定期報告書No.58 (1)
▼契約書一部抜粋▼
【異世界間移動に関する事項】
1つ。
甲は乙の異世界間移動を実現させなければならない
。
1つ。
乙の異世界間移動の到着地点については、必ず人間の生存可能範囲内とする。
なお、この場合の「生存可能」とは、「最低1日以上その場所で過ごしていても、環境要因で死に至ることがないこと」と定義する。
1つ。
乙の異世界間移動の到着地点については、決定権は甲にあり、乙が指定することは出来ない。
乙から甲へ希望を伝える等は自由だが、どんな手段であれ、乙から到着地点に関する直接干渉を行ってはならない。
1つ。
…………、…………、……
拝啓
残暑厳しく涼しい季節が待ち遠しい今日この頃、そちらは如何お過ごしでしょうか?
こちらはようやく今の棲家にも慣れ、暑さに対する耐性も少しは養えたように思えます。
ええ、そうです。
此処は今、夏です。
と言うか、一年の大半が夏だそうです。
現在は暦の上では一応残暑に当たりますが、冬は極僅かな期間で、対して寒くもならずあっという間に過ぎ去るのだとか。
秋と春と夏は区別がつかない勢いだそうです。もうそれナイって言えばいいよ。
辛うじて熱帯ではないのが救いでしょうか。
あれ、熱帯って乾いていても熱帯なんでしたっけ?
とりあえず、乾いてます。ぶっちゃけ砂漠です。
それも広大な砂砂漠。
アラビアンです。
日差し強いから肌出してる人少ないけど。
煌びやかに後宮とかあるかなとわくわくしてたら、胡乱げな顔をされました。
曰く、「不誠実だろう」、と。
真っ当すぎて何も言えませんでした。
おかしい。おかしくないけどおかしい。
歴史上もなかったそうですよ。
現在も続く専制君主制の癖にですよ。
世継ぎとか問題になったことないのかよと言ったら、その時は養子をとると。
どうも血筋をあまり重視しないらしいです。
教育や環境の充実性から、基本王族近辺の子供が後を継ぐ確率が高いそうですけど。
養子を取った後で実子が出来たら一応実子のほうが継承権は高いとか。
くそぅ、ハーレム見たかった……!!
おっと、失礼。取り乱しました。
シャーペンと消しゴム欲しいな。じゃなきゃ消せるボールペン。
あー、でもこの木っぽい紙じゃ消せないかな、ボールペン。
つーかやっぱり紙と書くものは支給制にしませんか。いちいち調達するの大変なんですけど。
最初から書き直すの面倒なのでこのまま行っちゃいますね?
さて、では今回の定期報告を始めさせて頂きます。
前回の報告書からこっち、結構色々あって大変だったんですよ。
……まあ、いつものことではありますが。
えー、確か前回此処のことは「融ける、灰になる」くらいしか書けなかったと記憶してますので、来た直後から順を追って記載します――