1話
「あれ? 何だここ? っく、頭がいてぇ……」
俺は見知らぬ場所で目を覚ました。
なんというか開けた空間だ。もはやどこまでも広がっているようにも感じる。
「おかしい……ここに来るまでの記憶まったくねぇよ。なんでだ?」
「おお、目覚めたようじゃの。なかなか起きんからわしもつい暇すぎて家に帰っておったわい」
「うわっ!! じいさん誰だよ。いきなり後ろから話しかけてくんなよ。というか何処から来たんだ? 俺が今見渡した時誰もいなかったはずだぞ」
「そんな細かいこと気にするんじゃないわい。わしは神じゃぞ。それくらい造作もないわ。それよりもおぬしは神に対する態度を改める必要があるのぉ。信仰心が足りんわ」
突然現れたと思ったら自分は神様だって? 信じれるはずないよな。でも、この状況はおかしいことばっかりだ。
俺は、ここに来るまでに記憶がないし、見たこともない場所だ。どう考えてもおかしい。
「ちょっと待ってくれ。意味が分からないんだけど……」
「まぁおぬしがパニックになるのもわかるぞ。しかしのぉ、証拠を見せるというわけにもいかんからのぉ。わしが今からおぬしに何が起きたのかを説明してやるからしっかり聞いておくんじゃぞ」
説明って何だよ。この自称神様のじいさん俺がどうしてここにいるのかもすべて知っているんだな。
実際のところ説明してくれるって言うのはすごいありがたいけどさ、でもそれが信じられるかといわれるとそれも違うんだよなぁ。とりあえず、聞いてみるしかないか。
「まずはじめに、おぬしはつい今しがた死んだのじゃ」
「はぁ!? 待て待て待てっ!! いきなり爆弾発言かよ。それは確実に嘘だろ。俺今、こうして生きてるじゃねぇか。ふざけんなよ」
「おぬしがそう思うのも不思議じゃないがの。わしが死んだおぬしの魂をこの場所に呼び出したんじゃ。おぬしが生きているように感じるのはそう言うことじゃよ。事実、おぬしがここに来るまでの記憶がないじゃろう? それも死んだショックで記憶にほころびができておるんじゃよ」
いやいや、絶対におかしいだろ。今のじいさんの話のどこかで辻褄が合わないよう箇所はあったか? ……わからねぇ、さっきから頭がまったく働かねぇんだよ。
「一旦、全部説明するから黙って聞いておくんじゃぞ。次になぜわしが死んだおぬしの魂をこの場所に呼び出したのかじゃが、単刀直入に言うと魔王を討伐してほしいんじゃ。異世界で暴れておる魔王を討伐するためにおぬしは転生することになったというわけじゃ。人選は異世界での強さをわしが調べた結果じゃな。おぬしの適性はすさまじいものがあったのじゃよ」
「質問いいか?」
「いいじゃろう。何でも聞くがよい」
「これって、どっきりとかじゃないよな? 今の話は全部、本当のことなのか?」
「そうじゃな。わしが今話したことはすべてまぎれもない事実じゃよ。おぬしは間違いなく死んだ、そしてわしがここに呼び出したんじゃ」
信じることなんてできないけど、このわけのわからん状況で完全に嘘だと断言して突っぱねるわけにもいかない。そんなことしても何も状況は変わらないしな。もう割り切って話を聞こうか。
「わかった。信じたわけじゃないが、ごねても状況は良くならないだろうし話を聞くよ」
「話が早くて助かるわい。この時点でわしの話を真面目に聞き始めたのはおぬしで二人目じゃ。やはりわしが見込んだだけのことはあるようじゃな。詳しい説明じゃが、おぬしが転生する世界は魔法とモンスターが存在する世界なんじゃ。この世界で魔王はモンスターを統べる王のことじゃが、これがまた厄介でのぉ。世界のバランスが崩壊してしまうほどの力を持っておるんじゃ。今は、人間を滅ぼそうという気はなさそうじゃが、いつそうなるとも限らんからの。おぬしに打倒してほしいというわけじゃ」
「俺普通の高校生だけど、その世界だと俺でも最強になれるって言うことか。自分で言うのも何だけど、喧嘩とか生まれてこの方したこともないぞ。絶対に弱い自信がある」
「今のおぬしじゃと最弱モンスターにも勝てんじゃろうな。じゃから、わしがおぬしにチート能力を授けるんじゃよ。この能力を授ける上で適正というものが重要でのぉ。適性が低いものには大した能力を授けることもできんのじゃ。その点、おぬしの適性じゃったら、好きに能力を授けることができるというわけじゃよ」
そのまったく自覚がない適正とやらのおかげで俺はセカンドライフを送ることができるというわけか。死んだという記憶がないのは釈然としないが、そのチート能力とやらを持って新たな人生を送ることができるというのはなかなかに魅力的だ。今までの生活に未練がないわけでもないが、この感じだと生き返らせてもらえたりはしないだろうし、言うことを聞いておいたほうがいい気がするんだよなぁ。
「そのチート能力さえ授かれば俺が魔王に勝てるって言うことか? そんな簡単に倒せるもんなのかよ」
「まあ、可能性は五分五分といったところじゃの。おぬしの適性はすさまじいのじゃが、魔王もすさまじいからのぉ。すべてはおぬしの頑張り次第というわけじゃ。期待しておるぞ」
「なんて無責任なんだよ」
「そんなこと言ってもいいのかの? おぬしが転生できるかはわしの気分次第ということを覚えておいたほうがいいぞい。そうじゃなのぉ、少し手まではあるが、またおぬしと同じくらいの適性を持ったものをさがそうかのぉ」
「俺がやります。いや、俺にしかできねぇことだ」
転生できないってことはつまりそのまま死ぬってことだろ。こんなチャンスを無為にするなんてことできるはずがない。
「能力は俺が好きに決めていいんだよな。それじゃあ、すべての魔法を自由自在に使えるってのはどうだ?」
「なかなかいいところをついておるじゃないか。良いじゃろう、それではおぬしにはすべての魔法の超適正を授けようかの……こりゃ無理じゃ」
「え?」




