第4話 まだ見ぬ異世界にて。
遅くなりました。
あと数話、主人公出てきません(汗)
はぁはぁ…。
ダダダダダ!!
皆、猛ダッシュが故の息の荒さと我らの足音だけが聞こえる。
きっと、遠目に見れば山肌を黒い絨毯がウネウネと登って行く様に見えるだろう。
我ら黒狼族は本来の姿に戻り、最も速く走る為に【獣型】で走っている。早い話が四つ脚だな。
……最初っからそう言えと言ってくれるな。我らの種族的矜持に関わってくるのだ…。
何故、このように走っているかと?
日が沈むまでに2つ山を越えた先の山の中にある親方様のお屋敷に着かねばならぬからだ。
【ヤツ】は夜にしか動けないからな。その点は少し救いか……。
馬はダメだ。
【ヤツ】に似ているので紛れこまれたら敵を陣中にまんまと入られてはいけない。
親方様のお屋敷が最後の砦なのだから。
なので、親方様からお借りした角笛にて召喚した魔獣・早山羊に足が遅い老人・子供と人族の友人とその家族には乗ってもらい、荷物と共に先に行ってもらった。
早山羊は…馬より少し小さいが骨格が馬よりの山羊のような魔獣だ。
私達と一緒に走ってもらっては、群れから遅れて【ヤツ】の餌食になるのは目に見えてる。
(親方様のお屋敷まであと少し……。夕暮れまで残り時間もわずか。間に合うか!?)
空をチラリと見、一瞬浮かんだ不安を打ち消すように左右にブンブンと二回顔を振ると自他共に気合いを入れる為に
ウォンウォン!
(あともう少しだ!もう少しだから皆、頑張ってくれ!)
ほんの少しだが落ちてきたスピードをまた戻し、走る。
頼む、間に合ってくれ!!
───………4ヶ月前。
私はアスター。黒狼族だ。
まぁ、擬人化できる黒い狼が二本足でも歩ける獣人とでも考えといていいと思う。
ロアール国カルスティート。今はそこに住んでいる。
カルスティートは北に山々を、南に湖を抱く街だ。
旅人が立ち寄る中間地点として築かれたところだ。
そしてここ数十年で新たな魔術の発見により、発展している街だ。
この街の発展に貢献した人物こそが、我が主のスズ・アルキオナ様だ。
どこからかフワリとやってきて街に住み、黒髪に二重でクリクリっとしたラベンダー色の目を持つ変わった服を着た少女を当時の領主様が気に入り、養子にしたようだ。
領主一族に入っても驕らず・偉ぶらずと出来た御方だ。
そんな方に我ら黒狼族を拾っていただけたのにはどんなに感謝しても足りぬ…。
そんな貴女だからこそ我らは忠誠を誓い、我は粉骨砕身で貴女の手足となろう。
…と、言ったら貴女は首を振り、『…身体壊したらメッ。適度が大事。無理せずお願い。』と諭されてしまいましたが。
そんなある日、スズ様は我が輩に言ったのだ。
『最近、街、変わったこと起きてる。』
と。
それが我らが【ヤツ】を知るきっかけになるのだった。
最後まで読んで下さってありがとうございます!
やっと千文字達成!