目覚め、そして別れ
目を開けると、クミが覗き込むように泰智を見ていた。
「……おはよう。」
「あ、はいおはようございます。それでここは?」
「あの城から少し離れた場所だ。もう少し遅れていたら全員巻き込まれてだろうな。」
戦っていた城は見るも無惨に崩れていた。
「そうか。……あれ、俺ってどういう状況なの?クミさんが見えるってことは寝ている状況か?」
泰智は立ち上がろうと手を地面に触ろうとしたら、柔らかい感触があった。見てみると、クミの太股だった。つまり膝枕をしてもらっていた。
「……何かすいません。」
「何故謝る?むしろ私はお前に対して礼が言いたい。」
「何かしましたか?」
「そ、その。今回の件だ。居てくれて助かった。それよりこの後はどうするんだ?」
クミはそっぽを向いてそう言った。照れ隠しなのだろうかその言葉は本当に感謝しているように聞こえた。
「勿論、香奈達を助けにいく。」
「……その前に約束覚えてるか?森の時の約束。」
「え~と、何でしたっけ?」
「……私の目的を手伝ってくれた時お礼をすること。それと二回ほど助けてくれたお礼を。」
「いいよいいよ。そんな対したことはしてないし。」
「私がしたいって言ってるの。」
「分かったよ。それで何をお礼してくれるの?」
それを言った瞬間、泰智はクミに腕を強く引かれ二人の距離がすぐ近くまで接近した。そして、クミは泰智の頬にキスをした。
泰智は直ぐには何をされたのか分からなかったが、徐々に理解し顔が赤くなる。
「な、ななな、何を⁉」
「……何故そこまで動揺するんだ?」
「いやいやいやいや‼こんな俺にそんなことしてはいけない‼貴女が何時か好きな人にでもしなさい‼」
「……好きな人?考えたこともなかったな。まぁ取り敢えずしないことにした。」
「まさかと思いますが、他の人にもそんなことを?」
「いや、お前が初めてだ。」
「……あわ、あわわわ‼」
「……不服だった?」
「素直に喜んで良いのだろうか?うん喜んでおこう。」
「でも……お前にはやるかもな。反応が面白いし。」
「止めときなさい‼っとそれより速く行かないとな。じゃあまた生きてたら会おう‼」
「……ありがとな。」
「意外だな。貴方が他人にそんなことをするなんて。更に本人の前でお礼とは。」
「昔の自分が見たら驚くかもね。」
「で、彼には言ってないけど何故あんなに取り乱していたの?」
「……あの日の事を急に思い出した。いや、あの日からずっと寝ているとそんな夢を見る。夢ではうっすらだったが、あの時ははっきりと見えた。」
「……苦しくなったときは、人に相談するのをおすすめするよ。」
「耳には入れておく。」
クミはその場から立ち去ろうとすると、さっき別れたばかりの泰智が戻ってきた。
「ホロウさん‼この一週間コウモリ見ませんでしたか⁉」
「コウモリ……あー、昨日目障りだったから斬っちゃった。」
「そうですか。じゃあこっからあの元の城の正面から見て右の方角は?」
「東だけど?」
「じゃあ東に行って町とかありますか?あれば徒歩で何日かかりますか?」
「ある、わね。確か四日ほど掛かるわ。」
「うっ、しゃーねー。ありがとうございました。じゃあ二人とも元気に‼」
泰智は風のように現れ消えていった。
「彼ならその悩み、解決してくれるんじゃない?」
「……。」
クミは無言でその場から立ち去った。
「可愛くないわね。……二人が移動に使ってきたあれはどうしよう?」
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