クエスト
遅れてしまい申し訳ありません。
宿屋に戻るとちょうど飯の時間だったらしく、宿屋内の食堂でファリンと飯を食べた。
食事が終わった後、試したいことがあったので町の外に出ようとすると、
「明日もあるんだからほどほどにしなさいよ」
と、釘を刺されてしまった。まあ、元剣道部とはいえ慣れないことばっかりで疲れたから、12時前には戻ると言って外に出た
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夜なのでギルドや武器屋、防具屋、道具屋はもうしまっているらしく、特に買い取りをして貰えないので稼ぎには出来ないなぁ等と思いながら、朝に戦ったフィールドまで来た。
予想通り真っ暗でほとんど見えない。当たり前である、月明かりは有るといえ街灯もないので真っ暗だった。
途中転んだりしながらモンスターを探して移動していると突然周りがよく見えるようになった。 といっても流石に昼間のようには見えず、シルエットが少し分かりやすくなったくらいだったが。
「やっぱり有ったか。」
特殊スキル 暗視 レベル1
あるとは思っていた、取説に載っているスキルのなかには最初から入手条件があるもの、?となっているものがあって、(入手条件だけでなく名前すら?になっているものもある) 何かのスキルレベルが一定の値になることが解放条件となるスキルがあるらしいが、このスキルは派生のしようがないと思っていた。(あるとしたら目星の派生かもとは思っていたが)
少しは見えるようになったのでモンスターと素手で戦った。少し苦戦したものの、25体くらい狩ったところで、格闘、暗視、目星、聞き耳が上がった。 暗視、目星のみレベル2、他は新規獲得
…どうやらよく見えなくて集中していたせいで、色々獲得したらしい、しかも夜間戦闘は難易度か高いと判定されるらしく (敵の強さは変わらない) 上がりやすいようである。レベルも6になった。
「もう10時半か」
メニューにある時計をみるともうそんな時間になっていた。収穫もあったし早めに帰るか等と思っていると、
「助けてください!」
いきなり後ろから髪の長い人間らしき女の人に声をかけられ、さっきまでなにもなかったはずなのに…ついとっさに
「はい?」
と返事をしてしまった。
[クエストを受託しました。]
「はぁっ!!?」
いきなり音声が流れあわてているうちに、突然女の人の背後に5mはある二足歩行の熊が出現した。眼は真っ赤に光っており、腕は地面に触れるほどに不自然に長く、爪だけで人の頭くらい長い、俺の身長の170cmでは股にも届いていないほどだ。
熊は女性に振り向くと、女性の両足を食いちぎった。
「あがぁぁぁっっ!」
女性は叫び声を上げ苦しんでいたが、痛みをこらえながら手を振るった。 次の瞬間無くなった女性の足の辺りが光って光がおさまると足が生えていた。そして同じことの繰り返しである。
俺は、恐怖のあまり足を動かすことができず数秒間その場を動けなかった。我に帰ると女性がすがるような目で俺をみている。
…本能は逃げ帰れといっている。当たり前だ、漏らしてないのが不思議な位である。だが、彼女の眼、そして、
「約束しちまったしな…」
そう、偶然ながら彼女を助けることに同意してしまった、そのせいで彼女はこんな拷問を受けているのではないか、俺が拒否さえしていればこんな目に遭わなかったのではないか。
理不尽な暴力、それは過去俺が受けたものであり、死亡の原因となったものだった。俺は転生できたが彼女は…
「隙を作る、逃げろ!」
そう叫び、ナイフを日本取り出して熊の足に[急所突き]をお見舞いした。 しかし、ハイドアタックを使ったにも関わらずHPがほんの数ドットしか減っていない、
「なにっ!?」
しかも驚いてるうちに熊の足から煙が出たと思うとHPが回復してしまった。
楽しみを邪魔されて怒ったかのように俺を睨み付けると、突進 俺が避けるとそれを待っていたかのように跳躍し腕を振るう、とっさに体を捻って避けようとするも長く延びた爪にかすってしまう、激痛が走り、トラックにぶつかったみたいに吹っ飛ばされた。
地面をバウンドし何とか止まる、俺のHPバーは1割になり赤いのを通り越してどす黒く変色しアラームがうるさい。見ればかすったところの肉が無くなっている。
ポーチからポーションをだし飲み干す、俺のHPが人と比べて少ないこともあってか全快復する。見れば肉も再生していた。
仮にファリンがこの場にいたとしてもダメだっただろう、こいつの前ではHPとか防御力なんて誤差の範囲内であり、即死である。
俺のことが見えるようであるし倒すことは早々に諦め、彼女と逃げることに決めた、それだって可能性は薄すぎるが…
「逃げるぞ」
「無理です、あの熊から離れられないのです。」
「えっ」
そんな隙を逃すはずもなく、あっという間に接近され、爪と噛みつきの連続攻撃をゆるしてしまう。唸りを上げて襲いくる腕を避けたら、地面に深々と突き刺さり ボガァッ!などとあり得ない音をたてる。それを苦もなく引き抜き、更に加速する攻撃を避けきれず、またもやかすってしまう。
吹き飛ばされ、何とか立ち上がると俺の体がひかり、全回復する。彼女が回復してくれたらしい。
「助かる。」
礼を述べ、この場をどうするか考える。避けながらだから頭が回らないが…
「どうだ?」
ナイフレベル2スキル[ポイズンスラッシュ] 毒を付着させるこの技は幸いにして効くようだった、リジェネレート(再生)もちょうど打ち消す程度は削れるらしく、毒+ナイフで削ることでようやく希望が見え始めた。
問題は毒が約2分しか続かないことである。毒が消えた瞬間HPが回復していってしまうので二つのナイフで交互にスキルを使うしかなかった。たまにレジストされて毒にならないこともあったが、そのための二刀流である。
やつの動きにも慣れ、攻撃を食らわないまま1割ほど削ったとき、フェイントを使ってきた。かすってしまい、彼女が回復してくれて事なきを得たが、熊のやつドヤ顔である。こいつには知性があるらしい。
「面白い!」
俺のことが判別でき、倒すために工夫してくる。能力値は向こうの方が高いだろうが、二人がかりなので対等だろう。俺は誰かと対等な戦いなどしたことがなかった。そして、俺を、俺だけを見てくれる相手も
俺は異常者なのだろう、それとも死が近いこの状況で心が壊れているのだろうか、興奮、喜び、そして少しの恐怖が俺を満たしていた。
熊のHPが7割になったとき、範囲攻撃をして来た。HPが5割になったとき、ナイフのスキルを使ってきた。HPが3割をきったとき、目から光線を乱射してきた。どれも避け、削っていった。HPと防御が高いのか、1ドットしかダメージを与えられなかったが、回数を重ねるごとに奴のHPは削れていった。
二人で踊っているかのような感覚だった。それはそれは物騒な踊りだったが
「楽しいなぁ」
そう言うと、俺は楽しくない!と言わんばかりに光線を乱射してきて、とても楽しかった。
朝日が上る直前、熊のHPは0になった。からだが消えて人魂になり、空へ上って行く様は美しかったが同時に寂しかった。
夢の時間は終わってしまったのだ、自分で倒しといて何をいってるんだという話かもしれないが。
緊張がとけたのか疲労が一気に襲ってきた。足は棒になり、腕は持ち上がらないしでキツイ。
「ありがとうございます。…これでやっとあの人のもとに行けまる。」
みると彼女は半透明になっており、今にも消えそうだった。幽霊だったのだろう。そもそも熊の攻撃を直に食らって死なない方がおかしかったのだ。
聞けば、ずっとあの熊に捕らえられていて、成仏出来なかったらしい。
俺は棒のようになった足をなんとか動かすと、あるものを探し始めた。幸いにして探し物はすぐに見つかり、彼女が消える前に戻ることができた。
「それは?」
「鬼灯だ、もっとも似ているだけで名前は違うがな、故郷では死者の魂を導く提灯と言われている。」
俺が死んだとき真っ暗な道を進み続けなければ閻魔に会えなかった、少しでもその助けになればと思ったのだ。
「ありがとう。」
そう言って彼女は幸せそうに笑うと、朝日に照らされて消えていった。後には一個だけ実がなくなった鬼灯だけが残されていた。
[クエストをクリアしました]
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棒になった足を酷使してようやく宿屋に帰ることができた。宿屋の前にファリンが鬼の形相で出て来てメチャクチャ怒られた。
怒ったファリンは熊より怖かった。




