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9話

「こちらです。どうぞお入りください」


「ありがとね。ほら、マグト入るよ」


「おお。なんか大事になってねぇか?」


 カエデに引っ張られるままにギルドマスターの部屋に入っていく。

 思いのほか普通の部屋だ。装飾品がやけに豪華だったりとかそういうことは一切ない。


「君がカエデ君が期待の新人といっている子だね。よく来た。歓迎するよ」


 部屋に入ると40代くらいのいかにも普通のおじさんが立っていた。

 言動から察するにこのおじさんがギルドマスターなんだろう。あんまり強そうな雰囲気がないんだけど、ほんとに合ってるのか? この時点から俺を試すために色々してるとか言わないよな。


「マスター久しぶり。元気にしてた?」


「カエデ君。もう少し僕を敬ってくれよ。新人君に僕の威厳がアピールできないじゃないか」


「ハハッ、マスターに威厳なんてないって。強さは認めるけど、見た目はいたって普通だし、でもそこがマスターの凄いところだもんね」


「やはりカエデ君は手厳しいな。もう見えても僕も若かったことはエネルギーに溢れてたんだよ。今の僕とは大違いさ。おっと、カエデ君のせいで話がそれてしまったね。まずは名前を聞かせてもらってもいいかな」


 俺の第一印象は大方正しかったみたいだな。

 このギルドマスターはどうやらこんな感じみたいだ。


「俺はマグトだ。今の状況がいまいち掴めてないんだけど説明を頼んでもいいか?」


「マグト君だね。いい名前だ」


 ギルドマスターはそう言いながらカエデのほうをじろっと見た。


「どういうことだい? マグト君にはカエデ君から何も説明してないのかい?」


「えーと、したようなしてなかったような……」


「まったく、悪い癖だよ。しかし、何も理解してないのによくここまでついてきたね。マグト君も冒険者に興味があるのかい?」


「え? ああ、まあそうだな。モンスターを討伐して金を稼げるんだったら生活に困らないなって思っただけだ。カエデからされた説明はほんとにこれくらいだな」


 やっぱり明らかに説明不足だったんだな。

 ギルドマスター、カエデを怒ってやってくれ。俺はできねぇから代わりに俺の分まで頼む。


「えー? でもマグトだって乗り気だったよね? 強ければ稼げるよって行ったときなんか目を輝かせてたよ」


「それは大げさだろ」


「はぁ、まずは何処から説明したもんかね。マグト君は冒険者登録に来たということで間違いないかい?」


「ああ。そこは俺の意思だ」


 冒険者になるのさえもちょっとカエデに乗せられた気もするが、実際ほかの仕事をして金を稼ぐよりも大幅に楽に稼げるだろう。これほど俺にピッタリな仕事も他にはねぇよ。


「そうか。これは通常の冒険者登録とは違うことがわかるだろう。それもこれも、カエデ君が君を推薦したからなんだ」


「それだよそれ。結局カエデって何者なんだよ。カエデのお墨付きが出たくらいでなんで俺がギルドマスターに会うような流れになるんだよ」


「それはね、私が世界に13人しかいないSランク冒険者だからだよ。なかなか伝えるタイミングがなかったけどマグトはほぼ全力だった私の攻撃を避けたんだよ。つまり、実力はSランクに匹敵するってわけだね」


 そんな馬鹿な。俺は転生してすぐの森で人類最高峰の強さを持つ人間と出くわしてたってことか。

 それも、こんな可愛い子だぞ。じいさんやってくれたな。マジでナイスだ。

 カエデは俺の魔王討伐パーティーに加えよう……待てよ。カエデは見てくれは完璧だけど、中身が変人だぞ。俺にいきなり殴りかかってくるような奴だ。あぶねぇ、それも考慮して考えねぇとな。


「初耳だね。まさかマグト君がそこまでの実力とは……恐れ入ったよ。どうだい? カエデ君からみたマグト君の強さは」


「まだ実力を隠してるみたいなんだよね。マグトは魔導士なんでしょ? 私が見た魔法は身体強化魔法だけだしね。まだ色々あるよね?」


「中級魔法だったら全部使えるぞ。身体強化魔法もその一つだ」


 ここですべての魔法が使えるって言えてたらどれほどかっこよかったことか。

 また俺は自分の適性のなさを悔やまないといけないんだな。てか、一生引きずるレベルだぞこれ。


「中級魔法? どういうことだい? それでどうやってカエデ君の攻撃を躱すって言うんだ?」


「うーん、私も実際に躱されたけど、何とも言えないんだよね。明らかに強化のレベルが中級魔法じゃなかったよ。マグト嘘ついてないよね?」


「嘘でこんな悲しいこというかよ。正真正銘俺は中級魔法しかつかえねぇ。初級魔法すら使えないんだからな」


 自分でいっておいてさらにブルーな気分になってしまった。

 落ち込むんじゃない俺。俺には魔力があるじゃねぇか。これさえあれば最強なんだろ。


「だとするならば、後は魔力量だけか。ここで測ってみてもいいかな?」


「魔力量って測れるのか? いいぞ。俺もどれくらいか知りたいしな」


「中級魔法をあのレベルで使えるとなるととんでもない魔力量なんだろうね。期待してるよマグト」


「期待しても変わらねぇからな」


 お姉さんがこちらへ小さなテーブルに乗った水晶玉を持ってきた。

 これで、魔力量が測れるのか。楽しみだ。


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