旅立ち
「認定試験?」
「そうよ、未成年者でも試験に受かればギルドに所属できるの。所属してなくても買い取りだけはしてくれるんだけど受けておいた方が便利なのよ、身分証にもなるしね。」
身分証か、それは確かに受けた方が良さそうだ。
「受けるけど試験の内容は?」
「モンスターの討伐よ、何のモンスターか不明だけどそれは間違いないわ。」
「あっ、二人での戦闘になるから特訓するわよ。試験は明日だしね」
「…今から?」
「当然!」
「…30分寝かせてくれ。」
ヒールをかけてもらったとはいえ熊との戦いで疲労したし、徹夜である。 キツイ
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30分経って少し回復し、脇差しを買って特訓のために町からでた。
「さーてやるわよ、昨日は遠慮してあんまり動かなかったけど、今日は動くからヨロシク!」
…何だろう よろしく のところだけ何かおかしかった気がする。
「前方の岩陰にゴブリン一体、フリーだ。」
目星で敵の位置と数にあたりをつけ、(目星は普段はスルーしている現象、物に気づく技能、例えば車を運転しながら木にいるカブトムシを見つけたりできる。カブトムシだということは解るが種類までは解らず鑑定技能が必要) 敵のもとに向かう、昨日は目星が無かったため発見が遅れたのと他の冒険者がすでに戦っていたことがあってあまり数を狩れなかったが、今日はいっぱい狩れそうだ。…俺の体力が持てばのハナシダガ
「やあああ!」
気合いと共にファリンが槍を腹に突き刺す、俺も買ったばかりの脇差しでゴブリンの背中を袈裟懸けに切る。構え直して頭を狙おうとしたところで…ファリンが槍を突き刺していた、いや、それはなにもおかしくないのだが
…笑っていた、ニヤリとかそんなレベルでは断じてない、汚物は消毒だヒャッハーとでも言いそうな顔である。
動揺している間にファリンが攻撃を受けてしまった!1割も減っていないが呆けている場合ではない、ゴブリンを倒そうとすると
「手を出すな!」
…コワッ!、え?誰?ファリンさーん?
「オラァッ!」
それからファリンはバーサーカーなんじゃないかと思うくらい暴れた。
「ふぅ やっぱり戦闘はこうじゃなきゃね!」
ええー
「これくらいできないと試験に受からないのよ、無理なの?」
…よく考えたら熊の時はこれ以上荒っぽさだった気がする。
「動きは問題無いがちょっと驚いた。」
「あっそう?ごめんごめん。」
軽っ!
「でも冒険者はみんなこんな感じよ、慣れないとキツイわ」
サラッととんでもないこと言いやがった。
というかナイトが防御ガン無視でいいのだろうか、敵の攻撃を引き付ける役割だと思っていたが。
聞いてみると
「え?攻撃そっちに行ってないでしょ?」
いや、そうなのだが、
「挑発だとダメージが無いからすぐターゲットが移っちゃうのよ。」
「なるほど、ん?だとするとみんなってどういうこと?」
「魔法使いは遠距離魔法を使うとヘイトを凄く稼いじゃうから身体能力上げて魔法で作った武器で戦うし、ヒーラーは弓で状態異常にしてなぶり殺すことを喜ぶ奴がなるわね、だからみんなこんな感じよ。」
まぁ、そもそもモンスターと戦うし、気性の荒い人がなるのも納得だ。驚きはしたが、死ぬ前はこれ以上の怖い人はざらにいたので今さらだった。
というかこれはラッキーなのでは?そもそも熊との戦いもまともなものではなかったし、規則的な集団戦闘でもされたら厳しかったかもしれない。
初日のファリンとやった戦いかたがいつまでも上手く行くとは思えないし、この戦闘のやり方なら昨日やった相手の動きを見て行動することの延長線上でしかないのでソロの技術がそれなりに生かせるし良いことではあるようだ。
午後も特訓したところ、それなりに上手く連携できるようになったので、試験に備えて早めに寝ることにした。
試験当日になり、試験の内容をギルドに聞きに行った。内容はゴブリンを2体以上狩ることだった、一応不正防止のために監視が二人ほど付いたが、そもそも不正する気がないので構わなかった。懸念が有るとすれば、俺が二時間以上は姿を表せず、休息をとらないとダメージを受けてしまうことだが、そもそも2体相手に30分もかからないので大丈夫だろう。
というか試験は大丈夫だった。試験自体は15分もかからず終了したのだが
モンスターの群れに囲まれていた。30体ほどいるだろう、
「馬鹿な!なんだこれは!!」
監視役の猫耳のオッサンが叫んでいる。そりゃそうだろう、なんせ目星で見つけたときには既に囲まれていたので、最初から囲む前提で来たことになるからだ。
「ハハッずいぶん慌ててどうしたんだマルクのオッサン」
そう言って現れたのは赤毛に黒の目の異様な青年である。目が全部真っ黒なのだ。それに、
「マルクさん、あいつ攻撃されてない。」
モンスターの視界に入っているのに攻撃されていないのだ。『隠れる』を使っていないのにも関わらず。
「良いところに気がついたな、怪物どもは俺が操ってる。今はまだこの程度しか操れんが、この国の王になる男だ、忠誠を誓うと言うなら見逃してやろう。」
「シンク!馬鹿なことを言ってないで止めなさい!今ならまだ戻れるわ」
「馬鹿なことを言っているのはお前だ、手始めにこの町を滅ぼす!フハハハハハ!」
…なんだこの厨二病、モンスターのレベルが15なのには驚いたが(普段はレベル1)たった30体で町を滅ぼすとか頭おかしいんじゃないか?
とは言っても俺たちには脅威であることには違いない。こんな低レベルモンスターのいる地域に居るくらいなのでオッサン達のレベルは12なので1体2体はともかく30体はキツイ。
仕方ない、閻魔様に釘を刺されてはいるがクエストのスキルを使うしかないか。
『能力値上昇』で全能力値を3分間だけ2倍にし、『韋駄天の靴』を使用、モンスターの群れに向かう、韋駄天の靴の効果により、時速80キロは出ている、剣を振るまでもなく刀身に当たっただけでモンスターは死んでいった。
モンスターを全滅させるのに10秒もかからなかった。
驚いているオッサンらを置いといて、取り敢えずシンクを気絶させた。 この俺がこんなところでとかほざいていたが。
「それにしても、いいやつだったのに何でこんな…」
ファリンがそう言いながらシンクの肩をつかんだ瞬間突然ファリンが崩れ落ちた。
「おい!どうした!うっ」
俺もファリンに触れた瞬間目の前が真っ暗になった。
!~~!!?っ
気がつくと真っ暗な空間にいた。ファリンもいたが何やら得体の知れないなにかと口論している。
『クエストを受諾しました。』
…嘘だろおい。
俺はまだ選択していない、考えられるものとしては恐らくシンクは大クエストのモンスターに寄生でもされてたのだろう、それに触れてしまった俺たちまで大クエストに参加してしまったということ。
まぁ、取り敢えず口論を止めることにした。
『ちょうどいい、こいつに決めてもらおうじゃないか』
「そうね、ちょうどいいわ。」
ファリンと口している人は肉が腐っているのか異臭を放ち、山羊の頭に蛇の尻尾、悪魔のような姿をしている。
『私はこの女の心だ、こんなに醜いがな』
「違う!」
なんだこの展開、ちょっと急展開過ぎてついていけない。というか心とかどう判断すればいいんだ。
「俺は何すればいいんだ?」
『え?』
「え?」
「え?」
「…早く帰りたいんだけど俺。」
大クエストに参加してしまったので、早くリタイアしないと危険である
『ここに来たからには自分の欲望と戦うことになるの、どちらが勝つのかあなたに見届けて貰えない?』
「何で俺にはでないの?」
『え?』
「え?」
「え?」
欲望なら誰にでもあると思うんだが、人間ではないのだろうか?『盗み聞き』があるからこいつが嘘を行ってないことが分かるだけにへこんでしまう。
いや、待て、二人同時に入ったからそのせいなんじゃ…
『百人まで機能するんだけど…』
…何でだろう
「俺のことは置いといて、何で戦わなきゃいけないんだ?」
『心は本来1つだけ、体に2つの心は入らない、だから本当の自分はどちらか決めるために殺し合わなきゃいけない。』
「それどっちが勝っても本人じゃねーだろ…」
『え?』
「それに、欲望だけでも欲望がなくても生きていけないんじゃないか?」
『…』
「…」
「元は1つだったんだろ、1つに戻れないのか?」
「嫌よこんなの私じゃない!」
あっ、嘘だ、
「色んな顔があるのが人間だろ、ファリンだって…」
「知ったようなことを聞かないで!貴方はこんな目に会ってないからそんなことが言えるのよ!」
「俺は人間じゃないかもしれないんだぞ!意地はってんじゃねぇ!」
「うぅっ何でそんな酷いことばっかり言うの? 」
…泣き出してしまった。
泣きたいのはこっちだと言うのに
閻魔様のお墨付き貰ってるから嘘は100%見抜けるはずだし1つになってくれれば間違いなく元に戻るはずなんだが。
「お前ら親を弔う気持ちに嘘はないのか?」
『もちろん』
「…うん」
「自分の心も受け止められないやつがダンジョンを攻略できると思うか?」
そう言うと、2人は1人に戻った。
…やっぱりいいやつなんだな
「みっともないとこ見せちゃったわね。」
「お互い様だ。俺も前に見せちまっただろ。」
『クエストをクリアしました』
目が覚めた俺たちは、オッサン達に怒鳴られた。まぁ心配かけただろうし当然だった。
クエストをクリアしたことでシンクも元に戻り、モンスターを手懐けた力も消えていた。操られていたと思われたらしく(まぁクエストが原因なので実質そうだが)一応罪には問われないそうだ。
色々あったがギルドに入れたし、大クエストクリア報酬を貰えたし、(何故か配分は俺が9割、ファリンが1割、シンクは失敗と判定された)大成功だった。
そんなわけで1日後、俺達は町を旅立った。俺達の人生は希望に溢れている。
俺達の冒険はこれからだ!
ホントにこれからです、続きます。
ホントに続きます




