20話
カエデが示した方向を見ると、骸骨が騎士風に装備を身にまとっていた。
こいつがスケルトンナイトか。見た感じだと、骨で弱そうだしBランクのモンスターには見えないな。ゴブリンと対して変わらなさそうだ。
「とりあえず身体強化魔法はかけてるけど、こいつって実際にどれくらいの強さなんだ?」
「私の100分の1くらいかな。それもちょっと強くしすぎたかも」
「雑魚モンスターじゃねぇか。こんなのでBランクなのか? もう少しマシかと思ってたけど全然そんなことねぇんだな」
カエデの100分の1なら、身体強化魔法をこんな強度でかけてたらオーバーキルもいいところだ。滅茶苦茶ぼこぼこにしちまうぞ。というか一発で終わりだ。ゴブリンと大差ないな。
「うーん、所詮はBランクだしね。私はSランク冒険者なんだよ、遅れをとるようじゃダメでしょ。楽勝で倒せなくちゃおかしいよ」
「そりゃそうか。とりあえず軽く殴ってみるとするか。あいつがつけてる防具って相当いいものだったりするのか?」
「普通の冒険者が身に着けてるような装備と遜色ないよ。防具の上からでも倒せると思う」
ここで大騒ぎしてモンスターが集まってくるのも面倒だし、できる限り静かに討伐しないといけない。
俺にできるのはゆっくり近づいてただ殴るだけだ。これで、魔導士なんだから笑っちまうよな。どこが後衛だよ。思いっきり前衛してんじゃんか。逆に地下だから魔法が使えないっていうのもおかしな話だよな。まぁ、俺が魔法の制御ができてたら関係なかったんだけどな。
「それじゃあ、サクッと倒してくる。カエデはここで待っててくれ」
「うん。お手並み拝見と行こうかな」
無駄にプレッシャーをかけてくるが、この程度の相手で緊張する俺じゃないんだ。
スケルトンナイトなんてBランクでしかない。どう考えても一撃で蹴りが付く。
スケルトンナイトに気が付かれないようにゆっくりと迫る。
足音を完全に殺しているので、振り向かれない限りは気が付かれないだろう。この身のこなしも身体強化魔法の恩恵なんだろうな。前世でこれをやれって言われても絶対にできていない。魔法は本当に便利だ……今更思ったんだけど、透明になる魔法とか使えばもっと楽だったんじゃないだろうか? もうスケルトンナイトはすぐ目の前だし、今回は温存しておこう。
「っせい」
バキッ!!
俺の右ストレートはスケルトンナイトの骨を簡単に粉砕し、装備ごと葬り去った。
「マジで、雑魚だな。こんなの相手にしてたら腕が鈍りそうだぞ」
「いいパンチだったね。まだ全力じゃないってことでいい?」
「今のが全力なら俺はいいとこBランク冒険者どまりだな。1割も力を入れてねぇし、身体強化魔法だってまだまだ強くかけれるぞ」
「すごいね。スケルトンナイトが相手で満足できないんなら私が相手になってあげてもいいよ?」
でたよ、ちょっと何かあればこの調子で俺に勝負を仕掛けてくるからな。
カエデの戦闘狂具合には俺もドン引きだ。強い相手と戦いたい以外に考えてることあるのかよ。一回頭の中を見てみたいくらいだ。
「それはないから安心しろ。俺がカエデと戦う時はパーティーを抜ける時だけだ。それが嫌なら、もうやめてくれ」
「わかったよぉ。マグトの堅物」
「俺が堅物なんじゃなくてカエデがおかしいんだからな……いや、やめよう。こんなことで言い合っても時間の無駄だ。早く下の階層まで行ってアークデーモンを討伐しなきゃいけないんだ」
カエデにいちいち付き合ってたら時間がいくらあっても足りねぇ。俺はそこまで暇じゃないんでね。
この先もスケルトンナイトが出てくるようだとめんどくさいな。戦闘というか一方的に倒して終わりだ。これじゃあ、なんの実戦経験にもならない。
「マグトは魔導士をやめて武闘家にでもなったほうがいいんじゃないかな。中級魔法しか使えないんだったらこっちの身体強化魔法に特化したほうが強い気がするよ」
「俺の魔法を舐めんなよ。実際にみたら腰抜かすぞ。中級魔法だからって威力は全然レベルが違うんだからな。俺が放つ中級魔法はもっと上位の魔法よりも強いんだぞ」
「それは、次回の楽しみにしとくね。そう言えばアークデーモンの魔法耐性も身体強化魔法で殴るんだったら関係ないね。このクエスト選んだのに無駄になっちゃったよ」
「そこは、ちゃんと魔法で倒してやるよ。最低限の威力で抑えて蹴散らしてやる」
地下を破壊しない程度でアークデーモンを討伐するくらい余裕だろう。徐々に強くしていけば問題ないはずだ。
それに、モンスターだって魔法を使ってくるはず。それに合わせてこの遺跡がどれくらいまで耐えれそうなのか見てみれば俺だって魔法を使えるだろう。俺は日々進化しているからな。一度諦めてことでもすぐにできるようになっちまうんだよ。
とりあえずカエデの記憶を頼りに進みながら、出くわしたスケルトンナイトを殴って討伐していった。
これがあとどれくらい続くんだろうか。すっげぇめんどくせぇ。




