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7話

「ここから町ってどのくらいの距離なんだ?」


「そうだね、ここからだとぉ……走って10分くらいかな」


「なんで走っての時間なんだよ。普通に歩いての時間を教えてくれよ。それとも何か? カエデは今から走って帰るっていうのか?」


「ううん、私は歩いて帰るよ。マグトは走りって行くのかなって。私なりに気を使ってみたんだけど違った?」


「案内してもらう方だけ走って目的地に向かうって意味わからねぇだろ。どうやって、俺はたどり着けばいいんだ? 意味不明なことするのはやめてくれよ」


 ただの疑問を言っただけなのにこうも体力を消費させられるとは。魔力を体力に変換できたらいいなけどな。

 しかし、走って10分となると歩いたらどれくらいだ? 20分から30分ってところか? 思ってたよりも遠いんだな。じいさんももう少し近くしてくれててもよかっただろ。


「ごめんねぇ。暇だったからからかっちゃった」


「本気で言ってるのかと思って焦ったぞ。もう少しわかりやすくしてもらってもいいか? 冗談言ってるようにはまったく見えなかった」


「迫真の演技だったってことだね。これは私も捨てたもんじゃないなぁ。将来は舞台女優になれたりして」


「そこまで褒めてないから。話が飛躍しすぎだろ」


 これもどこまでが本気で言っているのかわからない。何て言うか、つかみどころのない子だな。正直、カエデがちょい不細工くらいの女の子だったら容赦なく顔面パンチしてたわ。ほんと美少女って何かと得だよな。俺も美少女に生まれたかったぜ。あっ、じいさんに希望してたら性別とかも変更して転生できてたのか? うわぁ、言ってみれば良かった。


「難しい顔してどうしたの? 何か考え事? 悩みがあるんだったら私が相談に乗るよ」


「いや、過去の過ちを悔いてただけだ。心配しないでくれ」


 覗き込むように俺の顔を上目遣いで見ているカエデにクラっとしながらもなんとか平静を装いつつ返事をした。

 近いんだよなぁ。俺の女の子に対する耐性を軽々超えてくる。こんなのいつ惚れてもおかしくないぞ。気合い入れとかないと、魔王討伐どころじゃなくてカエデのために尽くす人生になっちまう。こいつは変人、こいつは変人。っよし、これで大丈夫だ。


「へぇ、マグトはそんな引きずるようなことやらかしてるんだぁ。気になるなぁ。折角だし教えてほしいなぁ」


「無理だ。カエデにだって誰にも話せない秘密の一つや二つくらいあるだろ? この話を誰かにすることはこの先の人生で考えても絶対ないって断言できる」


「うわぁ、ますます気になるよ。持ったぶらないで教えてよぉ」


 少しずつ距離を詰めてくるカエデに俺の精神はもう限界だ。

 この様子だとまだ表情までは出ていないみたいだが、それも時間の問題だ。いつ顔がにやけてもおかしくないぞ。大体、なんでこんなしょうもないことに食いついてくるんだよ。もう適当に違う話でもしてごまかすか。


「しょうがねぇな。これは俺がまだ小さかった頃の話なんだけどな」


「それ絶対今考えてた話と違うよね? もしかして、誤魔化そうとしてる?」


「こえぇな。なんでわかるんだよ。あっ……」


「やっぱりね。そんな気がしたんだよ。マグトがそうやって嘘つくんだったら私もこのまま案内するふりしてどこか遠くへ行っちゃおうかなぁ」


「自分も困るよなそれ!! 悪かったって。でもそれくらい話したくねぇんだよ。もういいだろこの話は」


 なんでバレたんだ。表情か? 俺はそんなに変な顔をしてたって言うのか? わからねぇ。なんで違う話ってバレたんだよ。

 もう完全にカエデのペースだ。ほんとこれが不細工な子だったらこうはなってないんだよ。それだったら俺も緊張しないで話せてるんだ。こんな揚げ足を取られて不利にさせられたりしねぇよ。運がいいのか悪いのやら。


「そこまで言いたくないんだったらまた今度でもいいよ。でも、絶対聞くから」


 目がガチなんだ。しかも距離が近いから綺麗な顔が目の前、もう考えることはやめよう。今は、この幸運をかみしめて網膜に焼き付けようじゃないか。

 まずい、現実逃避してる場合か。まぁ、カエデとは町までの付き合いだし、それ以降関わりを持たなければいいだけの話だ。同じ町で生活してればどこかで出くわすかもしれないし、早々に拠点を別の町に移そう。


「機会があればな。なんか俺ばっかり色々聞かれて不公平だし、カエデのことも教えてくれよ」


「えぇー? マグト何も教えてくれなかったじゃん。それなのに私には秘密を話せって言うの? おかしいよ」


「いや、秘密とか聞こうと思ってないから。どうして森にいたのかとか、冒険者についてとか聞きたいことは色々あるからそっちだって。やめてくれよ、俺が変態みたいじゃねぇか」


 あぶねぇ。是非お願いしますって言いかけたわ。これも、美少女の力か。恐ろしいな。


「そう言うことね。あ、町も見えてきたし、気になるようだったら一緒に冒険者ギルドに行ってみる? ……いや、行こう。私が案内するよ」


「うん? ああ、まあそうだな。実際に行ってみるのも悪く無いか」


「そうだよ。それじゃあ、行こうか」


 なんかうまく乗せられてるような気がするのは気のせいか? ひとまず、大きな壁に囲われた町も見えてきたことだし、ここまでくれば後はどうにかなるよな。

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