呆れた表情でアケビさんに言った。

「また弟子に店を任せてきたのか?その弟子が心配になる…。過労死させるなよ」

「大丈夫だよ。だってわたしの弟子だもん!それにあの子、元気だけが取り柄だしね」

理由が謎すぎる。しかもアケビさん、さりげなく辛辣な発言してたよ…?お弟子さん、大丈夫かな…。

「弟子の話は置いといて…。二人とも何の話してたの?」

「昨日からここに来る客が多いから、その原因について考えてた。念のため聞いておくけど、アケビはどうしてか分かるか?」

「念のためってひどくない!?それくらい簡単だよ。というか、その疑問は部外者の方が分かるかもね」

どういうこと?顔を見合わせた私たちにアケビさんはにっこり笑って言った。

「何でかって言うと…、このお店にこの前、サーニャ様がいらっしゃったからだよ!」

え…、どういうこと???

「だって、あのサーニャ様がいらっしゃったお店だよ?街の人が気にならないわけないでしょ?」

「いや、元はと言えば、アケビが連れてきたんだろ…」

ルイがぼそっとつぶやく。まあ、サーニャ様がここにいらっしゃったのはアケビさんが推薦したことが理由だけど…。伝わるの、早くない?この世界って確か、まだテレビないよね?「人の口に戸は立てられぬ」ってことなのかな…?

「そういえば結花ちゃん。数字の勉強、順調かな?」

急に話題が変わった。私は慌ててうなずいた。

「はい。昨日、ルイに改めて教えてもらって。少しは分かるようになってきました」

「そっかー。ルイ、頼られてるねー。良かったじゃん、いい弟子ができて」

「は!?弟子?いや、結花は弟子じゃない!」

「じゃあ、何?」

アケビさんにそう聞かれてルイは無言になった。どうやら返答に困ってるみたい。…でも、確かに、ルイにとって私って何なんだろう?ただの厄介者な気がするんだけど…。

「……。考えたことがない」

「それならやっぱり、弟子ってことで良いんじゃない?弟子っていいよー」

アケビさんは「弟子っていい」って言うと、何か怖い…。めちゃめちゃ無理難題言われそう…。なんて思っていると、ルイがこっちを見て聞いてきた。

「結花は何がいい?弟子でいいのか?」

いや、私に言われても困る。そもそもルイが私のことをどう思っているか?って質問だったんだし、私が答えちゃ意味ないでしょ…。それに、私だってすぐに思いつかないし…。

「分かんない。というか、ルイが考えるんじゃないの、この質問?今じゃなくても、いつか考えてくれればいいよ。今すぐ答えを出さないといけないわけじゃないんだし」

私がそう言うと、ルイはうなずいた。

「…そうだな。いつか考えればいいか」

と言ってくれた。…アケビさんは少しつまらなさそうな表情をしていたけど。何で?


しばらくすると、アケビさんはルイに言われて渋々と自分のお店に戻っていき、代わりにフィオナちゃんたちがやって来た。相変わらず大人数…。ちゃんと数えてみると、子どもたちは全部で五人いた。

「こんにちは、フィオナちゃんと…ごめん、名前が分からない。後でちゃんと聞くね。今日はちゃんとお家の人に行先伝えた?」

フィオナちゃんたちはうなずいた。よしよし。

「結花お姉ちゃん。早く早く!あ、お金先に払うねー!」

そう言ってみんな、紙幣を取り出した。…これ、たぶん人によって持ってるお金、まちまちだよね?どうしよう…。私はルイに助けを求めることにした。

「ルイ―。これ、いくら貰えばいいの!?分かんないんだけど…」

「勝手に決めていいぞ。栞作りは結花担当だから、任せる」

いや、そう言われても…。相場とか分かんないよー…。私はとりあえず、何円持って来たか尋ねてみた。

「この前と同じ金額!みんなにもその値段を伝えたよ!」

とフィオナちゃん。それなら普通にその額を貰っちゃえばいいかな?とりあえず、みんなからお金を受け取り、奥の部屋に連れて行くことにした。そして、五人を椅子に座らせ、少し待つよう言った。乾燥させておいたカラフルな花を取りに行こうと思ったのだ。…と、ルイが現れて

「これ。栞作りに必要なんだろ?」

と、屋根裏部屋に置いておいた花と薄い紙を私に渡してくれた。もしかして、取って来てくれたのかな。

「ありがとう!いつ取ってきてくれたの?ルイにどれくらいお金を受け取れば良いか聞いたの、ついさっきだったよね?」

「その後すぐに取りに行った。結花がこれを取りに行ってる間にちびっ子たちに何かあったら困るし…」

「本当にありがとう!それじゃあ、お店よろしくね」

「任せとけ。結花も、その、…頑張れ」

そう言ってルイはさっさとお店に戻ってしまった。でも、「頑張れ」って言ってくれて嬉しかった。


その後、私は何とかフィオナちゃんたちに栞の作り方を教えた。…疲れた。というのも、色々ハプニングがあったのだ。大量の紙が床に落ちたり、接着剤がこぼれたり…。教えるときも、たくさん人がいるからわいわい喋っていてなかなか説明を聞いてくれなかった。学校の先生ってすごいな…と思ってしまった。小学校の頃、授業中ふざけまくってすみませんでした…。でも、何とかめちゃめちゃ時間をかけて作り終えると、みんな嬉しそうにしていた。それを見ると、こっちまで嬉しい。

「「「「「ありがとうございました!」」」」」

そう言ってフィオナちゃんたちは帰って行った。…嵐みたいだった。

「結花、お疲れ。そろそろ昼休憩にするか」

「うん、そうする。私が栞作ってる間、お客さん来なかった?」

「…来た。そこにあるユリがなぜかすごく売れた。びっくりした」


そんな話をしつつ私たちは外に出た。それが今さっきのこと。私はルイがお昼ご飯を買っている間、昨日ルイが言っていた文房具屋さんが気になっていたので、行ってみることにする。ただ、ルイが行くとややこしいことになりそうなので一旦分かれることにした。ルイは何度も心配そうに

「気をつけろよ」

と言ってきた。私がのんびり文房具屋さんへの道を歩いていると、急に後ろから声をかけられた。

「すみません、少しよろしいでしょうか?」

…あれ?どこかで聞いたことある気がする、この声。私が振り返ると、そこには植物屋さんでハーブを売っていた―、もっと言うと、ルイのことを見ていた怪しい人がそこにいた。ルイの話からすると、この人はヴェリエ国の人の可能性が高い。でも、どうして私に声をかけてきたのかな…。私は警戒しつつ、答えた。

「…何ですか?この前、植物屋にいた方ですよね?」

「…ええ。実は少し、あなたに確認したいことが二つほどありまして」

はあ。返答に困るな。どこまで答えればいいか分からない。でも、逃げる方向で行った方が安全だよね。

「…確認したいこと、ですか?その前に私から聞きたいんですけど、あなた、何者ですか?私とはほぼ初対面ですよね?はっきり言って怪しいんですけど…」

さりげなく、警戒してますアピールをする。

「これは失礼いたしました。私のことはヘルとでもお呼びください。確かにあなたとはほとんど話したことがありませんが、あなたは私の主に取って重要な方の近くにいる。だから声をかけたのです」

「そう、ですか…。でも、『お呼びください』ってことはそれは本名ではないんですよね?」

「ええ。しかし、私の周りの者はみな、私をヘルと呼びますから」

…どうでもいい情報をありがとうございます。私は、この人の本名を聞きたかったんだけどな。でも、この調子では教えてくれないだろう。そして、逃がしてくれなさそうである。私は取りあえず、この人の話を聞くことにした。

「…で、聞きたいことって、何ですか?答えられるか分かりませんが」

「まず一つ目。あなたとルイのご関係は?」

この人、何言ってんの?そう言わなかった私を誰か褒めてほしい。だって、本当にそうなんだもん。どうでもよくない?あなたに関係ありませんよ、と思ってしまう。

「……ルイは私の雇い主です。それ以上でもそれ以下でもないです」

「…そうですか。それはそれは…」

ヘルさんは驚いたようだった。何で?というか、何でそんなこと調べてるんだろう?

「それではもう一つ。あなたにはこの文字が読めますか?」

そう言ってヘルさんは私に一枚の紙を見せた。そこに書いてあったのは、数字。元の世界の数字。最近ずっとこの国の数字を見ていたせいで元の世界の数字が恋しかった。私はあまり深く考えずにその問いに答えてしまった。

「367294675ですよね?」

私がそう答えた瞬間、ヘルさんは笑った。ひっかかったな、という感じで。その笑みを見てようやく気付いた。…この人、私の正体が知りたかったんだ。

「…あなたは、どうしてこの文字が読めるのですか?」

案の定、その質問が来た。…答え方に困る。

「し、質問は二つだけだったはずでは?」

「そんなこと言いましたっけ?確かに私は『二つほど』とは言いましたが、『二つだけ』とは言っていませんよ」

うわー、最悪。そういえばそうだった気がする。絶体絶命だ。ヘルさんは私を追い詰めるように再び問いかけてきた。

「なぜ、あなたはこの文字が読めるのですか?」


そういう訳で、私は今、史上最悪のピンチに陥っている。どうすれば良いのだろう?

読んで下さり、ありがとうございました。本当はこの話に全部まとめたかったのですが、長くなってしまったので、二つに分けることにしました。次のお話に続きを書こうと思っています。

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