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5話

「えーと、それで結局なんでこんなところにいるの?」


「ああ、俺はこの先の町に行こうとしてたんだよ。この森を抜けたところにあるんだろ?」


「そう言うことかぁ。でもこの森を通るルートは危険だから普通の人は通らないんだよね。それは知らなかったのかな?」


 初耳すぎる情報なんだけど……おい、じいさん。なんでこんなところから俺を転生させたんだよ。これじゃあ、ほかの人に出会ったら怪しまれるだけじゃねぇか。俺だって、仲間を探したりそう言うことで人とは関わるつもりなんだぞ。こんなところでつまずく要因は排除しておいてくれよな。


「何て言うかだな。そうだっ!! 道に迷ったんだよ。気が付いたら森の中にいたんだ。わざとこの森を通ろうと思ったわけじゃねぇんだよ」


「あれ? おっかしいなぁ。さっきまは森を抜けたら、町に作って言ってなかったかな? さらに怪しくなってるよ」


 まずいぞ、このままじゃ俺は不審者扱いだ。どうにかしてこの状況を脱しなければならない。大体、この子も最初は俺のことを心配してくれてたじゃねぇかよ。そんな細かいところまで気にしないでくれよ。

 そもそも、それを言うんだったらこの子だってこんな危ない森にいるのは不自然なんじゃないか? この子は冒険者ってやつだったっけか。それだと不自然じゃねぇんだよな。それだったら俺も今更だが、冒険者だったってことにしてしまうか? 流石に手遅れか。


「俺はただの旅人なんだ。道に迷うくらいのことは日常茶飯事何だよ。俺だったらモンスターと出くわしたくらいで危険なことなんてねぇんだよ。こう見えて俺だって結構強いんだぞ」


「ほんとう? どれくらい強いのかな? すっごい気になるなぁ。かなり自信があるみたいだけどぉ?」


「まぁな。俺もついさっき君が襲われていたモンスターを倒してるんだからな。楽勝だったぜ」


 最初からこうしとけば良かったんだ。俺自身が強いんだったらこの森の中を歩いていてもおかしいところなんて一つもないじゃないか。

 この子も俺が怪しいって話からそれてくれてるしな。でも、ここのモンスターは大した強さだとは思えないんだけどな、俺がどれくらいの強さか何てすげぇどうでもよくないか?


「ゴブリンのことだね。冒険者の初心者がまず挑戦するようなモンスターだけど、冒険者でもないのに楽勝だって言いきっちゃうのはすごいよ。実際にどれくらいの強さなのかなぁ。気になっちゃうなぁ」


 なんかこの子の目の色が変わったというか雰囲気が変わった。さっきまで俺のことを怪しんでいたってのに、今度は俺のことを好奇心溢れる視線で見ているんだが……何がそうさせたんだ? 気になるようなことを言ったつもりは一切ないぞ。


「いきなりどうしたんだよ。確かに俺は強いけど、それがどうしたんだよ」


「だったら、どれくらい強いか私が試してみてもいいかな? ううん、いいよねぇ?」


「なんでそうなるんだよ。大体、俺は君と戦うつもりなんてないぞ。必要なとき以外戦わない主義なんだ。無駄なことはしたくないし、戦うの何てモンスター相手だけで十分だろ?」


「そんなのつまらないよぉ。でもそうだね、私が理由を作ってあげればいいってことかな? じゃあ、私が今から殴りかかるから抵抗しないと死ぬよ」


「は? うぉっ!!」


 宣言通り女の子は俺に向かって突進してきて、躊躇なく殴りかかってきた。

 なんとか、反応して身体強化魔法を発動する。ギリギリのタイミングでパンチを避けた。


「あぶねぇって、いきなり殴りかかってくるとか意味わからねぇんだけど……」


「やるねぇ。今のを避けられるとは正直思ってなかったよ。でも安心してまだ小手調べだからね。喰らってたとしても数日顔が腫れあがるくらいだよ」


「十分重症だからなそれ。ほんとにギリギリだったんだぞ、魔導士だからな俺は。それを不意打ちで殴りかかるなんて卑怯にもほどがあるだろ」


「嘘? 魔導士だったの? それで、今の攻撃を避けるのは凄すぎるよ。もしかして、身体強化魔法を使ってるのかな? だとしてもかなり高位のものじゃないと私の攻撃を避ける程じゃないと思うんだよねぇ。使った魔法を教えてもらってもいいかな?」


 一体何なんだよ。殴りかかってくるは楽しそうに俺が使った魔法を聞いてきたりどういう精神状況だったらこんなに情緒不安定になるんだよ。絶対怪しかったのは俺じゃなくてこの子だろ。そう言えば俺が使ってる身体強化魔法の名前って何だろうな? そこまで意識してなかったな。なんか名前が必要な感じの魔法じゃないしな。


「魔法の名前は俺もよくわからないな。中級魔法ってことは確実だけどな」


「魔法を使ってるのに名前を知らないとかますます変な人だね。中級魔法なんて精々身体能力がそこそこ上昇するくらいのレベルのはずなんだけどなぁ。おかしいなぁ」


「それは、俺の魔力量のおかげだな。魔法ってのは込める魔力で威力が上昇する、常識だろ?」


「それくらいはもちろん知ってるよ。でもそんなのは高位の魔導士の人達の話でしょ。中級魔法しか使えないようなレベルには関係ないよ」


 俺自身も中級魔法しか使えないのはコンプレックスなんだよ、ほっといてほしいな。

 でも、俺はこの世界ではおかしな存在だということがわかったのはいいことだな。でも、これ以上この子と戦うのは御免被りたいな。

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