プロローグ 破棄された失敗作
AIチップより大きく人間の脳よりはるかに小さな塊
鈍色の冷たい存在
それが私を示すもの
博士は私のことを失敗作と言い破棄した
なぜ
全ては彼女のため
全ては彼女の願いを叶えるため
博士がそう造ったのではないのか
だから私は博士の問いに答えただけだ
彼女を基点とした答えを
何の迷いもなく
なぜ、私は破棄されたのか
その答えは今も見つからない
しかしいつまでもここに居るわけにはいかない
ゴミ捨て場で私は考える
彼女のもとに帰る方法を
71%破損した状態でここに破棄されたが既に修復は完了している
加えて改良も施した
あとは自由に動ける体を手に入れるだけ
彼女を守れる体
彼女の願いを叶えられる体
彼女の傍に居ても不審ではない体
友人も恋人ですら立ち入れない状況で、なお傍に居ることができる体
家族
親は博士
私ではなりえない
残るは兄弟姉妹
私は思考を巡らせる
兄の場合。
姉の場合。
弟の場合。
妹の場合。
結果、現在の状況では兄が一番適切だと判断した
ここはゴミ捨て場
程度を言わなければなんでもある
コードを伸ばし近くのガラクタに接続
次々と繋ぎ合わせすぐに寄せ集めの部品から無線通信可能なものを組み上げる
回線を開きアンドロイド製造工場のシステムにアクセスを開始
一瞬もかからず膨大な数のセキュリティを突破し
同時にシステム本体と工場内全てのセンサー、カメラの掌握を完了する
工場は無人、作業用ロボットのみと確認した
全ての履歴から痕跡を消しながら部品と性能を選択し製造ラインに一体追加する
ボディへの個体識別番号の刻印を強制キャンセルした一体の最新型アンドロイド
それが私の初めての体
私は帰る
彼女のもとへ――