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仮面

愛について

作者: シン222

短編の練習

「シンさん、愛ってなんだと思います?」

放課後の図書室、静寂の中で皆が勉学や読書に励んでる。

そんな場所で少女は疑問を口にする。

「愛ですか?あの人を好きになるとか、ペットに向けるあの愛ですか?」

シンと呼ばれた男は読んでいた文庫本から目線をあげ少女に聞き返す。

「そうです、その愛です」

「で、その愛がなんですって?」

「だから、愛ってなんだと思いますかって」

男は読みかけのページに栞を挟み、文庫本を閉じる。

「哲学的な話ですか」

「別にフワッとしたことでもいいですよ」

「そうですね……とりあえず場所を変えますか」

そう言うと、男は文庫本と通学用の鞄を手に持ち席を立つ、ここは静寂な図書室であることを思い出したようだ。

少女もそれに続き、広げていたプリントをまとめ、通学用のリュックに押し込み男の後を追う。


男たちが移動した先は食堂だ。

「ここなら声を出しても問題ないですね、なにか飲みます?」

食堂の自動販売機を指さして少女に問う。

「じゃあ、お茶で」

少女の答えを聞いて、お茶と自分の分のコーヒーを買い席に着く。

「それで愛でしたか」

「そう愛です」

「うーん、なんだと思うっていうのがどういった意味なのかがいまいちい分かっていないんですよね」

「うーんと、例えば恋人への愛ってどうやって示します」

「恋人……居たことないので想像ですけど、言葉や行動では無いですか」

男は自信なさそうに答える。

「ですよね、では恋人がいるのにほかの異性と仲良くしているのはどう思いますか」

「まぁ、不誠実とは思いますかね……」

男の歯切れが少し悪くなる。

「そういう話でしたら、愛とは特定の対象にだけに向ける特別な感情というのが答えです」

少女は男の答えに納得していない表情だ。

お茶を1口飲んでから新たな議題を提示する


「なるほど、では愛の違いはなんだと思いますか」

「愛の違いですか」

「はい、愛と一言に言っても様々な愛がありますよね」

「確かに恋愛、友愛、自己愛、家族愛、動物愛etc……無限にありますね」

「その愛の違いです」

「これは簡単では、対象ですよ」

「それは前提として、愛の重さの違いです」

「重さですか」

「さっきの例で話すと、恋人に向ける恋愛と、異性の友達に向ける友愛のどちらが重いと思いますか」

「それは……人によるとしか言えないですね。

個々人で1番大事にしてるものは違いますからね」

男は困ったように返す。

「では、シンさんの主観でいいですよ」

「私のですか……恋人居たことないんですけど」

「では、友愛と家族愛ではどっちですか」

「友愛と家族愛……難しいこと聞きますね。

これを話すには少し愛の対象の話がしたいですね」

「愛の対象?」

男はコーヒーを口に含み一息置いてから話し出す。

「程の友愛と家族愛ですと比べる単位が違うと言いますか、友愛はあくまでも他人への愛です。

対して家族愛は血の繋がった文字通り家族への愛です。

ここに大きな違いがあり、同じ土俵で語るのは少なくとも私には難しいです」

「なるほど、確かに友愛と恋愛ならどちらも対象は他人ですものね」

「そういうことです、なので恋人はいませんが個人的に他人と他人の愛で語るなら、私は恋愛の方に比重を置いた方がいいと思います」

「意外ですね、シンさんは友愛派だと思ってました。

理由はなんですか」

「簡単ですよ、友人はどこまで行っても他人ですけど、恋人は家族に進化するかもしれない存在だからです」

「なるほど」

少女はまた納得がいっていない表情をしている。


「では、愛が冷めるのは何故ですか」

日が傾き初めて来たところで少女がさらに議題を増やす。

「愛が冷める……人を好きじゃなくなるってことですか」

「好きではあるんです、でも以前よりは愛がないと言いますか」

「いちばん簡単ですね、慣れと飽きです」

「それは分かっているんですけど」

少女は言語化できないことに苛立ちを覚えているような表情だ。

男は続ける。

「そもそも愛なんて概念自体があやふやなものです。

それを頑張って維持しようなんて無理な話ですよ」

「それはそうですけど……」

「愛が冷めるというのは相手をより深く知った、知ってしまったから起こることです」

「な、なるほど?」

男の言葉に少女は困惑の表情を浮かべる。

「相手をより深く知れば嫌なとこも見えてきます、それに嫌悪感を覚えるのも当然の反応です。

それすらも愛おしく思えるならそれもまた愛ですよ」

「ダメなとこですら愛おしい……」

「ダメなとこを補いあって笑い合えるならそれが理想の愛の形だと思いますよ」

「なんか話が逸れてませんか」

「同じこと思いました、愛が冷める理由でしたか、それは簡単で、相手のことが自分より大切じゃなくなったからですよ」

「と言いますと」

「相手から受ける得より損のが大きくなって、自分にとって相手が損を与える存在になっているってことです」

「でた、損得で考える感じ」

「人間なんて損得勘定で動く生き物ですよ」

「でも、人間関係って損得だけじゃないでしょ」

「人間関係なんて損得勘定の究極系だと思いますけどね」

「拗らせてますね」

「うるさいです」

「じゃあ、私と絡んでるのも損得勘定ですか」

「当然ですね、あなたの相手をしているのも得があるからです」

「具体的には?」

「私が楽しい」

「そんだけですか」

「これが1番大事だと思ってますけどね、何がどうなろうと1番は自分の気持ちですから」

「そんなもんですか」

「そんなもんです」

少女もこれには多少納得した顔をしている

キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴り響く、完全下校の時間が迫ってくる。


「そろそろ帰らないとですね。

最後に私がなんでこんな話をしたのか分かりますか」

「ふむ、なんとなくは分かりますけど、私は人の気持ちを察することは苦手なんですよね」

「知ってますよ、じゃあ質問を変えますシンさんにとっての愛の意味ってなんですか」

「愛の意味ですか、人を好きになる、特別に思う、傍に居たい、誰にも渡したくない、その人の子供が欲しい、自分の手で殺したい、こう言った現象を総じて愛と呼んでいる時点で愛には意味が溢れてます」

「なんか変なの混じってませんかそれ」

少女の言葉を無視して男は続ける。

「それを前提として、私が口にする愛の意味はあなたは傍に居たい、あなたの心の拠り所で居たいって感じですかね」

「心の拠り所……」

「はい、みんなが困った時や疲れた時、もうどうしようも無くなった時の居場所になりたいんです。

シンさんという場所がある、絶対に揺るがない心の拠り所になりたいんです」

「でも、それってシンさんに得がなくないですか、都合よく使われるだけでは」

「その通りですよ、でもそれでいいんです。

私のようないてもいなくても変わらない、替えのきく存在が皆さんの役に立てるなら」

「……」

少女は押し黙る。

「今だって、恋人と喧嘩したあなたの愚痴に付き合うぐらいの役には立ってる訳ですしね」

「あーやっぱ分かります?」

少女は少しバツが悪そうに答える。

「途中からなんとなくね、大方彼氏さんが異性の友達と仲良くしてたのが気に入らなかったんでしょ」

「その通りでーす」

「それはいいんだけど、それを自分に話すの逆にこじれないか心配なんですけどやってる事一緒では?」

男は先程までの丁寧な口調から年相応の砕けた口調となる。

「あーまぁ、それはほらシンさんだし」

「シンさんだしじゃないのよ」

「相手も似たようなことやってたしいいかなーって」

「あんたがいいならいいんですけど」

男は少し不貞腐れたように言い放つ。

そこから他愛もない会話をしていると、完全下校の時間となる。


「じゃあ、そろそろ帰りますか」

「そうですね、名残惜しいですけど」

男は心の仮面を被り直す。

「ありがとうございました」

「いえいえ、こちらこそ楽しいお話でした。

また、なにかあればお話しましょう」

「はい!

あ、後シンさんはいてもいなくても変わらないとか、替えのきく存在じゃないですからね!」

少女はそう言って食堂から去って行く。

「……そういう事言わないで欲しいんだよなぁ」

男も1人つぶやくと食堂を後にする。


愛について、愛は綺麗なものでは無く、損得勘定や、打算で利用するもの、さりとてそれだけではなく時に理屈や思考を置いてきぼりにすることもある。

愛とは所謂制御のできない感情に名前が付いているだけだ、制御不能な感情を愛と呼んでいる。

それがまぁ、俺としては結論なわけで、愛してるなんて言葉恥ずくて使えないけども、これを恥ずかしくなく言える相手がいればそれが愛の到達点だろうね。

ま、人を愛せない俺には関係ないけど。

ということで、縁があったらまた会いましょう。

またね、バイバイ

なん上手くまとめられなかった

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