18話
「普通に入っていいんだよな? 何か入る前にしとかないとまずいとかってあるのか?」
「並みの冒険者だったらアンデット系のモンスター避けのために聖水を準備しておくのが定石だけど、私たちなら必要ないかな」
アンデット系のモンスターも出てくるのかよ。全然聞いてなかったんだけどなぁ。聞いてたとしても何も対策してこなかったんだろうけど。
それにしても、この森の中に遺跡の入口があるのが違和感でしかないな。異物感がものすごいんだよ。
「なんでこの森の中にこんな遺跡があるんだ? 昔この森があった場所には古代の王国でもあったのかよ」
「マグトは想像力凄いね。私はそんなこと気にしたこともなかったよ。森の中に遺跡があるのは珍しいことじゃないよ。ほかの遺跡だって似たような感じであるんだから」
「そういうもんなのか? よくわからねぇけど、それが普通ならそれでいいや」
下手なこと言って常識外れなことを言って変に思われても困るしな。
「準備することがねぇんならさっさと行こうぜ」
「マグトが準備できたんだったら私はいつでも大丈夫だよ。遺跡の中は暗いから、光魔法で照らしてね。マグトだったら光魔法くらい使えるよね?」
「当然だろ、俺に使えない魔法何なんてねぇよ。むしろ、遺跡全体が昼間みたいになっちまってアンデット系モンスターを一網打尽にしちまわねぇか心配なくらいだ」
「へぇー、そんなことできたらマグトは強さだけならSランク冒険者だよ。大きく出過ぎたんじゃない?」
俺の実力をまだ理解してないみたいだな。
魔力を込める程威力があがる魔法に置いて俺は最強の存在なんだぞ。上級以上の魔法が使えないという不利も魔力の量だけですべてカバーすることができるんだから。
俺自身自分の魔力の限界なんてまだ微塵も感じてないからな。どの魔法でも今とは次元の違う威力で使えるところを見せてやりたいぜ。
「俺が本気を出したらそれどころの話じゃないけどな。まぁ、そんな機会そうそう来ないからカエデも安心しろ。巻き添えを食らうこともないだろうしな」
「ますます気になるよ。どうしたらマグトの全力の魔法を見せてくれる? 私にできることならなんでも言っていいよ」
「カエデに何かしてもらってもこの世界を破壊しちまうかもしれないくらいの魔法をそう簡単に使えるわけないだろ。気まぐれで世界を滅ぼすような真似するつもりはねぇ」
「ハハハッ!! マグトったらそんな魔法使えるわけないって。それこそ、魔王レベルだよ。冗談は置いといて、ダンジョンに入ろう。光は頼んだからね」
冗談だと思われちまったみたいだな。
まぁ、俺も他人がそんなこと言ってても何言ってんだこいつはくらいにしかとらえないだろうな。実際に見せるわけに行かないってのが面倒なところだ。俺としても自分の限界を知るためにも一度くらいは全力を試してみたいが、マジで世界を滅ぼしちまったら洒落にならないんだよなぁ……最悪、俺も死んじまう。
遺跡の中は石でできた壁に覆われた地下室のような場所だった。
長い廊下が続いていて、このまま進んでいけば、どんどん下の階層に行きつくという感じだろう。
「マグトの魔法ほんとに明るいね。これだったら遺跡の探索も楽勝だよ」
「そうだろう、これでも魔力を相当抑えてるんだからな。魔力を込め過ぎたら眩しすぎて逆に邪魔になっちまいそうだ。この光でアンデットモンスターも寄ってこないだろ」
「マグトの魔法に寄ってきてないのか、私のオーラに怯えてるのかわからないけど、楽でいいね。危険度C程度のモンスターだから、そもそも寄ってこない気もするけど」
俺の光魔法にビビってるわけじゃなくてカエデのオーラが効いてる感じなのかよ。
アンデット系のモンスターも思ってたよりも危険度低いんだな。俺の魔法を使うような相手じゃなさそうだ。
「アークデーモンはこの遺跡のどこにいるんだ? というか、遺跡ってどれくらいの広さなんだよ」
「確か5階層まであるはずだよ。アークデーモンはもちろん、最下層の5階層かな。道中にも危険度Aクラスのモンスターが出てくるからそいつらは相手にしないといけないよ。今のうちに気合い入れておいてね」
「やっと戦えるのかよ。待ちわびたっての。俺の魔法の威力を試すのにもちょうどいい機会だ」
「何かあったら私が守ってあげるけど、Aランクのモンスター相手は油断しちゃダメだからね。マグトの実力なら遅れをとることはないと思ってるけど、油断は危険に直結するから」
カエデはあの時の俺が全力だったとでも思ってるんだろうか?
実力の何パーセントだったのか自分でもわからないが、身体強化魔法だけを見ても何倍もの威力でかけることができるんだけどな。
「気を付けるようにする。俺は初めて来たから道わからないし、カエデに案内頼んでもいいんだよな?」
「任せてよ。私は一度通った道はしっかり覚えてるから。こっちだよ、一直線に目的地に行っちゃおう」
俺の光魔法の灯りを頼りに俺たちは進み始めた。




