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4話

 モンスターを1匹倒して俺は気分もよくなってスキップしながら森を歩いていた。


「ちょっと魔導士っぽくない戦い方だったかもしれないなぁ。もっと、炎とか水とかそういうオーソドックスな魔法で戦ってみるべきだったかも」


 少しばかり身体強化魔法で倒してしまったことに後悔してしまう。

 折角力加減を練習するいい機会だったって言うのに、なんで俺は割と簡単にできそうな魔法を使って倒しちまったんだよ。こう言うところだぞ。


 森から早く出て、町へ行こう。そして、もっと俺の魔法を練習するんだ。力加減ができなくちゃどうにもならないからな。まず、町についたら何をしようか? 金がないって言うのは死活問題だよなぁ。どうやって、金を稼ぐのか考えなくちゃいけない。


「やっばい、超楽しいっ!! 定期的にこれをやらないとストレスで死んじゃうよね!!」


 ドガァン!! ドゴォン!!


 俺が歩いていると、突然横のほうから声が聞こえたと思ったら爆音が聞こえてきた。

 俺がさっきモンスターを殴った時でもこんな音はならなかった。つまり、この音のもとには、かなり強い奴がいるってことだ。


「様子を見に行ってみるか。こっちのほうだよな」


 道からそれて、茂みの中へ入っていかないといけないのを一瞬躊躇したが、ここで止まっていてもどうしようもない。一度決めたことは最後までやり通すのが男だろう。それに、俺には町がどっちの方角にあるかわかるんだ。何をためらう理由があるってんだよ。


 茂みへ分け入るとすぐに一人の女の子が見えてきた。


「なんで女の子がこんなモンスターが出てくるような森にいるんだ? 危ないから、言ってあげたほうがいいのか? ……いや待てよ。音源は確実にこっちだったよな。つまり、さっきの爆音を出していたのはあの子ってことかよ。すげぇな」


 そうこうしているうちに、茂みからモンスターが3匹飛び出してきた。

 俺がさっき倒した緑色の肌の気持ちの悪いモンスターだ。


 一気に3匹も出てこられちゃあしんどいだろうし、ここは俺が加勢に入るべきだろうか? でも、さっきの音だけ聞いていてもわかるくらい猛者だったよな。絶対強いだろあの子。ちょっと様子を見て、まずそうだったらすぐに加勢に入ろう。


「また来てくれたの? わざわざ出てきてくれるなんて本当に気の利くいい子たちだね。すぐに仲間たちのもとへ送ってあげるよ」


 楽しそうにモンスターに喋りかけている姿がとてもかわいい……そんなこと言ってる場合か。明らかに様子がおかしいじゃねぇか。なんで、モンスター相手にあんな笑顔なんだよ。もしかして、こいつらモンスターじゃなくて、現地民の人たちだったのか? 俺、一人殺しちまったぞ。


「ギャギャギャーー!!」


 モンスターか人かよくわからない緑色が、奇声を上げて女の子に向かって突撃した。

 相変わらず人が走る速度よりも遅いくらいだ。これじゃあ、攻撃も当たらないだろ。


 ドゴォォン!!


「え?」


 女の子が迫りくるモンスターの顔面をカウンターの要領で打ちぬいていた。

 今何が起きたんだ? とんでもない速さだったぞ。俺の目ですら、かすんで見えるほどの超スピードだった。この子は一体何者なんだ?


「残りも早くおいでよ……来ないんだったらこっちから行っちゃうよ!!」


 そう言うと、女の子はモンスターとの距離を自ら詰め、両腕で同時にパンチを放った。


 ドゴォォン!! ドゴォォン!!


 同じような爆音を上げ、モンスターは吹き飛んで行った。俺が身体強化魔法で放ったパンチよりも数段上の威力を持っているな。これくらいの強さで殴っても平気だったのか。それはいい勉強になるな……言ってる場合か!! なんだよ、この子。もしかして、この世界の女の子はみんなこんな感じなのか? それだったら、魔王にも対抗できそうな気がするんだけど。


「そこの人はそろそろ出てこないの? 盗み見なんていい趣味とは言えないよ」


「わ、悪い。別に盗み見ようとしたわけじゃないんだ。すげぇ音がなってたから気になって見に来たんだよ。そしたら、まさかこんなことが起きてるなんてな」


「うーん、結構周りに人がいないようなところを選んだつもりだったんだけどなぁ。私のほうもまさか人に出くわすとは思わなかったよ。あまり見られたいものでもないしね」


 女の子がこっちのほうへ歩いてきたが、近くで見るとものすごく可愛い。さっきまで笑顔でモンスターを殴り飛ばしていた子と同一人物とはとてもい思えないな。

 金髪碧眼の美少女だ。リアルで見たのはもちろん初めてだ。こんなの漫画やアニメだけの存在かと思ってたんだけどな。この世界の住民はみんなこう言う感じなのかもしれない。


「あなたも冒険者なの? この森にいるって言うことはEランクくらいかな? 良くてDランクだったり?」


「その冒険者ってのはよくわからないけど、どっちでもないな。俺はただの一般人だよ。町を目指して向かってるところだ」


「そうなの? 道から外れたこんなところに入ってくるなんてなかなか度胸あるね。モンスターに襲われたら大変だよ」


 なぜか美少女から心配されるという凄く嬉しいイベントが起きている。

 俺は、この子と出会うためにこの世界にやってきたのかもしれない。


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