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6話

「中級魔法しか使えないなくて悪かったな。俺だって好きでこんなあべこべなことになってるんじゃねぇんだよ」


「ごめんね。魔法はセンスだって言うし、落ち込まないで。そうだっ!! いっそ魔導士をやめて私と同じ近接格闘系になったらいいんじゃない? 私のパンチを避けるなんて相当凄いことだよ」


「いや、それも俺の身体強化魔法だって。それがなかったら普通の一般人と変わらない身体能力しかないからな」


 折角魔導士としてこの世界に転生してきたってのにいきなり転職を進められるとはな。魔力量だけが取柄みたいな俺がほかの戦い方に変わったところで魔導士以上の強さになることはないだろ。

 はぁ、これも俺の魔法適性が中級魔法だけだったのが全部悪いんだよなぁ。上級魔法やその上の魔法まで使えてればこんな舐められたりすることもなかったんだ……舐められてはないか。


「すっごくいいと思うよ。身体強化魔法で戦う人なんて山ほどいるんだよ。そこに素の肉体の強さが加われば相当なレベルまでいけるんじゃないかな?」


「なんか勘違いしてないか? 今のはまだ全力じゃないぞ。大体、避けるだけだってのに全力で魔法をかける必要ないだろ。とっさのことだったしな」


「え? まだ本気を出してないってこと? いいねぇ。それじゃあ、次は私も遠慮なく行ってもいいかな?」


「勘弁してくれよ。なんで、俺が君と戦わなくちゃいけないんだ……さっきもやったなこの流れ。だから、ほんと勘弁してくれ」


 またいきなり殴りかかってきそうな気配を漂わせているのが本当に怖い。

 この子が可愛い女の子じゃなくてゴリゴリのおっさんとかだったら本気で反撃してるのかもしれないけどさ。正当防衛とは言え、女の子を攻撃するのはどうなんだかな。


「えー、それじゃあ、私がもう一撃だけ攻撃するからそれを避けて見せてよ。次は避けれなかったら死ぬかもしれないから気を付けてね」


 にっこりといい笑顔でとんでもないことを口走っている。

 この子の考えていることが俺には一切理解できない。どういう行動原理なんだよ。俺に敵意があるようには見えないし、ほんとわけがわからない。とりあえず、この子とはもう関わりたくない。


「だからやめてくれって言ってるだろ。あんまり、いうこと聞いてくれないんだったらこっちも反撃するぞ」


 最後の手段で少し脅してみる。

 どうか、これで諦めてくれ。この子だって痛い目に会うのは嫌だろ。


「望むところだよ。私だって負けないんだからね。今回は不意打ちじゃなくて真正面から行くね。どうぞ、身体強化魔法を使っていいよ。生半可な効果だと避けれないって先に言っておくよ」


「本当に一回だけなんだな?」


「約束するよ、また次の機会のお楽しみってことで」


 今回はやめておくとかそういうことを言ってるんじゃないんだよな。今の言い方だと次があることが確定しているんだよ。

 なんで、こうも好戦的なんだよ。女の子ってのはもっと慎ましやかなもんじゃねぇのか? ……よくないな。これは差別発言だ。人間いろんな人がいるもんだ。そう、この子が変人なだけなんだ。


「しょうがないな、っよし、いいぞ。いつでも来い」


 俺は身体強化魔法をさっきよりも相当強い魔力を使って自分にかけた。

 やりすぎかもしれないけど、死ぬのに比べればどうってことないだろ。


「行くね」


 その瞬間、音すらも置き去りにして必殺の一撃を俺に向かって放ってきた。


 ズゴォォン!!!


 すんでのところで回避に成功した俺は、女の子とほぼ真正面で向かい合う形になった。

 この距離で見ると、やっぱり可愛いな……言ってる場合かよ。


 ゆっくりと後ろを振り向くと、パンチが通過した直線状の木々が薙ぎ払われてしまっている。こんなのが俺の顔面に命中していたらと考えると確実に死んでるな。でも、身体強化魔法がかかっている今だったらそこまで致命傷にはならないのか? 何にせよ、とんでもない威力だな。もうちょっと魔力を込める量が少なかったらと思うと恐ろしくたまらない。


「ほんと凄いね。これも躱されちゃうんだ。身体強化魔法なんて大したことないと思ってたけど認識を改めないとね。うーん、今回は私の負けかぁ。ストレス発散にゴブリン狩りに来たら思わぬ掘り出し物だよ。えーと、私はカエデ。名前を教えてほしいな」


「凄い切り替えの速さだな。ああ、俺はマグトだ。よく、顔面に殴りかかってきた後に平然と自己紹介とかできるもんだよな」


「へぇ、マグトね。覚えた。それで? マグトはこれからどうするの? 町に行くって話してたけど、私もそこを拠点にしているからよかったら一緒に行かない?」


 会話のキャッチボールは華麗にスルーされたが、これは可愛い女の子から誘われているって受け取っていいんだよな。フッ、こんな経験前世では体験したこともないぞ。

 さっきまではできれば関わりたくないとすら思っていたが、俺もちょろいもんだな。


「喜んでっ!!」


「きゃっ!! もういきなり大きい声出さないでよ。距離を考えて」


「悪い、一人旅が終わりを告げたのが嬉しくて。次からは気を付ける」


 なんだかんだあったが俺はカエデと一緒に目的地の町へ向かうことになった。

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