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気ままに生きる放浪記  作者: なるぅ
序章 異世界 クード
2/7

見知らぬ砂浜

 海辺で一人の青年が目を瞑りながら仰向けになり手足をバタバタさせて暴れていた。いや、暴れるだけではなく大声で叫んでもいた。

彼の名はユウ、一応この物語の主人公である。

 

 「うわぁあああああああ、まだ死にたくねぇよぉおお!!!まだまだ俺にはやりたい事があるんだ!!タバコのカートンは残ってるし、新作の餌木もまだ試せてねぇよ!!」


 心底どうでもいい内容である。ドラマや映画なら、残した恋人がいるとか両親や友達に何もしてあげてない事を悔いているはずだ。それらが無いとしても彼女を作った事がまだ無いのが心残りやら、キスした事が無い事を後悔している場面だ。ありふれた趣味や嗜好品に興味が行く事から彼の歩んで来た人生というものが分かる。


 「神さまぁあああ…って…ん?俺溺れてねぇじゃん…ハハハ」


 砂浜で約3分間眼をつぶって叫びながら暴れていたユウは、ようやく眼を開き、溺れていないのにもかかわらず、砂浜で暴れていた自分に対しての恥ずかしさで顔を真っ赤に染め上げていた。それを、乾いた笑いで誤魔化しながら周りを キョロキョロ と見渡し目撃者がいないのを確認して、ホッと安心した。


 「(確か、俺って津波に飲まれてたよな…それにここってどう見ても釣りしてた防波堤じゃ無いな、海岸だし、後ろには森じゃねぇか。もしかして死後の世界か?いや、手を握っても手の感覚はあるし、脈だってある。じゃあ、ここはどこだ?)」

 

 ユウは、自分を死んでない事がわかり、幾分か落ち着いた事で冷静になった。

右手を本気で握りしめ、若干の痛みがあるのを確認してから、左手で自分の脈を測ったが、ちゃんと脈はあると確認する。

 周りを見渡すと、そこには地平線が見える海、そして後ろには生い茂る広葉樹林があった。


 「(まぁ、何があったか知らんが命は助かった訳だ。ここが何処かは、通りすがった人にでも聞けば大丈夫だろ。よく見たらイカも多そうな絶好のポイントだし、エギング再開だ!!)」


 ユウは、考える事を諦めた。

 

 楽天的な答えを見つけ、ユウと一緒に津波に運ばれた釣り道具一式とキャンプ道具セットが括り付けられたバックパックの近くに転がる折りたたみの椅子とエギング用の釣り竿を拾う。折りたたみ椅子を立て直し、座ると同時にユウは、イカ釣りを開始した。


_____________

_______

___


 「ぁ゛ー、今日もいい天気だねぇ」


 そのフレーズが気に入ったのか、同じセリフを再度使うユウであった。タバコを咥え、煙を吐きながら、左手に持った竿にシャクリ(釣り竿を細かく動かし、餌木を本物の魚の様に動かす事)をいれる。


 「ボチボチ釣れるかーなっと、よっ、きたっ!!」

  

 釣り竿の先端が大きく揺れる。


 「おー、この食いつきはでかいぞ!!」


 久々に大物の感触を味わったユウは、誕生日プレゼントを貰った子供の様な笑みを浮かべ、食いついた獲物と格闘を始めた。


 「おらぁあああああああ!!!!」

 

 大声を出し、全身全霊で釣り竿を引っ張る


 「釣れた釣れた…って…ぇー、何これ…怖い…」

 

 勢いよく海面から飛び出し、地面に叩きつけられた50cm程の生き物。それを見たユウは、笑顔から一転して、何とも言えない表情に変わる。

釣れた生き物は、イカの様には見えるが、おかしい点がいくつかあった。まずは、色だ。通常のイカの色である赤色が少し入った白色ではなく全体的に原色に近い黄色であり、淡い色を好む日本人から見たら、ちょっと引いてしまうレベルであった。


 「まぁ色は百歩譲るとして、足多すぎるだろ…」

 

 もうひとつのイカ?のおかしい点は、足の数であった。およそ100本ある。生きているイカを見たことが無い人でも、一目で『えっ、これイカじゃない』とわかるレベルだ。


 「一応イカの新種かもしれんし、最近突然変異とか流行ってるしな。とりあえず血抜きだけでもしとくか」


 よくわからない理由で自分を納得させたユウは、クーラーボックスの横に置いていた包丁を手に取り、それをイカ?の眉間に突き刺した。初めはビチビチと暴れていたイカ?だが、次第に動きが鈍ってゆき、最後には動かなくなって死んだ。


 「クーラーボックスには入るサイズじゃねぇな、こんな体に悪い色したイカなんか食おうとも思わんし、どうするかねぇ」

 

 新種のイカのような生物の対象に困っていたが、


 「なんか出てきたぞ」


 死んだイカ?から青い火の玉のようなものがフワフワと浮かび、宙に浮かんでいた。ユウは、右手に持っていた包丁を地面に落とし、驚きながらその火の玉を見つめている。


 「(これって、もしかしてあれか。WAGで言うソウルか?

  っていうことはここはWAGの世界?

  でも海に隣接するフィールドは無かったよな

  そもそも魂が見えるって事は俺の軍神は『魂の収集家(ソウルコレクター)』で確定かよ)」


 ユウは、火の玉を見ながら、怪訝な表情で考え込む。彼は、VRMORPG,WAGで見慣れた魂であったので、その火の玉がイカもどき?の魂だと瞬時に理解したのだ。


 誰でも生物の魂を見る事が出来る訳ではない。何故ユウが魂を見る事ができたのかというと、彼が宿す軍神が『魂の収集家(ソウルコレクター)』であったからである。その名の通り、魂を司る軍神であり、魂を扱う事に関連したスキルを覚える。

魂を扱う事を可能にする第一スキル「魂収集(コレクトソウルズ)」、これを取得する事で、魂を視覚化し、直に触れ、吸収が可能となる。


 「(んー、ここがWAGだとしても、釣りはできてもイカなんか存在しなかったしなぁ。風もあるし、砂を踏む感触もあるから現実って感じもするな・・・謎だ。)」


 ユウは、首をかしげ、しばらく考えていた。


 「(とりあえず魂は回収しとくか)」


 現状では答えは出しかねる事を理解したユウは、眼の前でフワフワ浮いているイカ?の魂に手を掲げた。すると、イカ?の魂はユウの右手に吸いこまれるようにして手のひらに取り込まれた。


 「(魂のカウントが1になったな。ちゃんと取り込まれた所を見ると、やっぱWAGの世界かもしれねぇな)」


 困った表情をしながら、地面に落した包丁を拾い、血と着いた砂を海水で落としてからカバンの中にそれを直した。

これからどうするか迷っているユウだったが、ふと延々と続く砂浜の先を見ると、100mほど先に女性が4人の男に追われる形で走っているのを眼に止めた。


 「でたー、でたよでたよ。お出ましだよ。海辺で走って『捕まえれるものなら私を捕まえてみなさい、うふふ♪』『まてよ~、よ~し頑張って捕まえてやる~♪』ってやってんのか。ドラマの見過ぎだろ。何考えて生きてんだ。」


 心底嫌そうな顔をしたユウは、ストレスが溜まったのか、穿いてある緑色のカーゴパンツからタバコを取り出し、タバコを吸い始めた。

 

 「一応ここが何処か知りたいし、他に人もいねぇから、頭の中が花畑の連中に聞きに行くか」


 そうぼやきながら、ゆっくりした足取りで、こちらに向かって走って来る女1人、男4人組にテクテクとユウはタバコを吸いながら歩き始めた。


4/16 軍神名をソウルリーパーからソウルコレクターに変更。

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