夢と私
「本には様々な事柄が記されている。哲学・歴史・科学・技術・産業・芸術・言語・物語―――実に様々なジャンルに分けられこの世界の至る所に存在している。どのような本でも知識を得るなら読んで損なことはない。また、古い本―――古書と呼ばれる本には不思議な力を宿すものもある。古書の中には禁書と言って読むことを禁じられ封印されたものも何冊か存在するが我ら一族はその力を管理し、行使する力を持った特別な存在だ。その力は、使う者によって善にも悪にもなる。どう使うかは使用者次第だが、悪として使うならそれ相応の覚悟と能力が必要だと考えておくといい。どのように使おうとそれは自由、責任はすべて使用者本人が背負うそれが我が一族唯一と言っていい規則―――決まり事だな。」
私は、祖父のその言葉を何度も何度も頭の中で反芻する。
自分という存在にその言葉を刻み付け、決して忘れないように…
「―――うん。わかった。」
私の答えを聞いて祖父は満足そうに頷き、頭をなでる。
「忘れるな。―――よ。」
祖父のその言葉を聞いた瞬間、私は、唐突に理解する。
あぁ、これは、夢だ。と―――
祖父は、私の名を呼んだはずなのに聞こえない。
夢の中の幼い私は、夢が夢だと気づいたとたん現実に引き戻される―――
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「はぁ…」
夢から覚め、私はひとつ大きなため息をつく。
なんだっていまさらあんな夢を見るのか…
布団に丸まり私は、夢での出来事を反芻する。
忘れるなということだろうか。
そんな心配は不要なのに…
忘れたくても、忘れられないのに…
できることならば、忘れてしまいたい。
そう思う日々を過ごしているのに…
それとも、足りないのだろうか…
私が犯した過ち―――罪には到底足りることはないと伝えたかったのか…
もしそうなのだとしたら、それこそ不要だ。
私は、きっと彼らが思っている以上に償いには足りないことを知っている。届かないことを知っている。
許されないことを―――知っている。
「はぁ…」
(ため息つくと幸せが逃げちゃうんだよ!)
そんなあの子の声が聞こえた気がした―――
未熟者ですが読んでいただけると嬉しいです。