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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
六章 異世界花屋とメッセージ
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第百二話

そうこうしているうちに、残り一週間になってしまった。朝、起きてから軽い気持ちでカレンダーを見て非常にびっくりした。まさかもう、たった一週間になってしまったなんて…。いくら何でも早すぎないだろうか?絶対早い!そんな感じで私は朝からパニック状態に陥っていた。どうにかして、時を戻せないかな?本気でそう思う。何だかんだ、何もしていなかったような、そんな気がする。私は、今日はどうしようかな…、と思いつつ朝の支度をして外に出た。今日は綺麗な青空が広がっている。日によって、天気の差が本当にすごい。くっきりしている。晴れるときは、本当に真っ青な空だし、雪の日はとことん雪が降り続く。きっと、今日みたいな晴れの日は、夕焼けが見られるだろうな…。それを少し楽しみに思いつつ、私は建物の扉を開けた。…けど、私はそこで固まった。扉を開けた、その状態のまま。だって、そこには何故か、ルイがいたから。何でだろう??普段、わざわざここで待っていることなんてほとんどないはずなんだけど…。すると、ルイは軽く私をにらんで言った。

「結花、そこ開けっ放しにするな。今日は雪が降ってないとは言え、寒い。何でそこで固まってるのか知らないけど、とりあえず閉めろ。そうだな…。あと一秒くらいで」

そう言われて我に返った私は慌てて建物の中に入り、ばたん、と扉を閉めた。たぶん、その間一秒だったと思う。それくらい、急いだ。というか、一秒って…。開けたままの状態にしていたのは悪かったと思うけど、短すぎる気が…。と考えているとルイが、

「何だ、動けるのか。だったら早く閉めろよ。建物の中まで寒くなるなんて冗談じゃない。ってか、何でそこで動きを止めてたんだ?急に氷にでもなったのかと思った」

動けるのか、って何なんだ…。私、ロボットとかの機械じゃないんですけど?それと、言いたいことは分かるんだけど、何で氷??確かに寒いけど、どうして氷で表現しようとしたのか、すごく不思議なんだけど…。

「氷にはなってないよ!だけど、ここにルイがいるとは思ってなかったんだもん。基本的に、私が中に入った時にここにルイがいる、って状況、なかったから…。ルイこそ、どうしてここに?」

「別に俺がどの場所にいたっていいだろ。ここに住んでるんだし。…ってか、そんな話をしに来たんじゃない!ちょっといいことがあったからすぐにでも伝えようと思ったんだよ。聞きたくないなら別にいいけど」

ルイはどこか嬉しそうにそう言った。何か、ルイがそういう表情をするのって珍しいような…?まあ、言ったら怒られそうだから言わないけれど…。でも、逆に言うとそれだけいいことがあった、ということだろう。ルイは「ちょっと」と言っていたけど、もしかして、「かなり」いいことなのでは…?私はちょっとどきどきしながら言った。

「すごく聞きたい!いいことって何?何があったの?」

「そうだな…、俺が言ってもいいけど、たぶん自分で実際に見た方がいいと思う。…ってことで、結花、ちょっと目を閉じておけ」

ルイはどこかいたずらっぽい表情でそう言った。…けど、状況が分からない。分からなさすぎて、戸惑っている。ルイが今すぐに教えてくれなさそうなのは分かった。そして、いいことを直接見せようと思っているみたいなのも、理解できた。…けど、何で目を閉じるのかが分からない。そもそも、目を閉じたら逆に何も見えなくなるような気がする。本当にどういうこと???私がきょとんとしていると、ルイはしびれを切らしたらしく、私の目元にぱっと手を当てた。何も見えないんですけど!?しかし、暗闇の中でルイの声が聞こえた。

「早く目、閉じろ。別に危険なところに連れて行くわけじゃないし。ほら早く」

そこまで言われたら、閉じるしかない。それに、この状況って何か緊張するし!!早くこの状況をどうにかしたい、というのもある。私は仕方なく目を閉じた。すると、ルイはようやく手を離してくれた。暗かったのが、急に明るくなった。ちょっとほっとしたけど、目を瞑っているので完全に安心できてはいない。…というか、いいことがあった、って話から何でこんなことになったのかがさっぱり分からない。これ、一体どうすればいいんだろう?そう思っていると、急に手に何かが触れた。反射的にその何かを握る。すると、何故かそれは、握り返してきた…?何で?微妙に怖くなったけど、目を開けてもいいのか分からなかったのでルイに聞いてみることにした。

「ねえ、ルイ、ちょっと質問なんだけど私が手に握ってるのって何?すごく謎なんだけど…」

「あー、心配するな。それ、俺の手だ。目、瞑ってるだろ?だから、ちゃんと連れて行こうと思って」

あー…、なるほど…。…って、え、ちょっと待って?!理解したけど、混乱してる。というか、何で?再び緊張してきた…。私が内心慌てていると、全くそんなことを気にしていなさそうなルイが、短く「ちょっと移動する」と言って歩き始めた。何が起こってるのか、本当に謎すぎる…。そう思いつつも、とりあえず歩いた。しばらくすると、どこかを曲がる。…??どこだろう、ここ。外に出てないのは分かるけど、本当に場所が分からない。

「着いた。目、もう開けていいぞ。そして、ここにいい物がある」

私はそーっと目を開けた。…あれ、ここって植物置き場?ここに、何が…??私は部屋中をきょろきょろと見た。すると、ある物が目に入った。それは、部屋の奥にある植物。ロディル卿から渡された…。私はそれにそっと近付いた。そして、気付いた。小さな小さな蕾が、幾つかついている。いつの間に…!?いいことってこのこと…!私は思わずルイを見た。ルイはどこか楽しそうな表情をしている。そして、嬉しそうでもある。私もつい、笑みを浮かべてしまった。まだ花は咲いていないけど、一歩前進!そんな感じがする!私はもう一回その蕾を見た。白くて、小さくて、可愛らしい。何の花なんだろう…。そのことが更に気になった。

「すごいね…。こんなに寒いのに、ちゃんと育つなんて…。一体どんな技術なんだろう…?いつか、私もそういう技術を学んでみたいな。そしたら、もっとお花で色々なことができそうだよね!」

「お前、本っ当に花が好きだよな。…まあ、そういうところが結花らしいけどな。それのおかげで助けられることも時々あるし」

ルイはちょっと笑ってそう言った。褒めているのか呆れられているのか…。微妙だ。けど、声の感じでは馬鹿にしている感じはしないから、たぶん褒めている…、はず?とりあえず、そう思っておくことにする。もしそうじゃなかったら悲しいし…。でも、反応に困った私は曖昧にうなずいた。念のため、お礼を言っておくことにする。

「えーと…、ありがとう…?」

「…?何で疑問形なんだ?」

「だって、褒めてるのかそうじゃないのか分からないから。だから、念のためお礼を言っておこうと思ったんだけど…。どっちか分からないからちょっと自信がなかった、というか何というか…」

「一応、褒めてるけど?」

一応なんだ…。やっぱり何とも言えないような気がするのは気のせいだろうか…?と思っていると、ルイは「そろそろ時間だから」と言ってすたすた、その部屋を出ていった。私は植物置き場にいたままでも良かったんだけど、聞きたいことがあったので、その後を追いかけた。そして、聞く。

「というか、さっき、何で直接言わないで、私をわざわざ連れてってくれたの?直接言った方が早くなかった?私は別にいいんだけど、ちょっと気になって…。何で?」

「別に。深い意味はない。ただ、反応が気になっただけだ。それだけ」

…要するに、半分いたずらみたいな感じだったのかな?前に管理人さんが、ルイがいたずらしてた、って言ってたけど、その名残なのかもしれない。とか考えてたら、また心を読まれそうで怖いなー、なんて思いつつも私はつい笑ってしまった。その後結局、ルイに、「何で笑ってるんだ」って言われてしまい、ごまかすのが大変だったのは、言うまでもない。


私はその日の夜、植物図鑑をめくっていた。けっこう久しぶり。何故かというと、植物の花の名前を調べようと思ったからだ。…けど、似ている花が多い。何となく集中できなくて、私はぼんやりと考え事をした。もし、期限内に花を咲かせられなかったら。そしたら私は、どうするんだろう?どうでもいいことなのに、何故かそれがすごく自分の中で引っかかった。そんな不安が急に頭に浮かんできた。自分でも意味が分からないんだけど…?何だか最近、ネガティブ思考になってきたような気がする。どうにかして、この思考回路を直したい…。けど、とりとめのないことをつい考えてしまうのも事実…。けど、その場合、私は私の気持ちをどうすればいいんだろう…?ずっと、気持ちを伝えられないままになってしまうだろう。それは嫌だな、とは思う。…けど。それでもし今、自分の気持ちを伝えたとして。もし、それが拒否されてしまったら?それはもっと嫌なのだ。私は、そんな矛盾する二つの感情の間で揺れ動いていた。

読んで下さり、ありがとうございました。

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