表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/51

36.会いたい

「でも本当にいい人なの。ちょっと会ってみない?」


私が手を合わせて可愛くお願いすると「んー。」とターニャは考えるそぶりをする。


「逆にさ、会ってほしいの?」

「え?」

「クリスティーナにとってその人は大事な人じゃないの?さっきのその男の人について話している時のクリスティーナは、幸せそうで、普通の可愛い女の子だったよ。」


痛いところを突かれて、私は黙る。


そりゃあ会って欲しくない。


パージバルさんが顔がタイプであるターニャに惚れる可能性は高くて、私のことなんて興味をなくすかもしれない。

でも、それが本来正しい形だから、自分は異物だから…。



そこまで色々考えて、自分の愚かな考えに気付いた。


あぁ、多分私は、ターニャと会って、それでも私を選ぶことを期待してしまっているんだ。


最初を偽ってしまったから、愛される自信がないから、試すことで確認しようとしてしまっている。




「ごめん、ターニャ。この話、無しで。」

「オッケー。ま、他にいい人いた時は紹介してよ。お兄さんとか。」

「流石に王子は紹介できないわ。」

「あ、噂をすればお兄さん。」

「私より気軽な呼び方してるよね!?殿下って言いなよ!」


ちょうどお兄様が神官長と歩いている場面だった。アリシアが捕えられたことで事件が一段落したため、前に言っていたようにお兄様は謹慎になった。

それから城でぐうたらするかと思いきや、アリシアの取り調べや、何故か神殿に来て会談してたりと精力的に動いている。


「クリスティーナ。ちょっと。」


お兄様に呼ばれた私はターニャに断って駆け寄る。


「どうしたの、お兄様。」

「セオドアがお前に会いたいってうるさいんだが、会うか?」


当然だろう。私だって、別れの挨拶もなく、親しくしていた人にいきなり会えなくなったら、どうにか会えるようにと乞う。

当然のことなのに、それが嬉しくてたまらない。


会いたい。それが私の素直な気持ちだ。私だって、ずっと会いたいと、夢で見るほど考えている。


だけど…。



「会いたくない…。」


1番最初に出てきた言葉はこれだった。


やっぱりどうしてもこの顔で会いたくない。好みじゃない顔の私を見てがっかりしたパージバルさんを見たくない。


「そっか。じゃあとりあえずそう言っておくけど、会いたくなったらいつでも言うんだぞ。」

「うん。ありがと。」


思ったよりあっさり引き下がったお兄様に拍子抜けしつつ、これでいいのかと自問自答する。


パージバルさんはそろそろ婚約者を決めなきゃいけない時期で、さっさと結論を出したほうがいいに決まっていて、そのためには会うのが1番で…。



彼のよく通る声で自分の本当の名前を呼ばれることを夢想する。それはとても幸せなことだろう思う、どれだけ満たされるだろう。


だけど、拒絶される未来が怖すぎて、どうしても踏ん切りがつかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ