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僕は家庭教師  作者: 宅湾
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第二話

「学長室は、学生課・事務棟の3階、つまりこの学生センターの上にありますね。階段で登って頂いてそのまま廊下を北へ歩いた突き当りです」

 学長室の場所なんて下手すると卒業まで知らない人が殆どであろう。学生センターの若い事務員の案内を頼りに、言われるままに階段を登り三階へ上がり、廊下を歩くと難なく学長室とプレートが掲げられた部屋の前へ辿り着くことが出来た。

 ふぅと息を整え、襟元を正したりする。この学校で一番偉い人に会うんだと思うと、自然に身なりを整えてしまう。その場しのぎの身づくろいを終えて、ノックをする。

「どうぞ」

 深い声が部屋の中から聞こえて来る。ポケットから取り出したスマホのマナーモードになっていることを確かめた上で、ちらりと確認した時刻は15:50分ちょうど。早く来すぎてもそれはそれで迷惑だろうと考えた上での10分前到着。

 何を怒られるか知らないが、これ以上怒られる原因を作るわけには行かないと、細心の注意をしながらいろいろ考えてきたのだ。

「失礼します」

 他の部屋とは格が違う重いドアを開けて、部屋に足を踏み入れる。学長の部屋、凄い緊張感だ。

 できればもう二度とこの部屋にはお世話になりたくないな。そんなことが頭をチラついた。


「いきなり呼び出してすまんね ○○君」

 あぁ当たり前だけどこの人は僕の名前を知っているんだ。僕はこの人の名前を知らないけれど。

 シャツにスラックスに白衣、いわゆる大学の偉い人のイメージ像というよりかは、医師のイメージに近い姿である。

 部屋に入り促されるままに、ソファーに座ると学長は向かい合うように置かれたソファーに座り切り出した。

「今日は君にアルバイトを紹介したくてね」

 

 ?


 ?、まずそれだ。頭の中では一次聴覚野はキチンと働いて、音を聞き取っている。ただその情報を受け取る大脳新皮質で混乱が生じている。怒られるわけじゃないのか。という安心も吹っ飛ぶ衝撃の謎展開。

 なぜ一介の学生である僕が面識もない学長からいきなりアルバイトを紹介されなければいけないのだろう? まぁタイミングとしては求職中の僕にとってありがたい話ではあるのだけれど。


「ど、どんなアルバイトなんですか?」

 本当に一番聞きたいことは何故か訊けなかった。

「家庭教師だよ、週に1、2回程度。中学3年生の子の面倒を見てあげて欲しい」

 家庭教師。うちの大学の医学部ではポピュラーなアルバイトである。まわりでも家庭教師のアルバイトをしている友人を何人か知っている。

「家庭教師ですか……大学は普段からこうやって斡旋してくれるんですか?」

 続いて『どうして僕に?』とは訊けなかった。

「うちの大学の入学試験の時、僕が君を面接をしたことを覚えているかな?」

 うちの大学の入学試験は筆記試験とは別に面接試験も課している。これは筆記試験の得点には影響しないが、面接試験で医療者、研究者としての人格に問題アリとされた場合は問答無用に不合格となるのだ。これはうちの大学だけでなく、大抵の大学では面接試験が課されていると思う。

 ちなみに自分の大学以外の入学試験要項に詳しい。これは医学部志望の学生あるあるの一つである。

 で、僕の場合、面接試験だけで不合格にされうるのだからそりゃあもう緊張したのを覚えている。何年に一度かは圧迫面接も実施している噂なんてものもあったし。

「すいません、覚えていません」

 そもそもどんな質問をされたかも、殆ど覚えていないのだ。試験官の顔なんて覚えている訳がない。

「そうか、実は今回家庭教師を依頼してきたのは私の大学時代の友人でね、今回のアルバイトに求められる資質を考えると君が適任だろうと思い当たり、学長権限で君に連絡したんだよ」

「は、はぁ……そうですか……」

 資質、一体何を認められたのだろう。

「で、どうだろう? やってくれるかね?」

 あまり気乗りはしない……。資質を見込んでといっても僕のどこが見込まれたのかもわからないし。

「ちなみに時給は5000円。交通費も出るよ」

「やります」

 食い気味で即答してしまった。破格の時給に素晴らしい待遇。迷っている暇なんて無かった。

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