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14話

「なんでマグトは私とパーティーを組むの、そんなに嫌がるの? 普通の冒険者だったら飛んで喜ぶレベルだと思うんだけど……私ってこれでもSランク冒険者だよ。一緒にクエストに行けば簡単にクエストクリアだよ」


「いきなり殴りかかってくるだろ。それに尽きるな」


「あれは仕方ないよ。ゴブリンを討伐しててテンションが上がってたんだから。普段はもう少し話を聞いてあげるよ?」


 そういう類のもんじゃなかった。また同じ状況ができたとしてもまったく同じことするだろうな。

 カエデは確かにパーティーを組むのに魅力的な存在かもしれないが、それはあくまでもカエデの人間性を考慮しなかったらなんだよ。可愛いし強いそこだけ見れば文句のつけようもないが……なら悪く無いか?


「一つ聞いていいか?」


「何? 何でも聞いてよ」


「じゃあ、さっきギルドマスターがSランク冒険者の序列がとか言ってたけど、カエデは強さで見た場合はどれくらい何だ? あの順位は単純な強さを表してるわけじゃないんだろ?」


「ごめん、わかんない。私もほかのSランク冒険者と直接会ったことがあるのは3人くらいなんだ。その時も戦いを挑んでみたりしたんだけど、本気で止められちゃって、無理だったんだ」


 ここでも戦闘狂が発揮されてるじゃないか。

 何を不思議そうな顔してるんだよ。いや近い……。


「カエデがSランク冒険者、最強とかだったら一緒にパーティーを組んだほうがいいなって思ったんだけどな」


「もちろん、私もいずれはそうなるつもりだよ。えーと、これでもSランク冒険者では私が最年少なんだよ。伸びしろを考えたら私が一番じゃない?」


「一理あるな。カエデっていくつなんだ?」


「今年で17歳。冒険者を始めたのは12歳の頃だよ。去年Sランク冒険者になったんだ」


 この世界では12歳からモンスターと戦ったりしないといけないんだな。カエデが特殊ってことにしておこうか。俺に殺意の視線を向けてくる冒険者どもも割と若いし、若い人が多い傾向にはありそうだな。


「俺と同い年か。よくそんな強いよな。とりあえずクエストを選ぶか。今日のところは一緒にクエストに行ってやるよ」


「やったぁ。これで正式に私とマグトはパーティーだね」


「いや、今日のところはって言っただろ。カエデの耳は都合の悪いことは全部スルーしちまうのかよ」


「どうだろう? あ、これなんてマグトの実力を見るのにちょうどいい気がする」


 そう言うとカエデは依頼書を手に取った。


 俺の実力を見るのにか、俺はAランク冒険者が受けるようなクエストで実力を見れる程度だと思われてるってわけか? 心外だな。その程度じゃ、俺の実力の片鱗すらわからんぞ。


「アークデーモンの討伐依頼。場所も比較的近くの遺跡だし、ちょうどいいクエストがあってよかったよ」


 アークデーモン? やけに強そうな名前だな。

 まあ、ここはAランクまでのクエストしかおいてないし問題ないか。


「危険度はどれくらいなんだ?」


「え? そんなこと気にするの? Aランクだけど……」


「一応聞いただけだって、Aランクくらいのクエストだったら余裕だ。どんなモンスターでもかかってこいよ」


「いいね、アークデーモンは魔法耐性が凄く高いから魔法で倒すのは至難の業だけど、マグトだったら関係ないよね」


 俺がランクを尋ねただけで不思議な顔をされたと思ったら、今度は俺に合わせて魔法耐性が高いモンスターを選んでるとはな。カエデも結構いじわるなところがあるみたいだ。

 魔法耐性が高いって言っても完全に無効化されるわけじゃないだろうし、俺レベルなら問題ないよな? 確かに、俺の実力を測るには持って来いの相手かもしれない。


「魔法耐性が高いって自体的にはどんな感じなんだ?」


「私が魔法使えないから詳しい話はわからないけど、上級魔法までは効かないって話だよ。魔導士で討伐できるのはAランク冒険者の上位か、下手するとSランク冒険者だけかも」


「俺、中級魔法しか使えないんだけど……」


「知ってるよ。これくらいの不利は覆してもらわないと。マグトが思ってるよりも私期待してるんだよ? 効かないって言うのはあくまでも一般的な上級魔法までだからね。私が見たマグトの身体強化魔法はそんなレベルじゃなかったよ」


 一瞬、一発目のクエストで俺が倒せないモンスターが現れたのかと思って焦ってしまったじゃないか。

 要は魔力にものを言わせて火力で押し切れば行けるって話だよな。俺に持って来いだ。


「わかった。それでいいぞ。俺の魔法の威力を見せてやるよ」


「決まりだね。それじゃあ、クエストを受注しに行くよ」


 決まった依頼書を持ち、俺たちは受付カウンターへ並んだ。

 カエデに抱き着かれているこの状況にも少しずつ適応し出している自分自身を褒めてやりたい気分だ。


「いや、ちょっと待て。このまま受付に行く気かよ。もうクエストも決めたんだし離れてくれよ」


「えー? ……まだ安心できない」


「絶対逃げねぇから。ここまでして逃げたりしねぇよ。カエデだって受付のお姉さんにまでこの状況も見せるわけにはいかないだろ?」


「私は気にしない。マグトを確保することが最優先だから」


 ダメだ、話が通じない。もうこのまま行くしかないのか。

 俺の冒険者人生は前途多難だな。


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