6.容疑者
「自己紹介が遅れたわね。モニカが言ったように、私はフランシスカ=オカッタータ。よろしくね。」
「うん!よろしく!」
フランシスカが手を出してきたので、握手を交わす。「立派に聖女を務めていた人間の手ね」と言われて私は嬉しくなる。貴族令嬢としては相応しくない皮の厚い手だけれど、そう言って貰えると誇りになるものだ。
「フランはめちゃくちゃ頭良くて、私もいっつも勉強教えてくれてるの。分からないことはなんでも聞くといいよ。」
「それは助かる!一から十まで分かんないの!」
「大声で言うことじゃないわ。」
ふふ、友達ができた!と喜んで、この学校に来た理由を忘れかけていたところに、例の彼女はやってきた。
アリシア=シードラン男爵令嬢。
魅了使用の容疑者だ。
私の視線につられてか、2人の目線も彼女に向く。そして2人とも微妙な表情を浮かべた。
「今教室に入ってきた子、可愛いよねぇ。彼女も転入生で、転入して来た最初は仲良くしてたんだけど、そのうち王子殿下たちと仲良くなって、私たちとは距離ができちゃったんだよね。」
「何でも男の人たち優先で、ちょっと疲れたのよね。」
うわぁ…典型的な女に嫌われる女だ。女しかいない神殿ではやっていけないタイプ。
「王子殿下のお気に入りだから、絶対に喧嘩売ったりしたらダメよ。」
「そうなんだ。教えてくれてありがとう。」
彼女の話題はそれで終わり、その後は学校の制度や授業について教えてもらう時間となった。
その中で私が1番惹かれたのは昼食だった。この学校にはレストランやカフェテリアなどが数個あり、どこもとても美味しいらしい。
2人がいつも行っている美味しいところに連れて行ってくれるというので、いつも質素な昼食で我慢している私はとても楽しみにしていた。
楽しみにしていたのに…。
いざ、お昼休みになると嵐が来た。
「聖女殿、お昼ご飯を共に食べよう。」
「はい?何故?」
「聖女殿が居れば毒味が要らない!つまり温かいご飯が食べられるということなんだよ!」
「いやぁ誘拐ぃぃぃ!そもそも私はもう聖力がないのでぇぇぇ!」
そう言って私の腕を無理やり掴んでレストランまで連行ようとしているのは他でもないお兄様だった。
1つ下の学年の教室にいきなりやってきて、女子生徒を無理やり連行する姿に皆動揺していたが、相手が王子だったために、私を助けてくれる人は誰もいない。
お兄様は『俺、家族の前以外ではキャラ違うから。きちんと王子様演じてるから。』とか言ってくせに、そのままじゃん!どーゆーこと!?
その中でふとアリシア=シードランに視線が行った。
彼女は「王子が何故こんな小娘を?」と言わんばかりに顔中に「?」を浮かべていた。まぁ、「?」を浮かべていたのはクラスの全員だったんだけど。