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桜ノ雨

青く晴れた空~白紙の答辞2

あー

綺麗な青い空


日課の発生練習をしながら思う。


振られるなら、雨の日よりも曇りの日よりも晴れの日がいい。


今日みたいに綺麗な青い空の日がいい。



*♪*



今日できっと制服を着るのは最後。

そんな今日は、卒業式から10日経っている。


私び出された最後の宿題。

それは白紙の答辞を文章に起こすこと。

そして、奉書紙に書くこと。


卒業式で白紙の答辞を読む振りをしていたことは、知られてはいけなかった。

それは、白紙でもokを出してくれた先生たちのため。



*♪*



「失礼します」



ドアをノックし、国語準備室に入る。



「あら、守崎?例の宿題?」



「はい。遅くなりましたが…

あ、佐伯先生レコーダーありがとうございました」



「いいのよ。

なかなかよかったじゃない、答辞」



「ありがとうございます。

でも、レコーダー借りて正解でした。

何言ったか全然覚えてなくて…」



佐伯先生はニヤリと笑う。



「舞台慣れしている守崎ですら、そうなら今後は白紙は無しかなー」



私は思わず苦笑いする。



「と言うか…

希望者あまりいない気がします。」



「確かにね。

緒形くん今事務室に行ったけどすぐ帰って来ると思う。

だから、長尾先生のお茶でも飲んで待ってなさい」



そう言うと佐伯先生は、返事も聞かずパソコンに向かい作業を始めた。



「はい、どうぞ。」



お礼を言いつつ受け取ったお茶を入れてくれたのは、長尾先生だ。

この先生の入れてくれたお茶は本当に美味しい。



「にしても、守崎さん…

ちゃんと制服なのね」



「え?あ、はい。

一応宿題の提出なんで」



「そうか…そうね…んー

まぁ、ゆっくりしてて?」



なんだろう?その歯切れの悪さは?

考えても分からないので、考えを放棄して窓の外を眺める。


青く晴れていた空は、ほんのり朱に染まり始めてた。



「ただいま帰りましたー」



待ち人の緒形センセーが部屋に帰ってきた。



「「「おかえり」」なさい」



この国語準備室は、本の虫が多く各々の机もタワーがいくつか建築されているので、出入りの時は声をかけるようにしてあるらしい。

ほかの準備室では聞かないから、特殊なんだと思う。



「緒形クン、待ち人。」



佐伯先生は、素っ気なく伝える。



「ありがとうござ…って、守崎?

おまえ卒業式から何日経ってると…」



「あたし、これから部活の指導行ってくるわー」



「私は、印刷をしに行ってきますね。」



「「しばらく帰って来ないから」ね」



口々に佐伯先生と長尾先生が言い、部屋出て行くのを呆気にとられながら二人でみてた。



ぱたん



ドアが締まり二人きり。


緊張する空間になってしまったよ。

えーと、と、とりあえず



「センセー

宿題持って来ました。

わがままを聞いてくれて、ありがとうございます。」



奉書紙に書いた答辞と残った奉書紙、レコーダーを渡す。



「レコーダー佐伯先生に直接返さなかたのか?」



「確認するかなーと思って。」



「今?ここで?」



「…っ

出来れば、私のいないところで。」



「で?

なんで今日なんだ?」



「えっと…

空が綺麗だったからです。」



「確かに最近天気悪かったが、遅いっっ!

ホワイトデーが…」



「え?ホワイトデー?」



緒形センセーが しまった って顔をした。



「気にするな。」



と言われてしまえば、それ以上は聞くに聞けず。


私と緒形センセーを繋ぐものは何もなくなった。

ここで帰れば、この想いは行き場を無くしてしまう。

叶わなくていい。

この想いの決着をつけたい。



「センセー、3年間ありがとうございました。

私センセーのことが…」



きーんこーんかーんこーん



このタイミング!?でチャイムが鳴り響く。


振られると分かって二度目に挑戦する気持ちはない。



「守崎、これから暇か?」



聞かれる意図は分からないが、是。と応える。



「今勤務時間終わったから、小腹を満たしに行くんだが一緒に行くか?

遅くなったが、バレンタインのお返しだ。」



どうやら執行猶予が延びたらしい。



「センセーのおごり?

あのねー、sweet box(地元で有名なお菓子屋)に行きたい♪」



「ばーか。

近場だと不味いだろ…

オレをクビにする気か?

とりあえず、制服着替えないとな

車で家に連れってたるから、ちょっと待ってろ。」



何か期待しそうだ。

ううん。

期待してる。

私の思い違いでないといい。


でも車乗る前に聞いておかなきゃ。



「センセー?

私センセーのことが…」



「ストップ。

おまえは、オレをクビにしたいのか?

その続きは、制服脱いでからだ。」



帰り支度をしているセンセーに素っ気なく言われたけど…

これは期待していいよね?



「守崎ー、行くぞー?」



空は、朱く紅く染まっていた。

きっと明日も青く晴れわたるはず。

そう予感させる空だった。

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