その30
「さて、やりますか。」
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫だって。」
泰智はゆっくりクミに近づく。
「……何の真似?」
「まぁ、そんな警戒するな。」
「(敵がゆっくり近づいてきて警戒しない奴がいると思うか⁉)」
蓮は心の中でそう突っ込んだ。
「……そんなに死に急ぎたいの?」
泰智はクミのすぐ前に立つ。
「いやー、こう見るとお前慎重低いな。」
「……そういって私をその二人の意識をそらそうとしてるの?
そんなことしても無駄だよ。」
クミはそういって泰智に斬りかかろうとする。
その瞬間、泰智は腰に巻いていた薄いパーカーをクミに投げる。
パーカーはクミの顔に当たり一瞬の隙をつくる。
泰智は急いでポケットから煙玉を地面に叩きつける。
「蓮行けるぞ。」
「お前の考えてることを知りたいよ。」
「とっさに出たんだ。
早くしないとあついが逃げるぞ。」
「そ、そうだな。
行くぞ野狐‼」
「気をつけてください。」
「わかってるよ。」
蓮と野狐は階段を急いで降りる。
煙が晴れるとクミは泰智にゆっくり近づいてくる。
「……油断した。
でも、もう油断しない。」
「いいのか?
追いかけなくて。」
「どうせもういなくなるのだから別にいい。」
「それは誰のことかな?」
「偽物。
それと本物。」
「そうですか。」
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