4.初めての学校
私は今日から学校に行く。
ただしーーー
「今日からこのクラスに転入します、ターニャ=トラパルトです。以後お見知り置きを。」
王女という身分ではなく、男爵家の令嬢として。
私の素晴らしいお父様はあのあとすぐ神官長に話をつけに行ってくださった。
そしてどんな手を使ったのか分からないけど、なんと私が学校行く許可をもぎ取って来てくださったのだ!
ただし、別人として行くことになった。王女では騒ぎになって、魅了を調べるどころじゃなくなるだろうから、とのことで。
ターニャ=トラパルトというのは同い年の聖女仲間だ。彼女に扮して、聖女として神殿に身を捧げていたが聖力が衰えたため神殿から帰ってきたという設定で学校に通うことになった。
ちなみに聖術を使って顔も体もそのまま彼女になっている。正直、ターニャは他の貴族令嬢と関わりがなかったというし、私もヴェールを纏っていて顔出しなんてしたことがないので、そのままでも王女だとバレないのでは無いかと思ったけど、ダメだと言われた。目立つからとかなんとか。
ターニャになっている私を見て当のターニャはゲラゲラ笑っていた。彼女には事情を話して、親御さんにも協力してもらっている。
自己紹介の後、教室を見渡してみたけど、お兄様から調査を頼まれている男爵令嬢はいなさそう。このクラスのはずなのに。
席について授業の準備していると、周りが私を見ながらヒソヒソ、と話し込んでいる。
どうやら私を巡ってさまざまな憶測が飛びかっているようだ。
「聖女だったらしいわよ。」
「あら。では何故学校なんて通っていらっしゃるのかしら。」
「聖力がなくなったとかなんとか。」
「まぁ、聖力がなくなるなんて何をしたのかしら。」
クスクスと意地の悪そうに笑っている女ども。聖力っていうのはなくなる時はなくなるもんだわ。別に悪いことをしたからって失われるもんじゃない。
「神殿から出たばっかりってことか?」
「じゃあ男とほとんど関わったことがないんじゃ無いか?」
「簡単に食えそうだな。」
「結構可愛いし、胸もあるしな。」
食えるかバカ。神殿出の女ほどガード堅いものないわ。思春期の男ってそーゆーことしか考えてないって本当だったんだね。
まぁ、確かに本来私には無いはずの胸があるけども。ちなみに姿形を変えるって言っても、人の目を偽っているだけで、実際の体が変わっているわけではないので、揉めない。
しかし…初めてヴェールの無い状態で同い年くらいの男たちを見て分かったけど、どうやらお兄様はなかなかイケている部類の男だったらしい。お兄様はよく「俺ほど頭脳明晰で顔もスタイルもいい人間はいない!」と言っていたけど、全く信じていなかった。残念なものを見る目で見てしまっていたから、謝るべきかもしれない。
…いや、事実でも自分から言うような男、残念で間違ってないな。
授業を担当する先生が入ってきたため、皆一同に黙る。
私も新品の教科書を開いてウキウキと待つ。
私が転入したクラスはあまり成績のよろしくない下級貴族が集まるクラスで、授業のレベルは高くないという話だった。神殿では普通の教養の勉強はあれど、大したことは教えてくれないのでちょうどいいだろう、とのことだったんだけど…。
うん!全然分かんない!!
私は開始5分で匙を投げた。