シーン9「再び、トンネルを抜けると……」
シーン9「再び、トンネルを抜けると……」
NFBの他にも、注意が必要なものをファナに教えた。まあ、覚えきれないだろうし、理解できないことは判っている。でも、迂闊に触って欲しくないものもあるわけで……。
たとえば、だ。
助手席の手前には非常弁――倒すと非常ブレーキがかかるレバーが設置されている。
他にも、パンタグラフの操作スイッチや、ATS―Pの切り替えスイッチという、不用意に触るとまずいものがある。
ひととおり説明し終えると、ファナはカチコチに固まっていた。肩を強張らせて縮こまっている。
そんなつもりはなかったのだが――
どうやら、ずいぶんと脅かしてしまったらしい。
「そんなにびびらなくて大丈夫だよ?」
「で、でも触っちゃうかもしれません!」
「わざと動かしたりしなけりゃ、滅多なことはないからさ」
「……そうですか?」
「うん」
背面のNFBなども、不用意に触れてしまわないよう、今は透明なアクリル板で保護されている(昔は剥き出しだったわけだが……)。ともあれ『触れると危ない』とだけ意識していてもらえれば、問題ない。
「わ、わかりました!」
ぎこちなくはあったものの、肩の力を緩めて、ファナは深呼吸した。
すーはー。
●
その後、再びファナに『線路図表』を見せてもらった。
おかげで曲線も危なげなくクリアしていく。
順調だった。
しかし、新しい場所の『線路図表』を見たことで、不安も覚えていた。
線路を進んでいくとトンネルに入った。
前照灯の明かりだけを頼りに進んでいく。
暗闇の先に光る場所が見えてくる。
出口だ。
そして。
「うわ。ホントに海だ……」
トンネルを抜けた先。
海の上を渡る、橋に出た。
窓を開ける。
強く吹きつけてきた風からは、潮のにおいがしていた。
ちょっと仕事が長引きました。
次回更新は、月曜になるかも。