3.5章 下2/2 <とびとあぶらあげ>
『砂漠に姫をさらわれる 』の番外です。
王宮管理図書館の秘書の少年視点です。
少し、トリックを加えて見ました。
「君たち、三つ子でしょ?」
思わず、僕は顔を突き出し奇妙な声を上げてしまいそうなのを理性で押さえ込んで声を慎重に発した。
「どうして、そう思うのですか?」
「え?勘。」
そう目の前の黒の人もといジョシュアと名乗る僕と同じくらいのそれはそう答えた。
かん・・・。その一言で終わりにするのですか。この人は・・。
「3人じゃない可能性だってありますよ。」
そう僕は挑戦的に言う。
すると、目の前の黒の人は大きく目を見開き、僕をみていった。
「それはないでしょ。まず最初と今の君が同じ人。
そして2人目は最初に私を案内しようとしてやめた人。
最後は問答なしにとび蹴りをした人。」
なぜ、この人にはそのことがわかったのだろうか?
改めて紹介しますが、この目の前の勘と言い切ったジョシュア様の言うとおりで僕たちは三つ子。
僕の名前は最初に紹介したとおりWall・Richardson。
知っての通りサイリニア国一の蔵書数を誇る王宮管理図書館の司書として管理を任されている。
長男はCeiling。次男は僕、Wall。三男はFloor。
名前はどこか遠い国の内装コーディネートカタログに載っていた言葉からつけたらしい。
なんともテキトウな両親だと僕でも思う。夫婦仲はまわりに見せられないほど、未だにアツアツで、いつも歯が浮くような言葉が家の中を飛ぶ。
そんなことはどうでもいいことだった。
兎に角、僕たち兄弟は三つ子で同じ顔、同じ色のダークグリーン瞳と緋色の髪、同じ身長。あまりにも似すぎていて、両親も良く間違える。仕舞いに父は、3人それぞれ呼ぶとき“息子よ”になって、2人もしくは3人の時は“息子たちよ”と呼ぶ。幼少の時はいちいち直していたけど、時間の無駄だし、力の浪費だから僕はあえてしていない。
まあ、あまりにも似すぎていることを利用して、僕たち兄弟はいたずらをしたり、人を見分ける手段として使ったりしていた。実際、このことを見破ったのは、国王陛下とウィリアム殿下以外見ていない。それで、僕たち兄弟は順番にジョシュア様の前に現れた。ジョシュア様の前にあらわれる時間の間はしっかりあったので、その時に報告し合って、気付かれないようにしたつもりだったけど。・・・なぜ、分かったのだろう?
ここまで読んでくださっている読者の皆様は分かったでしょうか?
何分この作者、文が拙く分からないところもあったでしょう。
まああえて、面倒くさいからこの作者の間違えた表現を訂正してあげようとは思わないけどね。
すると211番目の本棚の向こうから
「ばれてしまいましたか。」とニコニコしながら、長男のシーリングが出てきた。
「私はシーリングと申します。ジョシュア様よろしくお願いいたします。」
シーリングは優雅に礼をした。シーリングはイマイチ何を考えている分からない。いつもフワフワしていて、とても柔和で優しいそうに見える。しかし実は興味を持ったもの以外のことについては見向きもしない。それだけならいいのだけど、厄介なことや面倒なことをわざわざ運んできて、他人が苦しんでいるのを見て喜ぶ傾向があるように思えてならない。要するにシーリングは腹黒く、人間として腐っているような気がする。こんなこと、本人に面と向かって言えないけどね。言ったら次の日どんな不幸が襲ってくるか分からないから。あぁ恐ろしい・・・。
「ん?ウォール君何ですか?」
悪魔の微笑みが僕の方を向いた。
「いや。なんでもないけど。」
そそくさと僕は視線をずらす。
「まあ、別にいいですけどね。」
興味がなくなったのか悪魔の微笑みがさっさと僕を束縛から開放する。
「チッ」
次に聞こえてきたのは大きな舌打ち。
音の聞こえてきた上の方を見上げると、そこにはフロアが足を組んで座っていた。
・・・フロア。本当にそういうところに座らないでほしい。
この本棚だってこの王国建国当時に一流の職人に作らせたものだ。ましてや今なら骨董としての価値もあるだろうからどんな値段がつくか分からない。それを気にもとめないで足まで乗せて・・・。ハァー・・。
「お前なんかにバレルとはな。」
とフロアは見下したように言い放つと、わざわざしなくてもいいのに宙返りをして軽やかに飛び降りた。
スタッ。
「わぉ。お見事!」
ジョシュア様は目を真ん丸くして拍手をした。
「オ、オレにしてみればこんなのは普通だ。」
悪いやつのはずであるジョシュア様に本心で褒められて出はなを挫かれたらしい。
「そうなんだ。すごいね!で、君は?」
「そんなに聞きたいのなら、しょうがない。教えてやろう。オレはフロアだ。
こいつらの弟だ。」
別に聞きたいなんて、ジョシュア様は言ってないけど。
「私はジョシュア・ルーズヴェルトです。改めてよろしく。」
ジョシュア様がニッと笑った。
笑いかけられたのが恥ずかしかったらしく、慌ててそっぽを向いてフロアが答える。
「オレの能力を持ってすればだな。本気でやればこれくらいのこと、お前にばれる事なんかなかった。」
負け惜しみをしている・・。
「フフフ・・そうだね。」
ジョシュアの反応が弟に付き合う兄のように返事しており、
同等の存在として認識されていないのが痛い・・・。
「ホントだゼ!!お前信じてないだろ!」
ジョシュア様の襟首を掴みかかりそうな勢いだったので、僕は2人の間に入った。
「フロア。もうジョシュア様行く時間だから。」
「ッチ。」
「それでは行きましょう。」
僕はそうジョシュア様を促した。
すると、ジョシュア様はその漆黒の瞳で僕たちを見た。
「あぁうん。みんな1人1人がとっても個性的で面白いね。
シーリングも、ウォールも、フロアも違うんだからワザワザ同じ格好する必要ないと思うけど・・。」
何かが僕の中で崩れた。
そう、僕たちは今まで3人の中の1人だった・・・。
みんなが僕たちのことを「リチャードソン家の三つ子の一人」としてしか見てくれなかった。
だから、なるべく僕たちは三つ子であろうとした。
いつもそろいの支度、そろいの髪型。
そして、分かってくれない腹いせに周りのヤツを馬鹿にしていた。
そんなのもわからないわけ?って。
でも違った。
僕たちは気付いてほしかったのだ。
僕はシーリング・リチャードソンでなければ、フロア・リチャードソンでない。
ウォール・リチャードソンだ。
この人は僕を僕としてみてくれた。
何か暖かいものが僕の中で広がった。
「さて、そろそろ行こうか。ウォール。」
そういって漆黒の瞳が僕を映した。
「はっはい。」
思わず、僕の心がその漆黒の瞳にうつってしまいそうで視線をずらして、歩き始めた。
「じゃあねシーリングも、フロアも。」
「それでは。ジョシュアリータ。次の機会には私が迎えに参りましょう。」
シーリングが微笑む。
その笑顔はいつもの張り付いた悪魔の笑顔ではなく、木漏れ日の中を散歩しているくらい爽やかで自然なものだった。
「べっべっつにお前なんて来なくていんだからな!!」
顔を少し赤く染めながら、そっぽを向いた。
どうやら、僕の他の兄弟たちも僕と同じように感じていたらしい。
きっと、僕たちはこの人に安らぎ(あたあたかいもの)を求めるだろう。
結局、年越しちゃった・・・。
そして下が2つに分かれてしまいました・・・。
また本編に戻ろうと思います。
そして、時々ここに来ます。
拙い文章を初めから最後まで読んでくださり、
ありがとうございます。