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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者召喚に巻き込まれたけど、スキル【お絵かき】で無双する。

作者: 語黎蒼

「よくぞ参られた!勇者たちよ!」


 王冠を頭に乗せ、煌びやかな赤いマントを付けた絵に描いたような王様が両手を広げ俺たちを歓迎する。


「さあ、歓迎しよう!我がオオズァッパ王国に!」

「デテケェ王よ、お待ち下さい!召喚に予定していた人数よりも一人多いようです」

「なに?うむ、オオヨ大臣の言う通り確かに一人多いようだ……」


 王様は周りにいる俺を見たあと、学生服を着た男女を見る。


「むぅ……つまり一人は巻き込まれたということか」

「……」


 巻き込まれた?……最近のラノベでよくある巻き込まれ系というやつか?

 たしかステータス見たら能力が弱くて、職業が使えないのが追放されるんだよな。


「王よ、巻き込まれたのが誰なのかはステータスを見れば直ぐに分かるかと……」


 まさか追放されるの俺とかじゃないよな。ラノベとかだと、ここでステータスを見て分かるんだよな。


「うむ、そうだな。召喚された勇者たちよ、この世界に召喚した目的を話す前に先ずはお主らの中にいる勇者ではない者をハッキリとさせておきたい」

「では召喚されし勇者たちよ『ステータス』と念じてみてくれ」


 キタキタキタ……!これで俺の命運が全て決まる。

 俺の周りの四人が「おぉ!」とか「なにこれ……?」など驚き始める。

 俺も心の中でステータスと念じてみる。


 御恵描人(おえかくと)20歳

 職業 画人

 能力 お絵かき

【好きなところに絵を描くことができる】


 ええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇっぇぇ!!!

 画人?!がじん?!ガジン?!ってなんだ?!俺の人生で聞いたことない単語なんだけど!画家みたいなものか?!

 待て待て待て!!画家なんて戦闘に一切役に立たないじゃん!!絶対に追放されるの俺じゃん!


「僕の職業は勇者でした」

「うむ」


 そんな慌てている俺の周りでは、誠実そうな好青年が職業を発表し始めた。


「俺は格闘家だ」

「うむ」


 額に冷や汗が大量に流れ出す。

 そもそも画家の俺より下の職業なんて存在するのか?!


「私は聖女でした」

「うむ」


 最後はメガネをかけたオドオドとした女の子だった。

 勇者、格闘家、聖女ときた。あと残るは盗賊とかのサブみたいな職業しか残っていない。

 ワンチャン俺が残れる可能性があるかもしれない。


「わ、私は勇者markⅡでした……」


 ええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇっぇぇ!!!

 少女は顔を赤くして答える。

 いやマークツーってなんだ?!そんなこと本当に書いてある?!嘘だろ絶対!一回俺に見せてみろ!

 そもそもなんだmarkⅡって!アイアンマン以外で聞いたことねえよ!


「勇者マークツー……おおおぉ!このオオズァッパ王国は安泰じゃああああ!!」


 どこが安泰なんだよ!マークツーって意味伝わるのかよ!

 周りに立っていた大臣や兵士が拍手をする。

 しばらく拍手が続き、ピタッと静まり返ると王様は思い出したように俺を見つめる。


「すまなかったな、してお主の職業は?」

「俺は……」


 どうせ元の世界には帰れないのが鉄板の流れだ。

 ここで画家……いや画人なんて言えば、追放されるに決まっている。なら嘘を吐いてでも残らなければならない。


「ゆ、勇者プロトタイプです」


 あえて下を言ってみた。markⅢと言おうか迷ったが、それで期待され過ぎるのも困る。

 場が静まり返った。王様と大臣がコソコソと離し始めた。


「勇者は二人で充分じゃ、此奴をつまみ出せ」


 兵士二人が俺の両腕を掴んで持ち上げると城の外へと投げ出される。


「一ヶ月分の金と数日分の服だ。有り難く受け取れ」


 俺に金の入った汚い袋と汚い布を投げ捨てる。


「くそ!やっぱり勇者マークスリーって言えば良かった!」


 控えめな性格が裏目に出た!

 今さら悔やんでも仕方ない。ポジティブに考えよう。

 こういう時は先ず冒険者ギルドだで日銭を稼いで、美少女と出会う。


「すみません、冒険者ギルドってどこですか?」

「冒険者ギルド?この先を真っ直ぐ行ったらカレー屋があるから、そのカレー屋を右に曲がってしばらく行くと寿司屋が見える、その隣に冒険者ギルドがある」

「……ありがとうございます」


 日本にあった飲食店が結構ある。異世界感が無くて少しガッカリだ。

 説明された通りに道を進んで行くと大きな建物に到着した。

 中に入ると筋肉隆々の半裸や薄着の男たちが酒を呑みながら話していた。


「冒険者になりたいんですが」


 カウンターに居た20代ほどの可愛らしい女性に話し掛ける。


「名前と職業は?」


 受付嬢は無愛想に質問してくる。


「カクトです。職業は……画家です」

「画家?正気ですか?冒険者になる人は基本……いえ、アナタも色々あるのね」


 受付嬢は紙にスラスラと書いていき、金属のプレートを机に置く。


「銀貨5枚になります」

「これで」


 王様からもらった手切れ金の入った袋から金貨を一枚取り出す。


「お釣りです」


 数十枚になった銀貨を受け取りポケットに突っ込む。


「おい待ちな!」


 依頼の紙が貼られている掲示板に行こうとすると、上半身裸の筋骨隆々の男二人に呼び止められた。

 これは冒険者ギルドあるあるの、絡んできた奴を倒して実力を冒険者ギルドに見せつけるイベントだ。


「こっちに来てもらうぜ」


 しかし俺は画人で歯向かう力もないので逆らわず、言う通りに冒険者ギルドの外の路地裏に着いて行く。

 俺の巻き込まれ異世界生活オワタ。


「有り金全部出してもらえるかな?」


 腰に下げた剣を鞘から抜くと、脅すようにそう言う。

 最悪だ。この訳も分からない世界で全財産を失えば俺は生きていけない。

 こういう時って美少女魔法使いか剣士が『こんなところで何をしているのかしら?』とか言って助けてくれるのが相場だが、生憎ここは人の気配が一切ない。


「俺が優しくしている間に渡した方が身のためだぜ?」


 怖えぇ……。この状況で絵でも描いたら許してもらえないだろうか?

 そもそも俺は絵心がないので、絵を描いたところで……あれ?そう考えた時に自分の職業の説明文を思い出す。


「兄貴、少し分からせてやった方が良いんじゃないですか?」

「そうだな」


【好きなところに絵を描くことができる】


「それじゃあ」


 好きなところに?つまり空中にも描けるんじゃないか? 

 俺は試しに手の平に丸を描いてみる。

 丸は黒い筆で描かれたように俺の手の平に存在した。

 そこに継ぎ目を描き足して野球ボールにしてみる。

 下手くそに描かれた野球ボールは、手の上で立体になる。そのボールは硬く重さもある。


「本当に描けた……」

「おら!」


 男が剣を思いき振り下ろそうとしている。

 この可能性に賭けるしかない!俺は夢中で空中に指で絵を描いた。


「な、なんだ?!急に壁が!」


 キイーンっと金属がぶつかる音が鳴ると、男が驚きの声を上げる。


「お、おお……!!」


 上手くいった!ちゃんと俺の思い描いた通りの鉄の盾だ。

 俺の目の前に五角形の簡単に書かれた盾が浮かんでいた。立体になり色も銀色になっている。


「はっ、ははは!」

「妙な魔法使いやがって!ぶっ殺してやる!」


 怯んだ男は再び向かって来ようと剣を構える。

 俺は瞬時に頭を回転させる。俺が描いたものは立体で実現されることは分かった。

 それならばここでアイツの剣よりも強い武器を描かなければいけない。

 大剣?ダメだ重くて俺の腕力では持てそうにない。

 弓矢?ダメだ構えている間に切られそうだ。

 アイツの剣を受け止めても壊れず、反撃ができるような武器……。


「あ……!」


 俺はある武器を思い付く。

 アイツの剣を受け止めて壊れず、むしろ破壊できるような武器。

 小さな長方形を描くと、そこに小さな出っ張りを足す。


「なにをしようが無駄だ!」


 男は剣を俺に向かって再び振り下ろしてくる。


「本当にそうかな?」


 その長方形を手に持ち、書き足した小さな出っ張りを押す。

 ブウン!っと赤く発光する棒が飛び出した。


「みんなご存知!ビームサーベルだぜ!」


 剣を受け止めると、ジュッっと音を立てて切断した。


「成功だ!」

「な、なんだコイツの魔法!」


 男は切断された剣を見て怖気付いている。


「どうする?まだやるか?」


 威嚇するように映画で観た舞のような動きをしてみせる。ブウン!ブウン!とカッコいい音が鳴る。


「すみませんでしたー!!」


 剣を切断するような武器を持った俺には勝てないと理解したのか、男たちは走って逃げて行った。


「やった!凄いぞ!この職業は何でも描けば実現できるだ!」


 おすすめの宿屋やクエストについて聞きたかったので、もう一度冒険者ギルドに戻ってきた。


「あの……」

「カーマッセザックォから逃げてきたんですか?!」

「カーマッセザックォ?」

「ブロンズランクの実力の冒険者なんですよ!まさか逃げ切れるなんて……」


 ブロンズ?一番上がミスリルと考えると、中堅の下くらいか?


「とりあえずクエストとおすすめの宿を教えてください」

「でしたら、このゴブリンの討伐がオススメです。宿屋はここから出て左に真っ直ぐ行くありますよ」

「どうも」


 俺はクエストの書類を受け取り、冒険者ギルドを後にする。

 次の日、王国の外に出てクエストの書類に書かれている場所へと向かうとゴブリンが数体歩いていた。


「なんでも実現できるんだ……」


 俺は先が尖った筒を描く。そこに三角形を二つ足す。

 それをゴブリンの数だけ描いていく。


「ギャギャ?!」


 俺の存在に気付いたゴブリンたちが、木の棒や剣を構えて向かって来る。


「へっへっへ。ゴブリンどもこんなの見たことないだろ?」


 火の付いた棒を描き、それを手に持つ。


「着火!ロケット発射だ!」


 筒に火を付けていくと、ゴブリンに向かって飛んで行く。

 ロケットはゴブリンたちに直撃すると爆発して即死させた。


「俺の巻き込まれ異世界生活安泰だ!」

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