表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

空気嫁

作者: マシター

私は今さっき大事なものを失った。

それは、金や高価な芸術品などではない。

大事なもの、それは形ないものだ。

形ないもの、それは愛や恋心などではない。

私は2時間もの間、ビニールを抱いた。

愛や恋心があればビニールを2時間抱くなどできることではない。

そして気づいた。

全てが終わった後に、気づいた。

私は私という人間として大事なものを失った。

それが何かは、分からない。

だが、私は確かに失ったのだ。

ただただ、その事実に漠然(ぼうばく)としている。




20分もたった(のち)だろうか、私は鏡を見た。

2時間前の自分とは思えないくらいに、ぐったりと疲れた顔をしていた。

汚く汗ばんだ油っぽい顔がよく見えた。

その瞬間だった。

私は泣いた。

何故かは分からない。

涙が止まらないのだ。

この時私は、何故涙が溢れてくるのか、考え、悟った。

ビニールに2時間もの時間を奪われ疲れ切った後に、宇宙の真理へと辿り着き、客観的に自身(じしん)を見たのだ。

湧き上がる感情。

愛?怒り?悲しみ?

どれでもなかった。

それは自身への(あわ)れみだった。



それに気づく頃には、私は泣き止み片付けをしていた。

はじめにビニールに入れられていた私の息はもう残っていなかった。

初めてだった。

初めての行為で、初めての行為中に、三箇所から私の息が()れた。

ビニールはシュー...という音を立てて小さくなっていった。

抱き寄せるほど、それは小さく、(はかな)く、私を現実に叩きつけた。

差し込まれていたシリコンを抜き取り風呂場へ叩きつけた。

子供達(せいし)と混ざり合った潤滑液(ろーしょん)が足に跳ね返った。

風呂場に転がる女だったものを見て、私はまた泣いた。

そのあと泣き止んで全部捨てました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ