3.夢の中だもんね
スラムに身なりの良い幼女が入るのは危険すぎると、流石の私でも分かったので、聖力で透明化することにした。
聖力なんて使ったことないけど、ゲームの中ではできていたからできるだろう、と思って透明になりますように、と祈る。そう思って、やってみると、自分の輪郭がぼやけた。
お店の窓のガラスを見ると、私が映ってない。成功だ!
やっぱ夢の中は何でもできるんじゃない?
と思ったけど、空は飛べなかった。無念。
というわけで私は歩いてスラムに突入した。緊張はマックスだったけど、もうやるしかないなって。
もしまだ誘拐事件が起こってなくても、場所を確認しておくだけでも役に立つかもしれないし…
まぁ、起こってますよね。夢の中だから、私の思ったように進みますよね。
見覚えのある道に出た、と思って、記憶の通りに進むと食堂があった。
何の変哲もないお客さんが出入りする食堂。だけど、聖力を持った私には分かった。
地下で誰かが聖力を使っていると。
クリスティーナが殺されたのは、王子が助けにくる直前、誘拐されて1週間後のこと。それまで犯人はクリスティーナを殺さなかったのではなく、殺せなかったのだ。
彼女が聖力で自分自身を守っていたから。
聖力では攻撃以外の多種多様なことができる。だから、彼女は防御の壁を張って、体に触れさせないようにした。
ただ、そのせいで彼女は睡眠も、食事も取れなくなり、聖力の回復ができず、防御の壁を維持できなくなったところで殺されたのだ。
クリスティーナが誘拐されて、聖力を使ってるに違いない!
幸運にも、地下から感じる聖力は膨大だ。まだまだ誘拐されたばかりなのだろう。間に合いそうだ。
私は短い足なりに精一杯走る。そして大神殿の誰でも出入りできる礼拝堂に行くと、透明化を解除して、その場にいた神官らしき人に叫んだ。
「王女殿下がスラムの食堂の下で監禁されてます!」
「はい?」
周りの人もはぁ?って感じだった。だけど、奥から偉そうな人が出てきて、慌てて私を裏に連れていく。
「王女殿下のことをどこで知ったんだ!?」
「聖力を感じたんです!あの膨大な聖力は多分王女殿下です!スラムの西の端の方のクラシカルという食堂の地下…」
そこまで言って、私の意識は朦朧としてきた。あ、私病弱だったんだ。なのに走って聖力まで使っちゃった。
私は気を失い、気づいたら知らないベットの上だった。
幸い誰もそばにいなかったが、出て行こうにも部屋には鍵がかかっていた。
そりゃこんな怪しいやつ、放置しないよね。
ただこのままでは困る。何故スラムに行ったのかとか説明できないし、何より聖力があるとバレるのは困る。聖力があると判明すれば聖女になることになるが、聖女の生活ってつまらなそうなんだもん。だから大体の貴族の令嬢は聖力があってもそれを隠している。
私は決めた。逃げようと。
聖力が戻ってきていたので、透明化を自分にかける。そして、誰かがこの部屋に入ろうと扉を開けたらそこから逃げよう。
その計画は上手くいき、私は無事家に帰ることができたのだった。




