表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の異世界花記録  作者: 立花柚月
六章 異世界花屋とメッセージ
112/139

第百六話

次の日。私は眠いな、と思いつつ、何だかんだ起き上がった。一人のせいかやることが異常に増えた。まず、朝ごはんを作って、その後で建物の方の掃除をしないといけない。前も掃除自体は手伝っていたけど、役割分担をしていたせいかそこまで多くなかった。けど、一人でやるとなるとかなり大変…。私が来る前はルイが一人でやっていた、ということを考えると本当にすごいと思う。私はそんなことを考えつつカーテンを開けて外を見た。その途端、窓を開けていないのに冷たい空気が入ってきて慌ててカーテンを閉めた。寒い!!今日は小雪くらいかな。でも、寒いものは寒い。しかも、一人でいるせいか、余計に寒く感じる。そのことを少し不思議に思いつつ私は急いで建物の方に向かった。…けど、こっちもあまり暖かくない。もうちょっと暖かかったら良かったんだけど…。ちょっと残念に思ったがとりあえず私は朝ごはんを作ることにした。意外と食材が余っていたので、それを使うことにする。こういう時に、元の世界の調理実習とかが役立つ。技術家庭の授業、ありがとう。そのおかげで難なく調理を終えることができた。

「…でも、一人で食べるのってやっぱり寂しいんだよね。昨日もずっと一人だったけど、さすがにこれは慣れないなー…」

元の世界でも、食事は友達や家族と一緒にとっていたせいで、一人でご飯、というこの状況に違和感しか感じない。でも、誰かを呼んでくるわけにもいかないし。食材があっただけでも幸運だよね、と自分を慰めつつ朝ごはんにした。けれど、会話がないせいか、あっという間に食べ終わってしまった。もうちょっとゆっくり食べていた方が良かったかな?と終わってから気付いた。でも、既に終わってしまったので今更どうにもならない。私は微妙に寂しさを感じつつ、お皿洗いをしていたのだった。

その後は掃除。けど、この建物、意外と広い…。私が想像していたよりも時間がかかってしまった。そして、考えていたよりも疲れた…。そう思いつつ私は廊下を歩いていた。次が、最後の部屋、植物置き場だ。面倒だったので、ずっと後回しにしていた。だって、いちいち鉢を動かしたり戻したりするのが面倒…。やり始めたらいいんだけど、やり始める前はすごく嫌だな、って思ってしまう。私は扉を開けた。…そういえば、花は咲いてるかな?今日はまだ、植物の様子を確認していない。私は植物に近付いた。じーっとそれを見つめる。…咲いてなさそう。一回見た時、そう思った。しかしその瞬間、視界の端っこに何かが映り、私はそっちに目を移した。そして、目を見開いた。

「咲いてる……っ!」

すごい、アケビさんのおかげだ!後で会ったらお礼を言わないと!昨日の夕方、植物屋さんに行った時、お昼頃に来る、というような話をしていたのだ。私は掃除そっちのけで花を見た。掃除は……、後にしよう。今は一旦、忘れることにする。花は、ものすごく小さくて、可憐だ。触ったらすぐになくなってしまいそうで…。でも、可愛い。そして大量。小さくて白い花が集まっているのは、まるでレースみたいで本当に綺麗。きっと、この花の名前は…、カスミソウだ。カスミソウは、ナデシコ科の花で、普通だったら春とか初夏に花が咲く。白以外にも、ピンクとか紅色とか、色々ある。元の世界だと、よく花束とか切り花に使われているので、名前は知らなくても見たことがある、という人はたぶん多いと思う。…けど、この花はさっきも言った通り、普通だったら春に咲く。特別な技術を使ったことは分かるけど、どうしてこの花を…?それが不思議だし、予想外だ。千智さん、この花が好きだったのかな…?と考えたその時だった。視界に時計が入り込み、はっとした。時間が開店ギリギリ…!!この花の意味や、どうやって王宮まで行くか、っていう問題が残ってるけど、とりあえずお店の準備をしないと。というか、結局この部屋を掃除してないし!私はそのことに気付いたけど、後でやることにして、今はお店の準備をすることにした。お昼とかに掃除しておけばたぶん大丈夫なはず!それに、花が咲いていることに気付いたんだししょうがないよね。私は自分で自分に言い訳して、一旦その部屋を出た。


そして、お昼頃。アケビさんとスイさんが昨日言っていた通り、お店にやって来た。

「こんにちはー。結花ちゃん、一人でも大丈夫そう?何だったらわたし、料理とか手伝うよ!」

「師匠、それはやめておきましょう。というか、絶対にそれだけはダメですからね!時々不思議な、食べ物かどうかすらも分からないような料理を作りだすじゃないですか。そうなったら、食材の無駄ですし、食べる方の気持ちにもなってください」

スイさんの容赦ない言葉にアケビさんはしょんぼりとした。…というか、食べ物かどうかすらも分からない、って、どういうことだろう?逆に気になるような。けど、スイさんが本当に真剣な表情でそう言ったってことは、かなりすごいのかな…?って、その話じゃなくて!料理は大丈夫だから植物の話をしたい!それと、お礼も言わないと。

「あの、アケビさん、今日の朝アケビさんが調整してくれた植物、咲きました!本当にありがとうございます。後は、移動手段をどうするかだけですね…」

「本当!?良かったー!これで一歩前進だね。それじゃ、早速見に行ってもいい?」

私がうなずくと、アケビさんは楽しみ!というような表情で、植物置き場へ。…そういえば、まだ掃除してなかった。うーん…。アケビさんたちが帰った後にしよう。段々先延ばしになってきているけど、あまり気にしないことにする。植物置き場につくとアケビさんはじーっとその花を見つめた。朝よりも咲いている花の数が多い気がする。ちゃんと数えているわけじゃないから自信はないけど、何となくそんな感じがする。…と、アケビさんが尋ねてきた。

「…でも、どうしてこの花なんだろう?この花、この国ではけっこう需要があるけど、そこまで目立つ花じゃないから、どちらかというと他の花と合わせて使うことが多いんだよね…。結花ちゃん、この花にも何か言葉みたいなもの、ないの?」

そう言われた私はカスミソウの花言葉を思い出すことにした。…何だっけ?何となくは覚えているけど、ちゃんとした意味を覚えていない。えーと、確か…。数十秒くらい考えた後で、思い出した。その瞬間、私の中で全てがつながったような気がした。千智さんが、この花の種を渡した理由…。きっと、花が好きだった千智さんのことだから、たぶんこの花言葉も知っていたんだと思う。すると、アケビさんが不思議そうに聞いてきた。

「結花ちゃん?花言葉、分かったの?」

「はい、思い出しました!そして、この花言葉が、この種を贈った理由なんです。この花の意味は…」

私はそう前置きしてカスミソウの花言葉を二人に言った。すると、二人は目を丸くした。

「それ、絶対に二人に伝えないと!というか、すごく深い意味があったんだね!…すごいな、結花ちゃんがいた世界って。一つ一つの花にそういう言葉があるなんて…」

アケビさんはちょっと羨ましそうに言った。私は心の中で、もう一回その花言葉をつぶやいた。とても素敵で、花が好きな千智さんらしい伝え方だな、と思った。…けど、どうしてわざわざ花言葉を使ったんだろう?この世界には花言葉ってないみたいだし、ちゃんとその意味が伝わるかどうかなんて分からない。分かるのは、千智さんと同じ世界から来た人くらいだ。一種の賭けみたいなものだったのかな…?それか、何らかの形でその言葉を残しておいたって可能性もある。…けど、今のところそれっぽいのは見つかってないし。もしくは、既にルイに伝えてあるとか…?でも、覚えてなさそうだったし。そもそも、心当たりすらなさそうだった。花言葉の話は何回かしたことがあったけど、そういう話は全く聞いていないもの。何だか謎が解けたはずなのにすっきりしない…。何か、見落としていることとかあるのかな?しかし、スイさんの言葉で私は我に返った。

「ところで、花が咲いてその意味が分かったのはいいのですが、どうやって王宮まで行くんですか?期限まで、一日くらいしかありませんよ?早急に対応策を考えなくては…」

そういえば…!この花の意味が分かったことが嬉しすぎて忘れかけていた。いや、実際忘れていた。アケビさんも私と同じ状態だったらしく、はっとしていた。スイさんがここにいてくれて良かったな、と思いつつ私はその問題について考えることにした。確か、ルイの話では期限は明日の正午、鐘がなるまで…。それまでに、王宮にたどり着いて、更にはルイやロディル卿がいる場所を探さなければならない。…とすると、かなり前に着かないといけないよね…!?それを考えると、本当に時間がない。もうちょっと前にちゃんと花を咲かせられてたら…。と一瞬思ったけど、後悔してもどうにもならない。すると、アケビさんが何かを考えながら言った。

「この世界の交通手段は主に二つ。水上車、もしくは馬車。けど、水上車はあまりにも時間がかかりすぎるから絶対に無理ね。とすると馬車なんだけど…、基本、馬車は貴族しか持ってないのよね…。…瞬間移動とかができれば便利なのになー…」

ジェシカがいればできそうだけど、この場にいないから…。でも、瞬間移動が一番便利そうだよね…。しかし、結局いい案は出ずに、お昼休憩がそろそろ終わってしまう頃、二人は植物屋さんへと戻って行った。再び、一人になる。どうしようかな…。馬車を盗んだらさすがに捕まりそうだし、そもそもどこにあるのか分からない…。それか、道を走っている馬車にこっそり乗るとか?…いや、それも無理。走っている馬車に飛び乗れるほど運動神経が良くない。それに、絶対にすぐばれる!

「困ったなー…」

「何が?」

「何が、って王宮へ行く方法が全く思いつかないから考えて………え?」

普通に返事してから気付いた。何でお店の中に人がいるんだろう?!確かにさっきまでアケビさんたちがいたけど、もう帰っちゃったし。そもそも、声も違う。というか、いつこの中に?私、扉が開いたのに気付かないほど鈍感ではないはずなんだけど…?そう思って声の先を見た私はびっくりした。楽しそうに私を見ているのは、ジェシカだったからだ。その隣には、ゼンさんも。

「久しぶり、結花♪元気にしてた?…というか、ルイはどうしたの?それと、何で王宮?悩みごとがあるなら相談にのるけど」

「それはありがたいし、頼みたいこともあるんだけど…。……何でここにいるの!!?」

驚いている私とは対照的に、ジェシカは楽しそうに笑っている。そして、色々とあって…、と話し始めたのでとりあえず私はジェシカとゼンさんの話を聞くことにした。

一つの話にまとめようと思ったら意外と長くなってしまったので、次回はこの続きからになりそうです。

読んで下さり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ