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私の異世界花記録  作者: 立花柚月
六章 異世界花屋とメッセージ
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第九十八話

雪が降り続いている。ここ数日、全く晴れていない。雪がどんどん積もっていくので、雪かきが大変…。本当にここって、雪がすごいんだな…。でも、段々とそんな天気に慣れてきてしまっている自分がちょっと怖い。慣れって怖いんだな、と本気で思ってしまった。まあ、そのおかげで雪の道を歩いたり、雪かきするのは慣れてきたけれど…。でも、最近は本当に寒くて、全然植物が育ってくれないのが非常に問題だ。細い葉っぱがもわもわ出てきてるけど、こんな感じで大丈夫なのかすごく不安…。一本だけすくっと成長しているわけではなく、何本にも枝分かれしているのが特徴的。最終的にどんな感じになるか、楽しみだ。そんなことを考えつつお店番を続けていると、庭に行っていたルイが戻ってきた。寒そうに、元の世界で言う、ストーブみたいな機械の近くに寄っていた。どうしてルイが庭に行っていたかというと、庭の雪かきをするためだ。そうしないと、小屋へ行けなくなってしまうので。いつもは雪かきしなくても一応、小屋には行けたらしいんだけど、今年はかなり雪がひどいらしく、ちゃんと除雪しておかないと行き来できなくなりそうなのだ。道の端っこにも大量に雪が積んである。このままだと、道の方にまで雪崩れてきそうで怖い…。除雪材があると便利なんだけど。それか、雪に温水をかけたら一気に溶けそうだよね…。そしたらけっこう道に積もっている雪の量が減ると思う。でも、この世界には除雪材はないみたい。もうちょっと正確に言うと、除雪材のようなものはあるんだけど、あまり効果がないらしく普及していないようだ。除雪材の成分が分かれば自分で作れそうなんだけど、化学とか全然興味がなかったから、全然知らない…。そんな自分にちょっと呆れつつ、私はルイに聞いた。

「この感じだと、夕方になる前に雪かきしておいた方がいいかな?明日になったらたぶん凍ってるよね?」

「そうだな…。何でこんなに雪が降るんだよ…。もう十分降ったんだし、そろそろ止んでくれてもいいと思うんだけどな…。けど、天気ばかりは人間の力じゃ変えられないし、どうしようもない」

と、ものすごく嫌そうに言った。どうやら、除雪が本当に面倒みたい…。まあ、やりたい、って思う人は少ないと思う。意外と力がいるから腕がすごく痛くなるし…。でも、夕方は私が雪かきしよう、と思っていると、ルイがぽつりとつぶやいた。

「寒いと植物も成長しないし…。そろそろ本格的にやっておかないとまずいよな…」

同じことを考えていたことにちょっと驚く。でも、ルイの言う通りだ。あと一か月を切っている。たぶん、時間的にはまだ余裕があるのだろうけど、植物が育つための環境があまり良くないせいで少し慌て始めている。何の花か分かればよかったんだけど、結局千智さんのノートにはそれらしき物は載っていなかったし…。せめて、もうちょっと期限を延長できればいいんだけど…。そう思った時、ふと気付いた。そういえば私、期限が三か月後、って話は聞いていたけど、詳しい話は全然聞いていない、と…。ルイ宛にロディル卿からの手紙は来ていたけど、それも見ていないし…。なので聞いてみることにした。

「そういえば、ずっと聞いてなかったけどあのお花、どこに持って行くの?というか、いつが期限?」

「あー…、そういえば俺も言ってなかったな。あれは、四週間後くらいに王宮に持ってく」

へー。なるほど。王宮か…。行くのにどれくらい時間がかかるんだろう…、ってちょっと待って、今、王宮って言った!?王宮ってまさか、シェーロン国の?何で??そもそもロディル卿ってヴェリエ国の人だよね。それなのに何で違う国の王宮…!?私が混乱していると、ルイがその理由を説明してくれた。

「どうやら、ちょうどその時期に王宮で大規模なパーティーがあるらしい。で、そのパーティーってのが、外国の貴族とか王族とかも招いて行う、すごい重要な奴らしくて、あの人もそれに参加するらしい。ってのも、あの人はヴェリエ国で外交関係の重要な役職についてるから、そういうのには参加しないといけないらしくてな。…そのせいで、俺も屋敷にいた頃、外国語を大量に覚えさせられたけど」

そう言ってルイはちょっと死んだような目になっていた。どうやら、ものすごく大変だったみたい…。ご苦労様です。つまり、ロディル卿はそれに参加するから、その時に、ついで(?)に確かめるってことかな?けっこうハードスケジュールな気がするんだけど、大丈夫なのだろうか…?…けど、ちょっと待って。私、どこかでそのパーティーの話を聞いたような気がする。どこだったっけ…。でも、王宮の話だから、たぶん王宮関連の人から聞いたはずで…。ということは、ネネかな?そういえば最近、ネネが来たことがあったよね。うん、そうだ、この前確かにネネとそんな話をした。準備が忙しい、って言ってたっけ。

「じゃあ、その時にネネに会えるかもしれない。ついでに、ネネが作った装飾とか見れないかな…。あ、でも、それどころじゃないかもしれないし、忘れちゃうかも…?」

「…?何でそこでネネが出てくるんだよ?俺はむしろ会いたくないんだけど…」

…あ、そっか。ちょうどその時、ルイはいなかったんだっけ?私はルイに、この前ネネがお店に来たということを説明した。そして、その時にそのパーティーだと思われることについても話をしたということも。時期的にも一緒だし、そもそもそんなに大きなパーティーを開くことって滅多にないことだと思うし同じものだろう。…それにしても、王宮とかパーティーとか、元の世界ではファンタジー小説くらいでしか出てこなかったけど、ここには普通にそういう物があるんだな…、と改めて思った。それに、少しだけど魔法もあるし。ここが異世界だっていうことを、再認識したような気がする。

「ネネ、何だかんだ元気そうだったよ。王宮の話をすごく楽しそうにしてきたし。数か月前は王宮で上手くやれるかな、ってすごく心配してたけど、大丈夫そうでほっとしてる」

「そもそも、あいつはいつも元気すぎるだろ…。俺は逆に、あいつが王宮で何かやらかしてそうで怖い。…ってか何なんだこの会話?俺たちはネネの保護者かよ?」

確かに…。傍から聞けば、そんな感じがしなくもない。でも、ネネとルイって会うたびに喧嘩(?)してるからな…。反抗期みたいな感じなのかな?とか本気で考えていると、ルイに軽くにらまれた。…まさか、心を読まれた!?私、何も言ってないよね?顔に出てたのかな。気をつけないと…。というか、これ以上この話を続けていると、また空想しそうになるから、別の話題にしよう。えーと…。あ、そうだ。

「…そういえば、ここから王宮ってどれくらい時間がかかるんだろう?半日くらいで着くの?それも考えておかないと、後で慌てることになりそうだよね…」

「ああ、そうだな。あと、言っとくがここから王宮、半日じゃ絶対に着かないからな。それと、水上車の乗換とかも調べておかないといけないな…」

え、そうなの?!ネネがまあまあの頻度でここに来てるから、けっこう簡単に行き来できるのかと思ってたんだけど…。違うんだ!?私が心の中で驚いていると、また心を読まれたのか、ルイが一旦奥に行って、しばらくしてから地図を持って戻ってきた。それをカウンター一杯に広げる。…意外と大きい。すると、ルイが説明し始めた。

「この地図で、赤い線で囲ってあるのがシェーロン国だ。今俺たちがいるのは、ここ。シェーロン国の中で三番目くらいに高い山の近く。ここで質問。王宮はどこでしょう?」

そこでクイズにする人って、普通いないと思うんだけど!?何でそうなった…。やっぱり、ルイは意地悪なところがあるんだな…、と思いつつ、地図の中のシェーロン国をじっと見つめる。地名が大量に書いてある。どこかに、王都、って字はないのかな?もしくは、首都…。それか、色付きの文字があったら分かりやすいんだけど…。そう思ってじっくり字を見てみたのだが、結果的に言うと、私が考えた文字はどれもなかった。どれも地名だし、色付きもなかった…。…よし、こうなったら当てずっぽうで行こう!!最初からこうしてた方が早かったな…。そう思いつつ、私は適当に左の方を指差した。本当に適当。目に留まったところを指しただけ。案の定、ルイに「はずれ」と言われた。これで当たったら本当にすごいと思う。すると、ルイが答えを教えてくれた。

「正解は、ここ。シェーロン国の中央に王宮がある。だから、けっこう遠いんだよな…。王都周辺は王宮があるから、ってことで道がかなり整備されてるから、馬車だったらそこまで時間がかからないけど、水上車を使うとなると、何回も乗り換えないといけないから、最短でも二日くらいはかかると思う」

二日…。って、それ、けっこう困るんですけど!移動で二日潰れる、ってことは、期限の三日前には花が咲いていないと、ってことだよね。移動する時はさすがに寒すぎて植物も成長できないだろうし…。期限が縮んだんですけど…。二日って意外と大きな打撃…。ルイが話を続ける。

「ちなみに時間も決まってて、その日の正午の鐘が鳴るまでに、あの人のところへ持って行かないといけないらしい。ってか、何でわざわざ王宮にしたんだろうな?交通費がかかるから嫌だな…」

あ、その点が嫌なんだ?王宮に行くこと、ではなく、お金がかかることの方を気にしてるんだ…。そのことをちょっと不思議に思いつつ私は言った。

「それなら、交通費代を請求してみれば?そしたら解決するかもね。あと、一つ質問なんだけど、何でさっき、王都の場所をクイズにしたの?あれ、すごく謎だったんだけど…」

「…何て言うか、面白そうだと思ったから?地名だけで分かるか気になったってのもある」

何なんだ、その理由…。面白そう、って…。微妙にひどくない?私、そこまでシェーロン国に詳しくないのに…。一方、ルイはひたすら楽しそうな表情をしていた。本当に面白がってるみたい…。私が文句を言おうとしたちょうどその時、お客さんがやって来てしまった。タイミングが悪い…。そう思いつつ、地図を片付けた。そういえば今、一応開店中なんだよね…。全然お客さんが来てなかったから忘れかけてたけど…。こんな寒い日に来て下さったんだし、いつも以上に真面目にやらないと。そう思いつつ、私はお客さんの方に向き直り、「いらっしゃいませ」と声をかけた。

読んで下さり、ありがとうございました。

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