8話
「それで、冒険者ってのはどんなことをしてるんだ? 名前から予測するに冒険する人のことだろうとは思うけどさ」
「大方その認識であってるよ。冒険者は冒険をして、モンスターを討伐することを生業にしている人達のことを言うんだよ。だから、モンスターがでる危険な森を一人で歩いていたマグトを冒険者だと思ったってわけ。どう? わかった?」
「へぇ、そう言うことか。それじゃあ、俺も冒険者になればモンスターを討伐して金を稼げるってわけか?」
「私の攻撃を避けるくらいだから、がっぽり稼げると思うよ。だから、早く行こう」
町に入るやいなや、カエデに袖を捕まれて連行されるように冒険者ギルドへ向かった。
道行く男どもは俺のことを羨ましそうに見てくる。こんな羨望の眼差しを受ける日が来るなんて夢にも思わなかったな。でも、少し嫌な予感がしてるのは俺だけだろうか? なんで、俺はこんなに強引に連れていかれてるんだ?
かなり賑わっている町のようで道の端に並んでいる露店には人だかりができている。
まるで祭りでもしているみたいだ。この世界での買い物はこういう形が一般的なんだろうな。早く俺もなれないと。
「着いたよ。ここが冒険者ギルド、ケレス支部。あ、ケレスって言うのはこの町の名前だから。それくらい知ってるか」
この町の名前ってケレスって言うのか。
事前に教えてもらっててよかった。流石に町の名前も知らないとなると怪しいもんな。そう言えば、カエデには最初不審者扱いされてたんだっけな。すっかり疑いも晴れたようで良かった。
冒険者ギルドは外から相当大きな建物だった。
このでかさとなると、冒険者ってのは相当人数がいるんじゃないのか? モンスターと戦う冒険者がこれだけいるってことは中には魔王に対抗することができるような奴も一人くらいはいるかもしれないな。俺の仲間探しも進みそうだし、金の心配もなくなりそうで完璧だな。
「すげぇな。冒険者ギルドってのはでっけぇんだな」
「え? ごめん。あんまり意識したことなかった。言われてみれば、周りの建物よりも大きいね。やっぱりモンスターと戦うから儲かるんじゃない?」
「これで俺も金に困ることはないだろうな」
「うん。冒険者は基本的に危険なクエストに挑むことになる代わりに、普通に働くよりも高収入だからね。それも、高ランク冒険者になればなるほど報酬は上がるんだよ。マグトだったら、町の一つくらいなら余裕で買えちゃうくらい稼げるよ」
町を買うほどの大金は必要ないな。
不自由なく生活できるレベルの金があればそれ以上は必要ない。まあ、金なんてあればあるほどいいもんだ。
「確かに俺は強いとは思うけど、そんなにすぐ高ランク冒険者ってのになれるもんなのか?」
「なれるよ。だって私の攻撃を避けたんだよ。それなのに、Fランク冒険者からとかありえないよ。安心して、私が一緒にパーティーを組んであげるから」
「ちょっと待ってくれ。そのカエデの攻撃を避けたって言うのをやけに強調してくるけど、そんなに凄いのか? それと、いつ俺がパーティー組むなんて言ったんだよ」
「まぁまぁ、詳しい話は中へ入ってからにしようよ。登録もギルドマスターに話を通してすぐ終わらせてもらうから安心してね」
ギルドマスターって、冒険者ギルドで一番偉い人なんじゃないのか? 急にそんな人が出てくるんだよ。おいおい、なんか話が大げさになってねぇか。大丈夫か、俺騙されてたりしねぇよな。
正面の入口から冒険者ギルドの中へ入る。
俺が想像していたほどの人数はいなかったが、それでもちらほらうりょちょろしている人達がいた。全員、防具なんかに身を包んでおり、いかにも戦うことを想定しているという身なりだ。
それに比べてカエデは普通の服なんだけど、これってどういうこと? そりゃ服のほうが可愛いだろうけどさ、モンスターと戦うってのに準備不足過ぎねぇか。
「レニーさん。すっごい新人を捕まえてきたんだ。冒険者登録希望なの。ギルドマスターっている?」
「お疲れ様です、カエデさん。もうストレス発散の方はいいんですか? えーと、その方が凄い新人……わかりました。ギルドマスターに伝えてきます。それと、クエストに行くときはちゃんと装備をして行ってくださいっていつも言ってますよね。気を付けてくださいよ」
「ごめんねぇ。ギルドマスターの件、お願いね。私たちはここで待ってるから」
受付に立っていたお姉さんにものすごくフレンドリーに話しかけたと思ったらそのままギルドマスターまで話が言っちまったんだけど。
俺を見定めるような視線が少し気になったが、すぐにお姉さんも行っちまったからな。それも、カエデのおかげなのか? 待てよ、もしかしてカエデって凄かったりする? 思い出してみると、あの攻撃をこの世界の住民の平均ラインと考えるのは多少無理があるよな。
「先に一つ聞きたいんだけどいいか?」
「どうしたの? まだ私に秘密を話せって言うつもりなのかな?」
「ちげぇよ。カエデって冒険者のランクを何なんだ?」
「ああ、それは……」
「カエデさん。ギルドマスターが部屋でお待ちです。そちらの方と一緒にどうぞ」
「ありがとう。それじゃあ、行こっか」
何ともちょうどいいタイミングでお姉さんが帰ってきて話は遮られちまった。
それにしても、すっげぇ早かったな。こりゃまじで、俺の予想が当たりそうだぞ。




